東京都江戸川区北小岩近くの江戸川河川敷に設けられた小岩菖蒲園は江戸川区を代表する名所のひとつだ。河川敷という立地が開放感に溢れ、爽快な気分で花菖蒲を楽しむことができる。花菖蒲が見頃を迎えた六月上旬、小岩菖蒲園を訪ねた。
小岩菖蒲園
京成線江戸川駅を降りて線路の北側を東へ向かって歩くとすぐに江戸川だ。堤防道に上がると開放感に溢れた河岸の風景が広がる。その河川敷に小岩菖蒲園が設けられている。六月の花期を迎えて「小岩菖蒲園まつり」が開催されて賑わっている。
小岩菖蒲園
小岩菖蒲園
小岩菖蒲園は敷地面積2ha弱、そのうち4,900平方メートルほどが菖蒲田という。決して“広大”というわけではないが、河川敷という立地が開放感に溢れており、爽快な気分の中で花菖蒲を楽しむことができる。菖蒲園は庭園風に設えられ、菖蒲田を囲むように、あるいは菖蒲田を縫うように散策路が巡っている。随所にベンチが設けられ、四阿もあり、のんびりと花菖蒲の景観を楽しむことができる。菖蒲田には品種名を記したプレートも立てられているが品種毎に区画を設けて育てられているというわけではないようで、一面に広がる菖蒲田にさまざまな品種の花菖蒲が群生しているという印象だ。訪れたのは六月上旬だったが、まだ満開ではなく五分咲き程度といったところだ。それでも群生して咲く花菖蒲の美しさというものは充分に堪能できた。
小岩菖蒲園
河川敷という立地のために周囲に視界が開け、どこから眺めても初夏の青空を背景に花菖蒲を楽しむことができるのもいい。花菖蒲は日本庭園や谷あいの菖蒲田に咲く姿が風情があって良いものだが、こうした開放感のある風景の中で楽しむのも良いものだ。江戸川対岸には高層の建物なども建ち、それが視界に入ってくるものの、川の対岸ということで距離があり、あまり景観の邪魔になる印象ではない。菖蒲田の周辺に立つエノキなどの樹木の姿が景観にアクセントを与えているのもいい。
小岩菖蒲園
河川敷を利用した駐車場が隣接して設けられているため、マイクロバスなどでやってくるお年寄りの姿も少なくない。デイサービス施設などのお年寄りなのだろう。菖蒲園は平坦な立地で主要な散策路は舗装されているから車椅子でもまったく問題が無いのも、そうしたお年寄りが訪れるのに適しているのだろう。ベビーカーを押して訪れた若い夫婦の姿もあったが、ベビーカーでももちろん問題が無い。“バリアフリーな”花菖蒲園だと言うことができるかもしれない。
小岩菖蒲園
小岩菖蒲園
小岩菖蒲園
菖蒲園の周辺部には紫陽花も植栽されているようだ。まだまだ見頃とは言い難いが、そろそろ花期を迎えて咲いている紫陽花もあった。うまく時期が揃えば花菖蒲と紫陽花の双方を楽しむことができるだろう。菖蒲田の脇には小さな池があり、この池ではスイレンが花を咲かせていた。まだ花の数が少ないが、もう少し経てば多くの花を見ることができるようになるだろう。また、この池ではアサザも見ることができるという。アサザは池や沼などに見られる多年草で、夏に黄色い可憐な花を水面に咲かせる。昔はごく普通に見られた水草だが、近年は絶滅が危惧されている。訪れたときにも少しだけだがアサザの花を見ることができた。初秋になると菖蒲田脇でフジバカマの花も楽しめるようだ。花の好きな人なら夏から秋にかけて再訪してみるのもいいかもしれない。
小岩菖蒲園
小岩菖蒲園は花菖蒲の美しさはもちろんだが、河川敷の立地による開放感がたいへんに魅力的だ。訪れた日は真夏のように暑い日だったが、川面を渡ってくる風が心地良く、日陰での一休みはとても気持ちの良いものだった。すぐ横に京成線の鉄橋があるため、電車が通り過ぎるときには音が大きく響くのが難点だが、“我慢できない”というほどではない。菖蒲田横には草はらの広場があり、数は少ないが木陰もあるから、お弁当持参でピクニック気分で訪れても楽しめるだろう。
小岩菖蒲園
参考情報
小岩菖蒲園は入場無料だ。河川敷の立地なのでこれといった施設は併設されていない。トイレは簡易トイレが設置されている。その他、詳細は江戸川区公式サイト(頁末「関連する他のウェブサイト」欄のリンク先)を参照されたい。

交通
小岩菖蒲園へは京成線江戸川駅が最寄りだ。駅から小岩菖蒲園まで徒歩で5分ほど。駅から東へ少し歩き、江戸川右岸の堤防を越えた先の河川敷に小岩菖蒲園が設けられている。

六月の土曜、日曜にはJR総武線小岩駅と小岩菖蒲園とを繋ぐ臨時バス路線も運行されるようで、菖蒲園横の駐車場脇にバス停が設けられていた。JRの方が便利だという人はこれを利用するのもいい。

車で来訪する場合は小岩菖蒲園に隣接して河川敷に設けられた駐車場を利用できる。河川敷グラウンドの駐車場を兼ねているが400台ほどの駐車スペースがあるようだ。河川敷駐車場へは蔵前橋通りと千葉街道とが交差する「江戸川」交差点(市川橋西側)から北へ入り込んでゆくのが最もわかりやすいが、道が狭く、一方通行も多いので注意が必要だ。

飲食
小岩菖蒲園は河川敷の立地で開放感に溢れ、お弁当を広げてアウトドラランチを楽しむのがお勧めだ。脇の方には小さいながらも草はらがあり、数は少ないながらも木立があるので木陰にシートを広げてくつろぐこともできる。お弁当を広げる場所にはそれほど困らないように思える。

小岩菖蒲園には飲食店などはなく、入口横に露店が設けられて焼きそばなどの軽食やドリンク類を販売している程度だ。京成線江戸川駅近くに少しばかり飲食店があるものの、数は少ない。駅前の“ガード下”にはスーパーがあり、お弁当なども販売しているようだ。

周辺
小岩菖蒲園は江戸川右岸の河川敷という立地で、河岸の開放感に溢れている。少し散策の足を延ばして河岸を辿ってみるのも楽しい。京成線江戸川駅の南側には宝林寺という寺があり、「北向き地蔵と常燈明」が「えどがわ百景」に選ばれている。また少し距離があるが、駅から北西へ20分ほど歩くと天祖神社があり、ここのイチョウも「えどがわ百景」のひとつだ。併せて訪ねてみるのもいい。
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