東京都足立区梅島一丁目にベルモント公園という公園がある。足立区とオーストラリアのベルモント市との姉妹都市提携を記念して造られた公園という。園内にはオーストラリアの工芸品などを展示する施設もあり、オーストラリアの文化に触れることのできる公園だ。バラの咲き誇る五月の下旬、ベルモント公園を訪ねた。
ベルモント公園
東京都足立区とオーストラリアのベルモント市が姉妹都市提携をしたのは1984年(昭和59年)のことだそうだ。以来、学生使節団の相互派遣をはじめ、スポーツや音楽での交流、一般区民の交流体験ツアーなど、さまざまな交流を重ねているという。ベルモント市はオーストラリアの西海岸に位置する町で、地中海性気候の温暖なところらしい。ベルモント公園は、その姉妹都市提携を記念して1993年(平成5年)7月に開園したものだ。ちなみに2004年(平成16年)にはベルモント市に「足立パーク」がオープンしたそうだ。
ベルモント公園
ベルモント公園
ベルモント公園
ベルモント公園
ベルモント公園
そうした生い立ちの公園だから、ベルモント公園にはオーストラリアのさまざまな事物が展示されている。公園外周壁のタイルにはベルモント郊外で造られたレンガを輸入して用い、門柱にはベルモント市の紋章を描いたタイルが埋め込まれている。園内でひときわ目を引くレンガ造りの洋館はオーストラリアの工芸品や日用品などを展示した「陳列館」で、オーストラリアの文化に触れることのできる施設だ。陳列館の横手に建つお洒落な意匠の電話ボックスはオーストラリアで実際に使用されていたものを輸入したのだそうだ。陳列館の前には特徴的な形の赤い花を咲かせる樹木がある。オーストラリア原産のブラシノキで、花の形が瓶を洗うブラシに似ていることから、この名があるという。ブラシノキの他にもオーストラリア原産のフサアカシアも植えられているが、こちらは花期が早春なので残念ながら花を見ることはできなかった。園内の池には西オーストラリアの州鳥である黒鳥(ブラックスワン)が飼われている。黒鳥はオーストラリア南部が原産の鳥で、ベルモント近くのスワン川にも多く生息しているという。池の横手の広場の中央に置かれた野外彫刻はオーストラリアの彫刻家ルウ・ランバート市の「流れの出会う場所」という作品で、1992年の足立区国際野外彫刻展に出品されたものだそうだ。また園内の広場に羊のオブジェが置かれているのもオーストラリアに因んだものだろう。遠目に見るとまるで本物の羊がいるようで楽しい。
ベルモント公園
ベルモント公園
ベルモント公園
ベルモント公園は決して広い公園ではない。住宅街の中に造られた小公園という佇まいだが、中央部に池を置き、南側には広場を配し、外周部には公園を包むように樹木が茂り、なかなか魅力的な佇まいを見せる。園内の風景も美しく、陳列館と樹木の見せる景観などは駅近くの市街地であることを忘れさせてくれるほどだ。池の周辺にはソテツやフェニックスなどの南国の樹木もあり、異国情緒のある風景を見せている。南東側の隅にはパーゴラがあり、藤棚が設けられている。藤の花期には美しい姿を見せてくれるのだろう。

園内随所に置かれたベンチでは地元の人がくつろいだひとときを過ごしている。若いお母さんたちが子ども連れで訪れている姿も多い。小さな子どもたちのために南西側の隅には「幼児用ひろば」が設けられ、ブランコなどの遊具が置かれている。園内の広場にシートを広げ、のんびりとアウトドアランチを楽しむ家族連れの姿もある。普段から地元の人たちの憩いの場として親しまれている様子がうかがえる。公園を訪れたとき、園内で二匹の猫に出会った。どちらの猫も首輪を付けていたから公園近くの家の飼い猫なのだろう。一匹はベンチの一つを陣取り、お昼寝中だ。来園者に撫でられてもお構いなし。猫にとっても居心地の良い公園なのだろう。

