長野県松本市、旧開智学校に隣接して旧司祭館が保存されている。フランス人神父によって1889年に建築された西洋館だ。夏の暑さの残る九月上旬、松本市旧司祭館を訪ねた。
松本市旧司祭館
長野県松本市の中心市街近く、国宝であり有名な観光名所である旧開智学校に隣接して、松本市旧司祭館が建っている。明治期に宣教師の住居として建てられたもので、1989年(平成元年)に現在地に移転復元されたものだ。長野県で最古の西洋館だという。2005年(平成17年)には長野県宝に指定されている。
松本市旧司祭館
松本市旧司祭館は1889年(明治22年)、フランス人のオーギュスタン・クレマン神父によって建てられた。場所は現在の松本市丸の内9番32号、聖テレジア幼稚園の敷地内、かつては松本城内三の丸の大名屋敷があったところだ。以来、ほぼ100年、宣教師の住居として使われてきた。
松本市旧司祭館
1989年(平成元年)に松本カトリック教会から松本市へ寄贈され、1990年度(平成2年度)から翌年度にかけて、解体、移築、復元工事が行われた。周辺の道路拡張工事に併せて松本カトリック教会が施設の再配置を計画したことによるものという。取り壊しも予定されていたそうだが、文化財としての保存の方向で決まったようだ。一連の工事は1991年(平成3年)10月に竣工、現在地で松本市旧司祭館として公開が開始されている。
松本市旧司祭館
旧司祭館の建物は二階建てで、間口10m、奥行き10m、延床面積は202.73平方メートル。コンパクトな箱に見える外観が可愛らしい印象もある。外観はターコイズブルーに塗られ、清涼で簡明な表情を見せる。外壁の下見板張りは、アメリカ開拓時代の船大工の技法を残すもので、アーリー・アメリカン様式の西洋館である。
松本市旧司祭館
一階部分には玄関の他、事務室や応接室、食堂、台所、風呂などが設けられ、二階には四室の個室がある。各部屋に暖炉があり、各階にベランダがある。純西洋館の造りである。鎧戸を設けた縦長の窓などはフランスの建築の特徴であるらしい。じっくりと見学していこう。往時の宣教師たちの暮らしぶりを思い浮かべながら館内を見学していくのは楽しいひとときだ。
松本市旧司祭館
旧司祭館は松本の観光名所としては地味な方かもしれない。旧開智学校に隣接し、旧開智学校の付属施設のように思われてしまうかもしれない。しかし明治期の西洋館建築として、旧開智学校とは別な意味で貴重なものであることは間違いなく、そうした近代建築に興味のある人なら一度は見ておきたいものだと言っていい。ゆっくりと館内を巡りながら、明治期の松本に思いを馳せたい。
松本市旧司祭館
参考情報
松本市旧司祭館は無料で見学できる。休館日や開館時間など、詳細は公式サイト(頁末「関連する他のウェブサイト」欄のリンク先)を参照されたい。

交通
松本市旧司祭館は旧開智学校の付属施設のように隣接している。旧開智学校を目指して行けば迷うことはない。は旧開智学校松本駅(JR中央本線、アルピコ交通上高地線)の「お城口(東口)」から2km足らず、徒歩でも30分ほどだ。

松本市街地を巡る周遊バス「タウンスニーカー」を使うも便利だ。「北コース」の路線で「旧開智学校」バス停で降りればすぐだ。

旧開智学校に用意された来館者用の無料駐車場を利用すれば車での来訪も可能だが、駐車スペースは20台分ほどと少ないため、徒歩やバスで訪れるのがお勧めだ。

遠方から車で訪れる場合は、長野自動車道松本ICから国道158号を西進して松本市街中心部を目指せばいい。松本ICから松本駅周辺までは3km足らずだ。

飲食
松本市旧司祭館にも旧開智学校にもカフェやレストランは併設されていない。食事は市街地中心部に戻って楽しもう。

周辺
松本市旧司祭館のすぐ横には旧開智学校が建っている。旧開智学校は国宝。松本観光の際にはぜひ見学していこう。

旧開智学校の北東側、数百メートル離れて松本市高橋家住宅がある。市内に現存する数少ない武家住宅のひとつとのころで、そうしたものに興味のある人はぜひ訪ねておきたい。

旧開智学校から南へ数百メートル辿れば松本城。松本城も旧開智学校と共に松本観光で欠かせない観光名所のひとつだ。

松本城から300mほど南側には女鳥羽川が流れている。女鳥羽川の北側の縄手通り、南側の中町通りは松本散策で欠かせない。縄手通りの東端部からは北に延びる上土通りにも足を延ばしてみたい。「中町・蔵シック館(松本市中町蔵の会館)」や「松本市はかり資料館」、「松本市時計博物館」などに立ち寄りつつ、松本散策を楽しもう。

松本市の市街地には数多くの湧水が点在している。「まつもと城下町湧水群」として「平成の名水百選」にも選定されているものだ。松本市街地で湧水巡りを楽しむのもいい。

松本市街地の観光名所を効率良く巡るなら、周遊バス「タウンスニーカー」を利用するのがお勧めだ。一日乗車券を購入しておけば気軽に利用できる。車で松本を訪れたときも、車を駐車場に置いて「タウンスニーカー」と徒歩を組み合わせての観光がお勧めだ。
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