鹿児島県曽於市の最北部に「桐原の滝」という滝がある。幅40m、高さ12mの美しい滝は、加久藤カルデラの噴火による溶結凝灰岩の岩盤を溝ノ口川が抉ってできた。夏の盛りの八月半ば、桐原の滝を訪ねた。
桐原の滝
鹿児島県曽於市の最北部、宮崎県都城市との市境も近い辺りを流れる溝ノ口川に「桐原の滝」という滝がある。なかなか雄大で美しい姿をした滝で、曽於市を代表する景勝地のひとつとして知られている。
桐原の滝
桐原の滝
今から33〜34万年前、加久藤カルデラが大噴火を起こした。現在の宮崎県えびの市辺りを中心とする加久藤盆地に位置するカルデラである。このときの噴火による火砕流は大隅半島北部を中心に薩摩半島北部、さらには熊本県人吉市から宮崎平野に渡る広範囲を覆い尽くした。この火砕流堆積物が岩石化した溶結凝灰岩の層が、この地域には広がっている。その溶結凝灰岩の地層を、川の流れが長い時間をかけて浸食し、滝や甌穴、岩畳などを形成した。桐原の滝はそうしてできた。桐原の滝の下流部にある三連轟や、さらにその下流部にある関之尾滝、あるいは宮崎県小林市の「須木の滝」や鹿児島県伊佐市の「曽木の滝」なども同じように形成された滝である。
桐原の滝
桐原の滝
桐原の滝
桐原の滝は幅40m、高さ12mという堂々としたものだ。遠目に見ると大きさが実感しづらいが、近くによって見てみるとなかなかの迫力である。多段の滝ではなく段差は一段だから、水は一気に12mを流れ落ちる。40mの幅は中央部が下流側に張り出した凸面形状となっていて、通常は左右の端近くからそれぞれ水流が落ちている。左右の滝はそれぞれ幾筋もの流れに分かれていて、雄大さの中に優美さも感じる滝だと言っていい。水量が少なければさらに繊細な表情を見せるのだろう。逆に水量が多ければ40mの幅いっぱいに水が流れ落ちて豪放な滝と化すのに違いない。さまざまな表情を見たくなる滝だ。

滝の下流側は公園として整備されており、ちょっとした広場が設けられ、修景目的の小川や池なども造られている。滝の近くには四阿もあり、滝を間近に眺めながらのんびりと時を過ごすことも可能だ。コンクリート製の遊歩道は滝のすぐ下流側で川を渡って対岸へと繋いでいるが、これは水量が少し多くなるだけで水に沈んで渡れない。対岸に渡る場合にはさらに下流側に架けられた「清流橋」を利用するといい。対岸、すなわち右岸側では左岸側よりさらに滝に近づくことができる。間近から見る滝はなかなかの迫力で、容赦なく水飛沫も降りかかる。滝好きの人ならぜひ近くによって体感しておきたい。
桐原の滝
滝の下流側は長閑な田園風景だ。緑濃い山々の間を溝ノ口川が流れてゆく。滝の上流側は、横の道路から見下ろすことができる。上流側の河床は岩畳だ。溶結凝灰岩の河床に水の流れが長い年月をかけて幾筋もの溝を穿ち、ところどころに甌穴を造っている。滝だけでなく、そうした部分もぜひ見ておきたい。
桐原の滝
桐原の滝は“名瀑”と言っていい。緑濃い風景の中で見るその姿はたいへんに美しく、迫力という点でも申し分ない。滝のすぐ近くから眺めることができるのも嬉しい。滝好きの人ならぜひとも訪ねてきたい滝である。
清流の森 大川原峡キャンプ場
桐原の滝の横の道路を上流側に辿れば、ほどなく「清流の森 大川原峡キャンプ場」だ。「清流の森 大川原峡キャンプ場」はバンガローや常設テント、オートキャンプ場などを備えたキャンプ場で行楽シーズンには利用者で賑わっている。
清流の森 大川原峡キャンプ場
「清流の森 大川原峡キャンプ場」の横で、溝ノ口川は緩やかな流れで蛇行し、キャンプ場の対岸に河原が生じている。川遊びには絶好のロケーションで、初夏から夏にかけての行楽シーズには数多くの家族連れが川遊びを楽しんでいる。
清流の森 大川原峡キャンプ場
緑濃い風景の中での川遊び、子どもたちにとってはこの上なく楽しいひとときだろう。素敵な夏の風景である。
参考情報
「清流の森 大川原峡キャンプ場」の利用方法については公式サイト(頁末「関連する他のウェブサイト」欄のリンク先)を参照されたい。

交通
三連轟は曽於市の北端部地区に位置し、鉄道の駅から距離がある。最寄り駅はJR日豊本線大隅大河原駅だが、最短ルートを辿っても2kmほどの距離があり、徒歩では少しつらい。車を使って訪れるのが賢明だろう。

滝横の道路脇に無料駐車場が設けられている。十数台分の駐車スペースがあるように見える。まず清流の森大川原峡キャンプ場を目指し、そこからさらに東へ辿ってゆくとわかりやすい。清流の森大川原峡キャンプ場入口から400mほどなので、清流の森大川原峡キャンプ場の駐車場に車を置いて歩いてもいい。

遠方から訪れる場合は、宮崎自動車道都城IC(約23km)や九州自動車道溝辺鹿児島空港IC(約27km)などを利用するといい。

飲食
周辺には飲食店はない。JR日豊本線財部駅周辺や都城市の市街地へ足を延ばして飲食店を探すのが賢明だ。

周辺
桐原の滝から2kmほど溝ノ口川下流部(東)へ辿ると三連轟がある。三連轟からさらに2kmほど溝ノ口川下流部(東)へ辿り、北へ山間へ分け入るように1.3kmほど進むと「溝ノ口洞穴」がある。ぜひ併せて訪ねておきたい。

溝ノ口川に沿ってそのまま下流側へ辿れば県境を越えて宮崎県都城市だ。桐原の滝から三連轟から7kmほどで関之尾滝に着く。都城市を代表する景勝地だ。関之尾滝にも立ち寄っておこう。
水景散歩
鹿児島散歩