神奈川県平塚市の北部に「花菜ガーデン」という県立の施設がある。農業や園芸を楽しみながら学ぶというコンセプトの施設だが、特にバラ園の見事さで人気だ。バラが見頃の五月半ば、花菜ガーデンを訪ねた。
花菜ガーデン
神奈川県平塚市の北部、広々とした田園地帯の中に「花菜(かな)ガーデン」という県立の施設が設けられている。「農業や園芸を楽しみながら学べる」というコンセプトの施設で、正式には「神奈川県立花と緑のふれあいセンター」という。「花菜ガーデン」の名は一般に公募して付けられた愛称だそうだ。2010年(平成22年)3月に開園している。
花菜ガーデン
花菜ガーデン
花菜ガーデン
花菜ガーデン
約9.2ヘクタールほどの面積の園内は「フラワーゾーン」、「アグリゾーン」、「めぐみの研究棟ゾーン」の三つのエリアに分けられている。もちろん明確に分割されているわけではなく、園内の区画にそれぞれの役割が与えられているといった方が正しい。「フラワーゾーン」はバラやサクラ、クレマチス、ハナモモなど、四季折々の花々が楽しめるゾーン。「アグリゾーン」は設けられた田圃での田植えや稲刈り、畑での野菜の植え付けや収穫を体験できるゾーン。「めぐみの研究棟ゾーン」は展示室や図書室、調理室などを設けたゾーンだ。

中でも「フラワーゾーン」は園内半分ほどの面積を占め、花菜ガーデンの中心的存在だと言っていい。ほとんどの来園者のお目当ても「フラワーゾーン」で見られる花々だろう。特に「薔薇の轍」と名付けられたバラ園は見事なもので、バラの名所として広く知られるようになった。他にもハナモモなどが植えられた「春告げの小道」やムクゲやアジサイを植栽した「槿花の小径」(「槿」はムクゲのこと)、カエデの仲間が植えられた「紅葉重ねのほとり」など、さまざまな区画が設けられている。それぞれに凝ったネーミングがなされているのも楽しい。

「アグリゾーン」には畑や田圃が設けられ、野菜の植え付け、収穫、田植え、稲刈りといった農作業を体験することができる。梨や梅、柑橘類の樹木を植えた一角も設けられている。

「めぐみの研究棟ゾーン」は「ひらきの棟」と「つどいの棟」、「みのりの棟」という三棟の建物から構成されている。「ひらきの棟」にはギャラリーや図書室、体験ルームが、「つどいの棟」には会議室や講習会用の教室、実験室や工房などが設けられている。「みのりの棟」はショップとレストランを設けた建物だ。

「学ぶ」という言葉には少し堅苦しいイメージがあるが、それほど気構える必要は無い。四季の花々を楽しむことができ、農作業体験も可能な公園として気軽に利用し、その中で園芸や農業を身近に感じ、より深く知ることに繋がればいいのだ。
花菜ガーデン
花菜ガーデン
「花菜ガーデン」の設けられた平塚市北部は金目川の河畔に田園風景の広がるところで、周囲には高層の建物もなく、山々の姿も遠い。園内を歩けば緑濃い風景の上には空が広がるばかりで、圧倒的な開放感が味わえる。北西に目を向ければ大山の頂がそびえ、その向こうには丹沢の山々が連なる。真西の方角には遠く富士山の姿も見える。遠くに見える山々の姿も、かえって園内の開放感を感じさせてくれる。その開放感は「花菜ガーデン」の魅力のひとつと言っていい。

