埼玉県鴻巣市北西部の吹上地区、荒川河川敷に設けられた花畑に秋にはコスモスが植えられ、「コスモスフェスティバル」が開催される。青空に恵まれた十月下旬、鴻巣市の「コスモスフェスティバル」を訪ねた。
鴻巣コスモスフェスティバル
埼玉県鴻巣市の北西部はかつての北足立郡吹上町だったところだ。この吹上地区の南部に「コスモスアリーナふきあげ」という施設がある。バスケットボールコートとして使えるアリーナや弓道場、卓球場、挌技場などを有した総合体育館だ。「コスモスアリーナふきあげ」は荒川河岸の立地で、南には荒川の河川敷が広がっている。この河川敷に花畑を設け、秋にはコスモスを植え、コスモスの見頃の十月中旬から下旬の頃、「コスモスフェスティバル」が開催される。
鴻巣コスモスフェスティバル
「コスモスフェスティバル」の開催中、「コスモスアリーナふきあげ」はフェスティバルのメイン会場となって賑わう。敷地内の一角は特設のステージと化し、地元の団体によるダンスなどが披露されている。敷地内から周辺の堤防道脇にかけて多くの露店が並び、まさに“お祭り気分”で賑わっている。今回訪れたのは土曜日、「コスモスアリーナふきあげ」館内では農業フェスティバルが同時開催されており、さらに賑わいを増しているようだった。
鴻巣コスモスフェスティバル
鴻巣コスモスフェスティバル
「コスモスフェスティバル」のメインはやはり河川敷の花畑に咲き誇るコスモスの花だ。「コスモスアリーナふきあげ」から南へ荒川の堤防道を越えると、眼下に河川敷が広がり、そこは見渡す限りのコスモス畑だ。堤防道からコスモス畑を見下ろすと北から南へ向いており、その方角のためか、コスモスが“後ろ姿”になっているのが少しばかり残念なところか。

堤防道から河川敷へと降り、設けられた散策路を辿って花畑の中へ足を踏み入れるとコスモスの花に包まれる。この花畑は総面積4ha超、植えられるコスモスは1000万本ほどという。河川敷に設けられた立地だからコスモス畑はいくつもの区画に分けられて細長く延びており、その延びてゆく方向へと目を向ければ視界の遥か向こうまでコスモスが咲き誇り、まさに圧巻の光景だ。周囲には高い建物もなく、山々は遥かに遠く、コスモス畑の上に青く澄んだ秋空が広がるばかりだ。この爽快な開放感が、このコスモス畑の最大の魅力と言っていいのではないか。
鴻巣コスモスフェスティバル
荒川上流側である西へ視線を向ければ、コスモス畑の広がる向こうには“日本一長い”という水管橋(送水管)の姿が見える。白い送水管本体と、それを支える赤いアーチも美しく、単調になりがちな河川敷の景観にアクセントを添えている。河川敷には小川も流れており、その小川もコスモス畑に表情を与えている印象だ。
鴻巣コスモスフェスティバル
鴻巣コスモスフェスティバル
散策路を辿ってコスモス畑の中を縫うように巡るのはとても楽しい。場所によって日差しの向きも変わり、コスモス畑はさまざまに表情を変える。見渡す限りに広がるコスモス畑を遠くまで眺めてみるのもいいし、逆光を弾いて輝きながら風に揺れるコスモスの姿を堪能するのもいい。コスモス畑の中を行き交う人たちの姿も“花の名所”としての風情のひとつだろう。望遠レンズ越しに見える、“日本一長い水管橋”とコスモスとが織り成す景観の妙も興趣のあるものだ。河川敷に設けられたコスモス畑が見せてくれるさまざまな景観を楽しみながら巡っていると飽きることがなく、時の経つのを忘れる。

コスモス畑の一角では“花摘み”のできる区画もあり、花摘みを楽しむ人たちの姿もあった。家族連れであれば、子どもたちと一緒に花摘みを楽しむのもいいかもしれない。
鴻巣コスモスフェスティバル
コスモス畑の中の散策を楽しんだ後は露店で何か買い求め、堤防道に腰を降ろして一休みするのもお勧めだろう。青く澄み渡った秋空の下、開放感溢れる風景の中で風に吹かれて過ごすひとときは何とも気分のよいものだ。今回は敢えて「コスモスフェスティバル」開催中に訪ねてみたが、こうした賑わいの苦手な人は「コスモスフェスティバル」を避けて訪ねてみるといい。秋の日の身近な行楽としてお勧めの、吹上のコスモス畑である。
参考情報
鴻巣市の「コスモスフェスティバル」は入場料などは必要ない。無料で自由に見学できる。

交通
「コスモスフェスティバル」の会場はJR高崎線吹上駅が最寄り駅だが、駅からは2.5kmほどの距離があり、徒歩では30分以上かかる。駅から鴻巣市のコミュニティバス「フラワー号」の「吹上南コース」を利用すると便利だ。「コスモスフェスティバル」の会場となっている「コスモスアリーナふきあげ」まで5分ほどで着く。

車で訪れる場合は国道17号(中山道)の「吹上団地入口」交差点から南へ折れ、「コスモスアリーナふきあげ」へと南下するのがわかりやすい。遠方から訪れる人は圏央道桶川北本ICや関越自動車道東松山IC、東北自動車道の加須ICや羽生ICなどを利用すればいい。どのICからも距離があるので、予め地図をよく確認しておくか、ナビの利用をお勧めする。

「コスモスアリーナふきあげ」の駐車場が来訪者用の駐車場として使用され、駐車可能台数も多いが「コスモスフェスティバル」開催時にはたいへんに混雑し、午後遅くまで満車状態が続き、空き待ちの列が並ぶ。余裕を持って出かけた方がいい。

吹上駅付近の民間駐車場に車を置き、バスで「コスモスアリーナふきあげ」へ向かうのも一案だろう。

飲食
「コスモスフェスティバル」開催時には「コスモスアリーナふきあげ」の敷地内にさまざまな露店が並び、やきそばやお好み焼き、クレープ、たい焼きなどの軽食を販売しているが、本格的な食事の可能な店はない。周辺も水田の広がる田園地帯で飲食店はない。飲食店は駅近くへ移動して探そう。

お弁当と敷物を持参すれば、堤防の道脇などにスペースを見つけてお弁当を広げることも可能だ。

周辺
「コスモスフェスティバル」会場からもその姿が見えているが、荒川を少し上流側へと辿って「日本一長い水管橋」を間近に見てみるのも一興だろう。

吹上駅の北方、元荒川には戦車も通れるように頑丈に設計されたという吹上橋をはじめ、さまざまに趣向を凝らした橋が架かっているそうだ。元荒川の河岸は桜並木で春の散策がお勧めかもしれない。

荒川の対岸、南側は吉見町、車で訪れたなら県道66号や県道76号などを辿って吉見町へ足を延ばすのもいい。八丁湖公園や吉見総合運動公園まで10km足らず、20分ほどで行ける。
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