鹿児島県曽於市の北端部に「三連轟(さんれんとどろ)」という滝がある。溝ノ口川の流れが加久藤カルデラ火砕流による溶結凝灰岩の岩盤を抉って造られた滝だ。夏の盛りの八月中旬、三連轟を訪ねた。
三連轟
鹿児島県曽於市の最北部、宮崎県都城市との市境も近い辺りを溝ノ口川という川が流れている。溝ノ口川はやがて庄内川に注ぎ、その庄内川は大淀川に注ぐ。すなわち溝ノ口川は、宮崎県を代表する河川である大淀川の支川ということになる。その溝ノ口川に「三連轟」と呼ばれる滝がある。「三連轟」は「さんれんとどろ」と読む。
三連轟
この滝は溶結凝灰岩と呼ばれる堅い岩盤層を水の流れが抉ってできた。この溶結凝灰岩の岩盤層は33〜34万年前に起きた加久藤カルデラの大噴火(“破局噴火”とも呼ばれる)による火砕流堆積物が自らの熱と圧力によって岩石化したものだ。その溶結凝灰岩の地層を、長い年月をかけて水の流れが浸食し、あるところには滝を、あるところには数多くの甌穴を生んだ。三連轟の上流側にある桐原の滝も、下流側の庄内川にある関之尾滝も同じメカニズムで生まれた滝である。
三連轟
三連轟は桐原の滝や関之尾滝と少し違って、複数の段差を生じて滝を成している。その様相から「三連」の名があるのだろう。溶結凝灰岩の岩盤を水が抉ってできた景観は、まさに自然の造形だ。岩盤を切り分けるかのように細かな流れが走り、滝が生じ、甌穴が生じ、岩畳が横たわる。滝の下流側に架けられた橋の上から見下ろしたり、河原に降りたり、あちこちと視点を変えてその景観を楽しんでおきたい。
三連轟
橋の下流側の河原にも降りてゆくことができる。もちろん溶結凝灰岩の河床で、ところどころに甌穴を見ることもできる。滝周辺の荒々しい印象とは違って、穏やかな渓流の景観が美しい。ぜひこの景観も見ておこう。
三連轟
河岸には鬱蒼と木々が茂り、架けられた橋以外にはいっさい人工物が見えない。観光地としてはそれほど有名ではないため、訪れる人も少ない。それ故の“秘境感”が楽しい。滝や渓流の景観が好きな人なら一度は訪れてみるべきところだろう。ジオツーリズム的視点での魅力も大きい。マニアにはお勧めである。
三連轟
参考情報
交通
三連轟は曽於市の北端部地区に位置し、鉄道の駅から距離がある。最寄り駅はJR日豊本線大隅大河原駅だが、最短ルートを辿っても3km以上の距離がある。車を使って訪れるのが賢明だろう。

滝への入口近くに無料駐車場が設けられており、10台ほどが駐車可能だ。土地勘の無い人には場所が少しわかりにくいが、中谷簡易郵便局付近から西へ辿ってゆくか、清流の森大川原峡キャンプ場付近から東へ辿れば、道沿いに駐車場が設けられている。溝ノ口川に沿った道は全体的に狭いので運転には注意されたい。

遠方から訪れる場合は、宮崎自動車道都城IC(約20km)や九州自動車道溝辺鹿児島空港IC(約30km)などを利用するといい。

飲食
周辺は山々と田園地帯の広がるところで、近くに飲食店はない。飲食店を探すならJR日豊本線財部駅周辺や都城市の市街地へ足を延ばすのが賢明だろう。

周辺
三連轟から2kmほど溝ノ口川上流部(西)へ辿ると桐原の滝がある。桐原の滝の上流部は「清流の森 大川原峡キャンプ場」だ。夏には川遊びの人たちで賑わうところだ。併せて訪ねてみるのがお勧めだ。

三連轟から2kmほど溝ノ口川下流部(東)へ辿ると「溝ノ口洞穴」への道が北へ分かれている。そこから1.3kmほど、山間へと分け入ってゆくと「溝ノ口洞穴」がある。ここもぜひ併せて訪ねておきたい。

溝ノ口川に沿って下流側へそのまま辿れば県境を越えて宮崎県都城市、三連轟から5kmと少しで関之尾滝に着く。関之尾滝も三連轟と同じ様相を見せる滝だが、さらにスケールが大きく、景勝地として名高い。関之尾滝にも立ち寄っておこう。
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