東京都港区北青山、明治神宮外苑のイチョウ並木は黄葉の景観の見事さが広く知られ、都内の黄葉の名所として名を連ねている。並木が黄葉に染まった晩秋の日、明治神宮外苑イチョウ並木を訪ねた。
明治神宮外苑銀杏並木
明治神宮外苑銀杏並木
明治神宮外苑のイチョウ並木は東京都内で最もよく知られた並木道のひとつと言っていいだろう。国道246号(青山通り)の「青山2丁目」交差点から外苑中央広場を巡る円周道路まで、ほぼ南北に延びる300メートルほどの道路がイチョウ並木になっている。イチョウの木は総数146本、道路の両脇に2列ずつ、4列が並ぶ。先の尖った円錐形となるように端正に樹形を整えられたイチョウが並ぶ様子はたいへんに美しい。青山2丁目交差点側から見ると並木の延長上の真正面に聖徳記念絵画館の建物が見え、その景観の美しさもよく知られているものだが、この景観は樹高による木の並び順などにも配慮し、遠近法を巧みに利用したものだという。
明治神宮外苑銀杏並木
明治神宮外苑銀杏並木
明治神宮外苑のイチョウ並木が誕生したのは大正12年(1923年)のことだ。手がけたのは明治神宮外苑造成時に庭園主任技師を務めていた折下吉延博士だ。使用されたイチョウの木は折下吉延博士が明治41年(1908年)に新宿御苑在来木から採集した種子を宮内省南豊島御料地(現在の明治神宮内苑)内の描園で育てていたもので、成長していた1600本のイチョウから選抜し、樹形を整えて植樹したものという。そうしたことが並木の歩道脇に設置された解説板に記されている。訪れたときは目を通しておきたい。
明治神宮外苑銀杏並木
明治神宮外苑銀杏並木
神宮外苑のイチョウ並木は都道414号になっており、普段は車両の通行も多いが、日曜と祝日の昼間は車両進入禁止の措置がとられるようだ。その道路の両脇の歩道部分のそれぞれの両脇がイチョウの並木になっており、だから歩道はイチョウ並木の間に延びている。並木の歩道を歩けば、足元は落ち葉の絨毯で、黄葉のイチョウ並木から落ちる木洩れ日も黄金に輝いているようだ。歩道はそぞろ歩きを楽しむ人や写真を撮る人たちで賑わっている。車両進入禁止となっているときであれば、道路の中央に立って4列のイチョウ並木が北側の聖徳記念絵画館へと向かって集束してゆく景観をのんびりと楽しむこともできる。車両の通行があるときには青山通りを渡って交差点の反対側の歩道から見るといい。
明治神宮外苑銀杏並木
今回訪れたのは12月に入ってすでに一週間以上も過ぎてからだったが、今年(2007年)、関東地方はずいぶんと紅葉が遅く、さすがに落葉が進んでいるとはいえ、まだまだ充分に美しく、訪れる人の姿も多かった。当初は11月16日から12月9日の予定だった「いちょう祭り」も12月16日までに延長されたらしく、イチョウ並木北端に位置する噴水池周辺には露店が並び、設置されたテーブルでくつろぐ人たちの姿があった。
明治神宮外苑銀杏並木
全長300メートルほどの長さのイチョウ並木は、その規模の点で言えば決して大きなものとは言えず、歩いているとすぐに通り抜けてしまって呆気ないほどだ。しかし端正に樹形を整えられたイチョウが4列に並ぶ姿はたいへんに美しく、聖徳記念絵画館を中心に据えて遠近法的な景観を見せる様子もとても素晴らしい。都会の賑わいの中で楽しむ黄葉の風景は「名所」の名に恥じないものだ。晩秋の散策路としてお薦めのところだと言えるだろう。
参考情報
交通
明治神宮外苑イチョウ並木には東京メトロ銀座線「外苑前」駅や東京メトロ銀座線「青山一丁目」駅、東京メトロ半蔵門線「青山一丁目」駅、都営地下鉄大江戸線「青山一丁目」駅などが近い。イチョウ並木南端の「青山2丁目」交差点までいずれも徒歩で5分ほどだろうか。

駐車場は明治神宮外苑のものも含めて周辺に時間貸のものが点在するが、いずれも駐車台数にはあまり余裕がないようだ。やはり電車での来訪が無難だろう。

飲食
周辺にさまざまな飲食店が点在し、その意味では食事には困らないが、並木沿いのお店はやはり終日込み合うようだ。「いちょう祭り」開催期間であれば、噴水池周辺に並ぶ露店で軽食を買い求め、簡単に済ませてしまうという方法もあるが、都心であることだし、食事は場所を変えて楽しむのがよいかもしれない。

周辺
イチョウ並木を堪能した後はそのまま神宮外苑を散策するのもお薦めだ。外苑を北へ抜ければJR中央線千駄ヶ谷駅や信濃町駅、都営大江戸線国立競技場駅などを帰路に選ぶといい。そこまで来れば新宿御苑も近い。併せて訪ねてみるのもいい。
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