当然のことながら、園内は端正に整備され、花々を愛でながら楽しい散策のひとときを過ごすことができる。散策を楽しんだ後は、園内のベンチや芝生の広場でのんびりと時を過ごすのもいい。四季折々に訪ねたい、素晴らしい施設である。
花菜ガーデン
花菜ガーデン
薔薇の轍
「薔薇の轍」と名付けられたバラ園は「花菜ガーデン」の中でも最も人気を集める施設だと言っていい。約1300種、約1900株(2016年現在)のバラが植えられ、見頃の時期には大勢の来園者を迎えて賑わう。バラ園はバラの品種改良の歴史に沿って系統立てて分類され、それぞれにエリアを設けて展示がなされている。バラと育種家が歩んだ道のりを「轍」に例えて「薔薇の轍」と名付けられたものだそうだ。
花菜ガーデン/薔薇の轍
バラ園の中は「野生種とその交配種」、「オールドローズ」、「モダンローズ」、「クライミングとシュラブローズ」、「イングリッシュローズ」、「香りのバラ」などの区画に分けられ、順路に沿って観賞してゆけばバラの品種改良の歴史を辿ることができるという趣向になっている。バラの育成に携わる人、バラの育成を趣味とする人には興味深く見逃せないバラ園だろう。
花菜ガーデン/薔薇の轍
特に園芸の趣味がなくても、鮮やかに咲き誇るさまざまなバラは素晴らしく、見応え充分だ。春は5月中旬から6月上旬にかけて、秋は10月中旬から11月上旬にかけて見頃を迎え、「ローズフェスティバル」も開催される。特に五月、初夏の陽光と薫風の中、バラの花に包まれるようにして園内を巡るのは至福のひとときと言っていい。バラの好きな人なら、少しばかり遠方からでも一度は訪れたい見事なバラ園である。
花菜ガーデン/薔薇の轍
花菜ガーデン/薔薇の轍
みはらしデッキからの眺望
園内中央部には「センターフィールド」と名付けられた芝生の広場があり、その周囲を半円状に小高い丘が囲んでいる。その一角に設けられた「みはらしデッキ」からは、その名のように素晴らしい眺望を楽しむことができる。

西に向けられた「みはらしデッキ」からは眼下に園内の風景が広がり、正面には遠く富士山を望む。少し右に視線を向ければ大山から丹沢の山々の稜線が連なる。美しい眺望だ。富士山の姿は園内の他の場所からも見ることができるが、やはり少し高みとなった「みはらしデッキ」からの眺望がお勧めだ。

「花菜ガーデン」を含む「ひらつか花アグリ」からの富士山の眺望は、国土交通省が選定した「関東の富士見百景」のひとつにもなっている。「花菜ガーデン」を訪れた際には、ぜひとも富士山を望む眺望を楽しんでおきたい。
花菜ガーデン/みはらしデッキからの眺望
花菜ガーデン/みはらしデッキからの眺望
参考情報
花菜ガーデンは入園料が必要だ。入園料や開園時間はシーズンによって異なる。詳細は公式サイト(「関連する他のウェブサイト」欄のリンク先)を参照されたい。

交通
花菜ガーデンへ鉄道を利用して訪れる場合はJR東海道線平塚駅や小田急小田原線秦野駅が最寄りだが、駅からは距離があり、徒歩での来園は難しい。駅からバスやタクシーを利用しなくてはならない。バス路線など詳細については公式サイト(「関連する他のウェブサイト」欄のリンク先)を参照されたい。

花菜ガーデンには来園者用の有料駐車場があり、車での来訪が便利だ。普通車用で350台分ほどのスペースが用意されている。遠方から訪れる場合は小田原厚木道路を利用し、平塚ICで降り、「平塚インター入口」交差点を右折すればいい。

ただし、バラが見頃となる時期には花菜ガーデン周辺はたいへんに混雑し、平日でも朝から駐車待ちの列が並ぶ。余裕を持って早めに来園することをお勧めする。

飲食
園内にはレストランがあり、メニューはある程度限られるものの、本格的な食事を楽しむことができる。

ただしバラの見頃の時期にはレストランもたいへんに混み合い、席が空くまでかなり待たなくてはならない。

お弁当類の持ち込みも可能で、休憩所や芝生広場などでお弁当を広げることができる。バラの時期など、陽気の良い季節ならお弁当持参もお勧めだ。

周辺
花菜ガーデンの周辺は広々とした田園地帯だ。いちご農家もあるようで、春にはいちご狩りが楽しめる。

花菜ガーデンから南東へ5kmほどで平塚市総合公園がある。施設の充実した規模の大きな公園で、ここもバラの見事さがよく知られている。バラの季節には併せて訪ねてみるといい。
薔薇散歩
公園散歩
神奈川散歩