池の北側、散策路脇に野外彫刻が置かれている。第7回足立区野外彫刻コンクールの入賞作品で、中村茂幸氏による「遥かな笛の音」というものだ。木に腰掛けて笛を吹く子どもと、まるでその笛の音に耳を傾けているかのような鳥たちをあしらった作品で、公園の雰囲気にもよく似合っており、なかなか素敵だ。
ベルモント公園
ベルモント公園は道路を挟んで北側に分園があり、こちらは特にオーストラリアに因んだ事物は置かれていないようだが、遊具を配した広場に樹木が大きく枝を広げている。この分園の一角、道路脇にトイレが設けられているのだが、このトイレの建物の意匠も三角屋根のレンガ造りでなかなか洒落ている。入口横にはバラが植えられているのもいい。
ベルモント公園
ベルモント公園は規模の点から言えば、地元の人たちのための日常的な憩いの場としての役割を持つものだろう。しかし足立区とベルモント市の友好都市提携を記念して造られ、園内にさまざまなオーストラリア関連の事物を展示しているという在り方は、充分に遠方から訪ねてくる価値のあるものだと思える。オーストラリアの文化などに興味のある人はもちろん、そうでなくてもオーストラリアの雰囲気をほんの少し味わってみるのは楽しい。園内のブラシノキや黒鳥などは、花や動物の好きな人にはなかなか他では見る機会の少ないものとして魅力的だろう。小さい公園だが、他にない特徴を持った魅力的な公園だと思える。
ベルモント公園
ベルモント公園
ベルモント公園
このベルモント公園は、実はバラの隠れた名所でもある。本園部分の北側から東側にかけての外周に沿ってさまざまな品種のバラが植えられ、鮮やかな花を咲かせている。特に東側外周部は小さいながらも“バラ園”のように設えられており、ゆったりとバラを観賞しながらの散策を楽しむことができる。北側の道路脇に植えられたバラは、角度によっては陳列館の建物を背景に見ることもでき、なかなかフォトジェニックな風景を見せてくれる。植栽されたバラの数は決して多くはないが、バラの好きな人ならバラが花期を迎える季節に訪れてみるといい。
ベルモント公園
東武伊勢崎線梅島駅からベルモント公園へと向かうルート、駅前を南北に抜ける道路は旧日光街道だ。説明するまでもなく、江戸から日光東照宮へと参詣の人々が往来した街道だ。現在の梅島駅前には旧街道としての面影はあまり感じられないが、商店街を過ぎると街路樹の美しい佇まいとなり、旧街道であることに因んだモニュメントなども設置されている。町歩きの好きな人なら、江戸の昔に日光東照宮へと往来した人々の姿を想像しながら旧街道を歩いてみるのも楽しいだろう。
参考情報
公園は常時開園だが、陳列館は土曜、日曜、祝日のみの開館(年末年始は休館)だ。陳列館は入館料は必要ない。また公園へのペット連れでの入園はご遠慮下さいとのことだ。

交通
ベルモント公園は東武伊勢崎線梅島駅から至近で、徒歩で5分ほどだ。駅から北へ向かい、「梅島二丁目」交差点を東へ折れると道沿いに公園がある。

公園には駐車場はない。梅島駅周辺を中心に民間駐車場が点在しているようだが、規模の小さなものが多く、数も少ない。車での来訪はお勧めしない。

飲食
ベルモント公園は小さな公園で、園内にレストランや売店などはない。梅島駅周辺は商店街になっており飲食店も少なくないので、駅周辺に戻れば食事には困らない。

公園は市街地の中に位置しているが、あまり喧噪感がなく、のんびりとしているから、お弁当持参でアウトドアランチを楽しむのもお勧めだ。駅周辺のお店でテイクアウトのものを調達してから公園へ向かってもいいだろう。

周辺
梅島駅前は商店街だ。町歩きの好きな人なら商店街の散策を楽しむのもいい。また梅島駅から1kmほど南へ辿ると荒川へ出る。足を延ばして荒川の河岸を歩いてみるのも楽しいかもしれない。
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