東京都葛飾区堀切の堀切菖蒲園は東京で最も有名な菖蒲園と言っていいのではないか。昔、この辺りには多くの花菖蒲園があったという。現在の堀切菖蒲園はその頃の名残を今に伝える唯一のものだ。花菖蒲が盛りを迎えた六月上旬、堀切菖蒲園を訪ねた。
堀切菖蒲園
堀切菖蒲園と言えば東京で最もよく知られた花菖蒲園ではないだろうか。もしかすると関東で、いや日本で最も有名なものかもしれない。東京都葛飾区堀切に位置する堀切菖蒲園は葛飾区を代表する観光名所のひとつだ。
堀切菖蒲園
堀切菖蒲園
堀切菖蒲園
荒川にほど近い堀切の土地は海抜0メートルなのだそうだ。そのため湿潤な土地柄で、昔から花菖蒲の栽培に適していたらしい。堀切という地名もかなり古いものらしいが、その堀切で花菖蒲の栽培が始まったのも古く、室町時代にまで遡るという説もある。江戸時代は花菖蒲の栽培や品種改良が盛んな時代だったが、この堀切の土地でも多くの愛好家が花菖蒲を育て、“名所”として知られていたようだ。

江戸末期に「小高園」という菖蒲園が開園した後、明治に入って「吉野園」、「堀切園」、「武蔵園」といった菖蒲園が開園、堀切には多くの菖蒲園があったという。堀切の花菖蒲は“東京の花名所”として紹介され、大いに評判になったようだ。その最盛期は明治中期から大正末期にかけての時期だったというが、やがて時代の変遷とともに宅地に姿を変えるなどして姿を消していったらしい。

その当時の菖蒲園の中で唯一残ったものが姿を変えて現在の「堀切菖蒲園」に受け継がれている。戦後に唯一復興した「堀切園」を1959年(昭和34年)に東京都が買収、翌年から「東京都立堀切菖蒲園」として開園した後、1975年(昭和50年)に管理を葛飾区に移管、現在に至っているのだという。かつての「堀切園」の一部を母体に整備されたという現在の堀切菖蒲園は敷地面積7700平方メートルほど、特筆するほど規模の大きな菖蒲園ではないが、その中に200種、6000株の花菖蒲が育てられ、その中には希少な品種も少なくなく、日本全国の花菖蒲愛好家にその名を知られている。
堀切菖蒲園
堀切菖蒲園
堀切菖蒲園
堀切菖蒲園に咲き誇る花菖蒲は実に見事なものだ。決してその知名度の高さに恥じない。園内には散策路が縦横に巡り、花菖蒲の咲く風景をさまざまに楽しむことができる。花菖蒲の品種には「江戸系」、「肥後系」、「伊勢系」の三系統があるが、その「江戸系」というのが江戸初期から堀切で品種改良されてきた品種だという。堀切菖蒲園の花菖蒲は当然のことながら「江戸系」が中心だ。「江戸系」の中にも数多くの品種があるが、菖蒲園に設けられた品種名のプレートを見ながら、その風雅な品種名を確かめながら観賞してゆくのも楽しい。

花菖蒲が見頃を迎える六月上旬から中旬にかけて、「葛飾花菖蒲まつり」が開催される。堀切菖蒲園と水元公園を会場にして開催され、期間中は両会場ともに大勢の来訪者で賑わう。花の盛りを迎えた堀切菖蒲園もたいへんな賑わいだ。のんびりと花菖蒲を観賞しながら散策を楽しむ人たちもあれば、良い構図を求めてカメラのレンズを向ける人の姿も多い。中にはそれぞれの品種についての栽培方法など、ずいぶんと詳しい話をしている人たちもいる。花菖蒲の愛好家や、花の写真の趣味の人たち、そしてまた有名な花の名所を見てみようと訪れた人たち、さまざまな人たちがいるのだろう。そうした賑わいもまた“東京の花名所”としての堀切菖蒲園の興趣のひとつかもしれない。
堀切菖蒲園
堀切菖蒲園
堀切菖蒲園
堀切菖蒲園は菖蒲田を中心に庭園風に設えられており、ヤナギ、マツ、ギンモクセイ、モッコク、スダジイ、エノキ、ウメ、サルスベリ、サクラ、キョウチクトウ、カツラなど、さまざまな樹木が植えられている。スイセン、ボタン、フヨウ、ハギなど、四季折々の花々を楽しむこともできるようだ。花菖蒲の季節ばかりでなく、他の季節に訪れても楽しめるに違いない。

