神奈川県藤沢市の南部、引地川の河岸に長久保公園という公園がある。都市緑化植物園としての側面を持ち、大きな花壇や花菖蒲園、樹木見本園などの施設が設けられている。風薫る五月の半ば、長久保公園を訪ねた。
長久保公園
長久保公園
神奈川県藤沢市の南部、引地川の左岸に長久保公園という藤沢市立の公園がある。都市緑化植物園としての側面を持つ公園で、園内には「みどりの相談所」や「展示即売所」、生垣見本園、樹木見本園、庭園見本園といった施設を有し、さらに「花のプロムナード」、「スイレンの池」、「花菖蒲の池」、「芝生広場」、「渓流広場」、「藤棚」、「展望広場」といった施設も設けられている。それらの施設は独立した区画として設けられているわけではなく、互いに繋がり合って公園の全体像を形作っている。公園は1989年(平成元年)に開園したものという。約34000平方メートルという面積は“広大”というほどではないが、充分に広く、緑に溢れた園内の散策は楽しい。
長久保公園
長久保公園
長久保公園は市民の憩いの場でありつつ、都市緑化植物園として都市緑化の普及啓発活動の拠点の役割も担っている。正面入口前の「みどりの相談所」には相談コーナーや研修室が設けられ、園芸に関する書籍を自由に閲覧することもできる。園芸の趣味を持つ市民には心強い施設だろう。「みどりの相談所」の建物は展示温室を兼ねており、熱帯性の植物や洋ランなどが栽培されている。来園したときには、この展示温室もぜひ見学しておきたい。

「みどりの相談所」周辺にはバラ花壇がいくつか設けられており、五月の半ば、さまざまなバラが鮮やかに咲き誇っていた。本格的なバラ園ではないが、初夏の公園を彩ってくれている。
長久保公園
「みどりの相談所」前から南西側、すなわち“公園の奥”へと延びる「花のプロムナード」は長久保公園の象徴的な存在と言っていいかもしれない。端正に造られたプロムナードの中央には大きな花壇が設けられ、さまざまな花々が咲き誇っている。緑濃い公園の風景の中で、花壇の花々の色彩が鮮やかなコントラストを描いて強い印象を残す。
長久保公園
「花のプロムナード」の先には「スイレンの池」が横たわっている。池にはその名が示すようにスイレンが植えられており、初夏から夏にかけて花を楽しむことができる。池の北側の岸辺は半円のモチーフでデザインされた展望デッキが設けられ、池と、池の向こうの「芝生広場」、さらにその向こうの樹林地を見渡すことができる。穏やかな緑の風景である。
長久保公園
「芝生広場」は公園のほぼ中央に位置し、休日には家族連れの姿で賑わっている。広場の外縁部には桜が植えられており、春には花見客で賑わうようだ。広場の南端部には大きな藤棚が設けられている。藤は藤沢市の「市の花」だ。四月下旬から五月上旬にかけての頃に花が見頃になる。広場の西側には「花菖蒲の池」が設けられており、こちらは六月頃に花菖蒲が見頃になる。「花菖蒲の池」の岸辺には四阿も建てられ、日本庭園風に設えられているのも魅力だ。
長久保公園
「花のプロムナード」の東側に設けられた「生垣見本園」が面白い。種々の木々を用いた生垣を、見本園としてただ並べているのではなく、生垣で“迷路”が造られているのだ。もちろん通り抜けることも難しいような本格的な迷路ではなく、“迷路風”なデザインで造られていると言った方が正しい。しかし高さのある生垣は、中に入ると大人でも見通しが利かず、気分は完全に迷路である。子どもたちにとっては素敵な遊び場であるようだ。
長久保公園
公園の南側は、「芝生広場」を取り囲むように樹林地が広がっている。その樹林地の中に「渓流広場」や「樹木見本園」などが置かれている形だ。「渓流広場」は「スイレンの池」からの流れを利用して造られた、渓流を模した小川だ。修景のための小川で、残念ながら流れの中に入ることはできず、子どもたちの水遊び場としては利用できない。「樹木見本園」にはさまざまな樹木が植えられているが、紫陽花や梅などもあり、それぞれの季節に花を楽しむことができる。カエデなどの落葉樹を中心にしたエリアもあり、秋の紅葉も楽しめる。穏やかな樹林散歩を楽しめる一角である。
長久保公園
公園の西側は引地川河岸より少し高みとなった地形で、外縁部の崖地を利用して「展望広場」が設けられている。それほどの高みではないのだが、四阿の置かれた展望デッキからは園内の木々を見下ろし、その向こうには真正面に江の島の姿を見る。公園から江の島まで、直線距離で4kmほどだ。肉眼でもシーキャンドルの姿がはっきりと見える。なかなか爽快な眺望である。
長久保公園
長久保公園はあくまで藤沢市民、近隣に暮らす人たちのための施設であり、遠方から訪れたくなるような行楽地的性格はほとんど有していないと言っていい。しかし「都市緑化植物園」を兼ねた園内はさまざまな樹木、草花を見ることができて魅力的だ。春の桜から初夏のバラや花菖蒲、秋の紅葉など、四季折々に美しい景観が楽しめるだろう。それぞれに季節には藤沢市民でなくても訪ねてみたくなる。素敵な公園である。
参考情報
本欄の内容は長久保公園関連ページ共通です
公園は入園料は必要なく、自由に入園できる。開館時間など、詳細は公式サイト(「関連する他のウェブサイト」欄のリンク先)を参照されたい。

交通
長久保公園へ鉄道を利用して訪れる場合は小田急江ノ島線本鵠沼駅が最寄りだ。駅から西へ辿り引地川を越えて約1km、徒歩で15〜20分ほどか。JR線を利用する場合は藤沢駅や辻堂駅からバスを利用するのが便利だ。バス路線など詳細については公式サイト(「関連する他のウェブサイト」欄のリンク先)を参照されたい。

長久保公園には90台分ほどの無料駐車場があり、車での来園も便利だ。国道1号や国道134号から引地川左岸の道路へと辿ればわかりやすいが、土地勘の無い人には途中のルートがわかりにくい部分もあるので、予め地図でよく確認しておくか、ナビの使用をお勧めする。駐車場入口も引地川左岸の道路沿いに設けられている。

飲食
園内にはレストランなどは設けられていない。公園でお昼を過ごすならお弁当持参がお勧めだ。

公園の北西側、県道30号を渡れば「湘南T-SITE」がある。中に食事の可能な店もあるから足を延ばしてもいい。

周辺
公園から引地川沿いの道路を南へ辿れば2kmほどで国道134号に出る。国道134号を東へ向かえば県立湘南海岸公園、西へ行けば辻堂海浜公園が近い。徒歩では少し距離があるが、車で移動すればそれほど遠くない。
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