佳景探訪
谷津干潟
千葉県習志野市の谷津干潟は東京湾に残された貴重な干潟としてよく知られている。多くの生き物が生息し、渡り鳥の中継地としても重要な干潟だという。風薫る五月の下旬、谷津干潟を訪ねた。



谷津干潟

谷津干潟

谷津干潟

谷津干潟

谷津干潟/北岸

谷津干潟/東岸

谷津干潟/谷津干潟自然観察センター

谷津干潟/谷津干潟自然観察センター

谷津干潟/谷津干潟自然観察センター横の緑地

谷津干潟/干潟を観察する小学生

谷津干潟/北岸の舗道
谷津干潟は千葉県習志野市、東京湾の最も奥まったところに位置する干潟だ。周囲を埋め立て地に囲まれながらも多くの渡り鳥がやってくることで知られ、その重要性から1993年(平成5年)にラムサール条約の登録地にもなっている。

ラムサール条約は正式名称を「特に水鳥の生息地として国際的に重要な湿地に関する条約(Convention on Wetlands of International Importance especially as Waterfowl Habitat)」といい、1971年(昭和46年)に締結されたものだ(条約が発効したのは1975年、日本の条約加盟は1980年のことだ)。条約締結の舞台となったのがカスピ海沿岸に位置するイランの町ラムサールだったことから、ラムサール条約と通称されている。そもそもは渡り鳥の生活基盤としての湿地を保全することを目的とした条約だったが、やがて多種多様な生物を育む湿地の重要性が認識され、現在では湿地そのものの保全が目的になっている。ラムサール条約に登録される“湿地”は定義が広く、いわゆる湿原や湿地の他、谷津干潟のような干潟、砂浜や珊瑚礁、川や沼、水田までも含まれる。日本にも登録湿地が数多くあり、谷津干潟の他には釧路湿原や尾瀬、琵琶湖、宍道湖などが広く知られている。ラムサール条約とその登録湿地など、詳細は他のサイトや文献などを参照されたい。

谷津干潟は面積40haほど、ほぼ長方形をした形で横たわっているが、東南部の角は東関東自動車道が干潟を斜めに分断しており、通常は自動車道北側の部分を指して谷津干潟と呼ぶことが多いようだ。南側の岸辺には「谷津干潟自然観察センター」が建っており、その名の通り、谷津干潟の自然を観察する際の拠点を担っている。北側中央部の岸辺にはバラの名所として有名な谷津バラ園があり、その裏手には干潟に少し張り出す形で広場がある。干潟とその周囲の岸辺を巡る遊歩道を含めて谷津干潟公園という公園にもなっているようで、岸辺の遊歩道には観察デッキや「観察壁」が設けられ、野鳥観察のための工夫がなされている。

谷津干潟の周囲は基本的にコンクリートで護岸工事が成されているのだが、北側の谷津バラ園裏側にある、“張り出し部分”の周辺だけは昔ながらの海岸の風景を保っているようだ。谷津バラ園は1925年(大正14年)から1982年(昭和57年)までこの地に在った谷津遊園の名残だが、谷津遊園が開園した当初は(開園時は「京成遊園地」)海水浴や潮干狩りのできる遊園地として人気を集めていたという。その頃の海岸がちょうどこの辺りだったらしい。谷津遊園が開園する以前の明治中期から大正初期にかけては、この地に塩田があり、製塩業が盛んだったという。“張り出し部分”の広場の隅に「伊藤新田(塩田)跡・谷津遊園跡」と題した案内板が設置されており、製塩の様子と往時の谷津遊園を撮した写真と共に簡単な解説が記されている。今は埋め立て地の中に取り残されたような谷津干潟だが、埋め立て地など無かった時代の、目の前に東京湾が広がっていた頃の海岸の風景を想像してみるのも一興だ。

潮の満ち引きを考慮せずに訪れたのだが、今回訪れた時はちょうど引き潮の時刻だったようだ。干潟の中にはほとんど水は無く、のんびりと遊歩道を歩きながら眺めていると、わずかに残っていた水が優美な曲線の流れを描いて退いてゆく。その中に白鷺の姿があった。コサギではないようだ。ダイサギかチュウサギだろう。他にも水鳥の姿を見つけることができたが、あまり鳥に詳しくない身では何という鳥なのかよくわからないのが少し悔しい。訪れる時には干潟に飛来する鳥たちについて少し勉強しておいた方がより楽しめるに違いない。

