長野県松本市の旧開智学校校舎は1876年に竣工した。明治の文明開化を象徴する擬洋風建築で、貴重な近代学校建築として国宝に指定されている。夏の暑さの残る九月上旬、旧開智学校を訪ねた。
旧開智学校は2021年(令和3年)6月から耐震工事のため休館している。2024年度(令和6年度)中の開館を目指しているという。工事中もフェンス越しに外観を見学することは可能だそうだ。
旧開智学校
長野県松本市の中心市街近く、松本城の北方に旧開智学校の建物が残されている。明治初期の文明開化の香りを漂わせた、見事な擬洋風建築の校舎は国宝である。内部は資料室として使われ、建物内部の造作と共に貴重な資料の数々を見学することができる。松本観光に訪れた際には、欠かすことのできない名所のひとつだ。壮麗な校舎の姿は一度は見ておくべき景観だと言っていい。
旧開智学校
開智学校は1873年(明治6年)に施行された学制に基づく小学校として、同年5月に開校した。当初は廃仏毀釈で廃された寺の建物を仮校舎として使っていた。新校舎が竣工したのは1876年(明治9年)のことだ。当時は女鳥羽川の河畔(現在の中央一丁目)に建っていた。新校舎は地元の大工棟梁立石清重が設計施工を担った。明治の文明開化を象徴するような擬洋風建築で、壮大で華麗なものだったという。以来、1963年(昭和38年)までの約90年間、学び舎として使われてきた。
旧開智学校
その後、女鳥羽川の拡幅工事のため、開智学校校舎は現在地へ移転されることになる。移築工事は1963年(昭和38年)1月から1964年(昭和39年)8月にかけて行われた。移築に伴って修復工事も行われた。1965年(昭和40年)、開智学校校舎は現在のような教育博物館として再出発している。明治期の貴重な建築物である開智学校校舎は1961年(昭和36年)に国の重要文化材に指定されていたが、2019年(令和元年)には近代学校建築として初めて国宝に指定されている。
旧開智学校
開智学校校舎は木造二階建ての寄棟造、桟瓦葺で中央部に八角形の塔屋を持つ。建築面積は513.58平方メートルという壮麗なものだ。旧開智学校を訪ねたなら、まずはその壮麗な建物の外観を存分に堪能しておきたい。できればよく晴れた日がいい。白とターコイズブルーを基調にした彩色は華麗でありつつ清楚でもあり、日を浴びて青空を背景に建つ姿はたいへんに美しい。
旧開智学校
正面から見る校舎はシンメトリックに見えるが、完全に左右対称ではなく、左右で少し長さが違っている。余談だが、敷地内から建物の全景を写真に収めようとカメラを向けてみるものの、28mm程度の画角のレンズでは建物の全景が収まりきれない。全景を一枚の写真で捉えたいときはさらに広角のレンズを用意しておくことをお勧めする。真正面から眺めてみた後は、少し横に寄って斜めに眺めてみたり、近寄ってみたり、さまざまな表情を楽しんでおきたい。
旧開智学校
正面中央部に設けられた車寄せの上部には瑞雲の彫刻や龍の彫刻が飾られ、さらに唐破風屋根は天使の彫刻も飾られている。天使が掲げ持っているのは「開智学校」の名を記したプレートだ。そうした細部の装飾にも注目しておこう。ちなみに、開智学校の「開智」は1872年(明治5年)学制発布とともに公布された被仰出書(おおせいだされしょ)の文中にある「〜智ヲ開キ〜」から取られたものという。
旧開智学校
旧開智学校
旧開智学校
旧開智学校の内部は各種教育資料などを展示した資料館だ。展示された資料の数々はもちろん、建物内部の造作をじっくりと見学しておきたい。往時の教室を再現した部屋もあり、明治、大正、昭和初期にかけての学校の様子を思い浮かべてみるのも楽しい。
旧開智学校
旧開智学校の魅力は何と言っても建物自体の美しさだろう。明治初期の擬洋風校舎建築の最初期のもののひとつとして、ぜひ見ておきたいものだ。明治期の文化や近代建築、教育の歴史などに興味のある人なら一度は訪れておきたい。まさに国宝である。
旧開智学校
参考情報
旧開智学校は観覧料が必要だ。観覧料や開館日など、詳細は公式サイト(頁末「関連する他のウェブサイト」欄のリンク先)を参照されたい。

交通
旧開智学校は松本駅(JR中央本線、アルピコ交通上高地線)の「お城口(東口)」から2km足らず、徒歩でも30分かからない。

松本市街地を巡る周遊バス「タウンスニーカー」を使えば歩かずに済む。「北コース」の路線を使って「旧開智学校」バス停で降りればいい。

旧開智学校には来館者用の無料駐車場が用意されているが駐車スペースは20台分ほどと少ない。市街地に点在する観光用駐車場や民間駐車場に車を駐め、徒歩やバスで訪れるのをお勧めする。

遠方から車で訪れる場合は、長野自動車道松本ICから国道158号を西進して松本市街中心部を目指そう。松本ICから松本駅周辺までは3km足らず、道路状況にもよるが10分ほどで着く。

飲食
旧開智学校にはカフェやレストランは併設されていない。食事は市街地中心部に戻って楽しもう。

周辺
旧開智学校のすぐ西側には松本市旧司祭館が建っている。旧開智学校と併せて見学しておこう。

旧開智学校の北東側、数百メートル辿ったところには松本市高橋家住宅がある。市内に現存する数少ない武家住宅のひとつだそうだ。興味のある人はここも訪ねておこう。

旧開智学校から南へ数百メートル辿れば松本城だ。松本観光で欠かせない観光名所のひとつだ。ぜひ見学しておきたい。

松本城から大名町通りを南へ300mほど辿ると女鳥羽川が流れている。女鳥羽川の北側には縄手通り、南側には中町通りが川に沿うように東西に延びる。縄手通りの東端部からは北に上土通りが延びる。町散策の好きな人にはお勧めのところだ。「中町・蔵シック館(松本市中町蔵の会館)」や「松本市はかり資料館」、「松本市時計博物館」などにも立ち寄っておきたい。

松本市の市街地には数多くの湧水が点在し、「まつもと城下町湧水群」として「平成の名水百選」にも選定されている。湧水巡りにスポットを当てての市街地散策も楽しい。

松本市街地の観光名所を効率良く巡るなら、周遊バス「タウンスニーカー」を利用するのがお勧めだ。一日乗車券を購入しておけば気軽に利用できる。車で松本を訪れたときも、車を駐車場に置いて「タウンスニーカー」と徒歩を組み合わせての観光がお勧めだ。
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