敷地面積1haにも満たない堀切菖蒲園は決して広大なものではない。例えば郊外に設けられた広大な敷地の花菖蒲園などを見慣れていると、堀切菖蒲園は意外にこぢんまりとした印象も受ける。周辺が住宅地であるために高層の建物なども視界に入るし、西側には荒川河岸を走る首都高速の高架なども目に入って少しばかり興をそがれるところも否めない。その知名度の高さ故に来園者もたいへんに多く、少しばかり喧噪感を感じるのも事実だ。しかし、それでも堀切菖蒲園は名実ともに“花菖蒲の名所”中の名所と言っていい。花菖蒲の好きな人なら一度は訪れてみなくてはいけない。花菖蒲の咲き誇る堀切菖蒲園は、花菖蒲園というもののひとつの“基準”だと言っていい。
堀切菖蒲園
堀切菖蒲園
堀切菖蒲園は最寄り駅の京成線堀切菖蒲園駅から歩いて十数分の距離だ。「菖蒲まつり」開催期間中は駅周辺の商店街もたいそう賑やかだ。駅前から堀切菖蒲園に至るルート上には提灯が提げられ、あちこちに「歓迎」と記されたパネルが掲げられて歓迎ムードに溢れている。商店街に軒を並べる店の中には、店先にパラソルを立てて休憩客を迎えているところある。下町風情の残る商店街の、そうした賑わいを楽しみながらのんびりと菖蒲園を目指したい。途中、両脇に紫陽花の植えられた小径があった。まだ六月上旬だったが、紫陽花はそろそろ見頃になりつつあるようだった。京成線堀切菖蒲園駅から堀切菖蒲園まで、散策路としても充分に楽しいものではないかと思える。
参考情報
堀切菖蒲園は入場無料だ。開園時間などは葛飾区公式サイト(頁末「関連する他のウェブサイト」欄のリンク先)などを参照されたい。

交通
堀切菖蒲園へは京成線堀切菖蒲園駅が最寄りだ。駅から堀切菖蒲園まで徒歩で15分ほどだろうか。駅から南へ向かい、商店街などを抜けて行かなくてはならないが、案内標識なども多く、迷うことはない。

堀切菖蒲園には駐車場はない。周辺には民間駐車場も少ない。「菖蒲まつり」開催期間中は荒川河川敷駐車場が利用できるとのことだが、電車での来訪がお勧めだろう。

飲食
堀切菖蒲園内には静観亭という集会施設があり、少人数から70名ほどまでの会合に利用できるとのことで、料理を注文して宴会に利用することもできるらしい。利用するには予約が必要のようだ。また施設1階は喫茶コーナーになっており、こちらはもっと気軽に利用することができる。

菖蒲園内にはお弁当を広げられる広場などはない。ベンチが設けてあるが、来園者がたいへんに多く、のんびりとお弁当を広げるのは難しいだろう。食事は菖蒲園の外で楽しむのがよいかもしれない。菖蒲園の近くには飲食店は少ないようだが、京成線堀切菖蒲園駅周辺を中心に、商店街などに飲食店が点在している。駅周辺へ戻って好みのお店を探してみるといい。

周辺
堀切菖蒲園の周辺はかつて多くの菖蒲園があった土地柄だが現在は住宅街だ。住宅街の中に寺社や史跡が点在し、京成線堀切菖蒲園駅の周辺には下町風情の漂う商店街がある。町歩きの好きな人ならそうした商店街を散策してみるのも楽しいに違いない。また菖蒲園のすぐ西側には荒川が流れている。荒川の河岸を少し歩いてみるのも一興かもしれない。葛飾区が発行する「堀切マップ」というリーフレットに周辺の案内が記されている。リーフレットは堀切菖蒲園で入手することができるので参考にするといい。
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