干潟東岸に設けられた観察デッキではリュックを背負った小学生が10人ほど、干潟の観察をしていた。訪れたのは土曜日だったから、学校の授業の一環というわけではないのだろう。何かのクラブのようなものの活動なのかもしれない。

干潟南岸に建つ「谷津干潟自然観察センター」は干潟に飛来する鳥たちをはじめとした、干潟の自然を観察、学習するための施設だ。館内には干潟に面して広い窓を設けた観察フロアがあり、望遠鏡も設置されているから野鳥観察の初心者でも気軽に楽しむことができる。またさまざまな資料やレクチャールームもあり、“学習”のための準備も万全だ。もちろん干潟保全のための活動拠点としての役割も担っており、諸団体と連携した種々の活動がセンターを中心として行われているという。干潟の自然や飛来する鳥たちに興味のある人、干潟の保全活動に参加したいと思っている人など、詳しく話を聞いてみるといい。

埋め立ての進んだ東京湾岸に於いて、谷津干潟の存在はとても貴重なものだ。干潟周辺で一年間に確認される野鳥の種類は100を超え、水辺の鳥だけでも70種ほどになるという。多くの鳥たちが飛来するのは、彼らの餌となる生き物がいるからだ。こうした干潟は想像以上に多種多様な生き物を育んでいるという事実を、改めて胸に刻んでおきたい。“渡り”をする鳥たちにとって大切な場所であることはもちろんだが、我々人間にとっても大切な場所であるに違いない。
参考情報
谷津干潟そのものは入場料金などは必要ないが、自然観察センターの入館には料金が必要だ。入館料や休館日、開館時間などについては公式サイト(「関連する他のウェブサイト」欄のリンク先)を参照されたい。同サイトには谷津干潟の「潮見表」が掲載されている。訪れるときには満ち潮、引き潮の時刻を調べておくことをお勧めする。

交通

谷津干潟へはJR京葉線や京成本線などを利用するといい。JR京葉線を利用する場合は南船橋駅で下車して東進、あるいは新習志野駅で下車して西進、どちらも自然観察センターまで徒歩で20分ほどだろうか。京成本線を利用する場合は谷津駅で下車、南へ向かい、谷津バラ園の横を通り抜ければ谷津バラ園のすぐ南側に谷津干潟が広がっている。自然観察センターは干潟の南側だから、自然観察センターへはそこから干潟の外縁部を回って行かなくてはならない。谷津駅から自然観察センターまで徒歩で30分ほどか。JR総武線を利用し、習志野駅から谷津干潟行きのバス路線を利用する方法もある。

干潟の南側、国道357号線沿いに駐車場が用意されており、100台分ほどの駐車スペースがあるので車での来訪も可能だ。駐車場の出入り口は国道357号線側に設けられ、国道357号線の下り線からでなければ出入りができないとのことなので注意が必要だ。

飲食

自然観察センター内に喫茶室があり、蕎麦やおにぎりなどの軽食も可能だ。自然観察センターには公園スペースが付属しているので、お弁当持参の人はそこでアウトドアランチを楽しむといい。

自然観察センターの周辺には飲食店は見あたらないが、京成谷津駅南側には商店街があり、飲食店もあるので、利用するといい。また新習志野駅まで行けば駅周辺にファミリーレストランなどがある他、駅南側に大型の商業施設があり、ファーストフード店などの飲食店がある。

周辺

谷津干潟の北側はかつて谷津遊園のあったところだ。谷津遊園時代のバラ園が今は習志野市の施設「谷津バラ園」として運営され、人気を集めている。バラの咲く季節であればぜひ立ち寄っておきたい。新習志野駅の東側、国道357号線の北側に細長く香澄公園という公園がある。緑濃い公園で、小さいながらも菖蒲田があり、6月には花菖蒲が楽しめる。
谷津干潟

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