東京都奥多摩町、多摩川上流の「奧多摩湖」は都内有数の行楽地のひとつだ。山々と湖とが織りなす景色は四季折々に美しく、常に多くの行楽客を迎えている。山々が秋の色に染まった晩秋の日、奧多摩湖を訪ねた。
晩秋の奧多摩湖
晩秋の奧多摩湖
いわゆる「奧多摩湖」は多摩川の流れが小河内ダムによって堰き止められてできた「ダム湖」だ。正式には「小河内貯水池」といい、「奧多摩湖」というのはあくまで通称なのだが、一般には広く「奧多摩湖」の名が浸透し、「小河内貯水池」などと言ってもおそらくわからない人の方が多いに違いない。

小河内ダムは1938年(昭和13年)に建設工事が始まり、1943年(昭和18年)から戦争激化のために中断、1948年(昭和23年)から工事が再開され、竣工したのは1957年(昭和32年)のことだ。ダムの名の小河内(おごうち)はダム建設地の当時の地名「小河内村」に由来している。小河内村は1955年(昭和30年)に周辺町村と合併して奥多摩町が誕生したが、旧小河内村の大部分はダム建設によって水没、945世帯が移転を余儀なくされたという。小河内ダムは東京都民の水道用水確保を目的に計画されたもので、東京都の主水源が利根川水系となった現在でもその重要性は変わっていない。
晩秋の奧多摩湖
晩秋の奧多摩湖
晩秋の奧多摩湖
奧多摩湖は東京都最西端である奥多摩町の、さらにその西部に位置し、山梨県との境も近い。川の流れを堰き止めてできた湖だから当然のことながら、山々に囲まれて伸びる谷筋を水が満たして複雑な形の湖を成している。その北岸には国道411号が山肌に張り付くように伸び、トンネルを抜け、橋を渡りながらうねうねと西へ辿り、やがて都県境を超えて山梨県へと至っている。都県境が近くなった辺りで深山橋が湖を跨いで国道139号が南へ分岐し、これも山梨県へと繋いでいる。

奧多摩湖の東端、小河内ダム横の湖岸は公園風に設えられており、駐車場も設けられている。行楽客の姿の多いところだ。一角には東京都水道局の施設「奥多摩 水と緑のふれあい館」が建っている。「奥多摩 水と緑のふれあい館」では小河内ダムとその周辺の自然、さらに奥多摩の歴史、文化などについての展示がなされており、なかなか興味深い。無料で入館できるから訪れたときにはぜひ見ておきたい。ダムの堤体上に設けられた展望塔も無料で入館できる。これも見ておきたい。

国道139号の深山橋の南側の袂からは奥多摩周遊道路が奧多摩湖の南岸を東へ辿り、やがて「山のふるさと村」へと至っている。「山のふるさと村」は正式には「東京都立奥多摩湖畔公園 山のふるさと村」という東京都の施設で、キャンプ場やクラフトセンター、自然散策路、レストランなどの設備を置いており、バーベキューなども楽しめるから目的に応じて利用してみるのもいい。
晩秋の奧多摩湖
奧多摩湖と言えば「ドラム缶橋」がよく知られている。奧多摩湖の北岸と南岸とを繋ぐ歩行者用の浮橋で、現在(2007年11月)はふたつの浮橋が設けられている。「ドラム缶橋」というのはもちろん通称で、昔は浮体として本物のドラム缶を用いていたことからそう呼ばれるようになった。今はドラム缶に類似した形状の樹脂製の浮体が用いられている。せっかく奧多摩湖に来たなら、やはり「ドラム缶橋」を渡ってみよう。今回は上流側に設けられた留浦の浮橋を歩いてみた。湖面を渡る風が少し寒いが、水面近くから見る景色はやはり湖岸からの景色とは違った魅力があって楽しい。
晩秋の奧多摩湖
湖岸の国道411号を車で辿れば、車窓にはさまざまに表情を変える湖と山々の景観が広がる。今回訪れたのはすでに晩秋、山の木々は秋の色を纏っている。奧多摩湖周辺は紅葉の名所としても知られているが、寺社や庭園などの繊細な美しさとは違って、山々と湖の織りなす壮大な景観の見せる晩秋の表情が、その魅力と言っていい。そうした景観を眺めながらゆったりとドライブを楽しむのがお薦めだが、運転者はゆっくりと眺望を楽しむことができないのが難点だ。国道沿いにはところどころに駐車場が設けられているから、ときおり車を停めて湖岸を散策してみるといい。
参考情報
交通
奧多摩湖へは車での来訪が便利で楽しい。国道411号を辿って湖畔を巡るのは、やはり車の方が気軽で簡単だ。ただ湖岸の国道411号はカーブの連続と言ってよく、そうした道路に慣れていない人はくれぐれも運転に注意されたい。小河内ダムや蜂谷橋横、留浦の浮橋入口など、随所に駐車場が用意されており、そこに車を停めてのんびりと散策しつつ眺めを楽しむとよい。電車で奧多摩湖へ訪れる際にはJR青梅線で奥多摩駅まで来て、そこから奧多摩湖まではバスやタクシーを使うことになる。

飲食
国道411号沿いに数は少ないながらも飲食店が点在する。また「奥多摩 水と緑のふれあい館」内にレストランがあるので、それを利用するのもいい。もちろん陽気の良い季節であれば湖岸にうまく場所を見つけてお弁当を広げるのもよいものだ。
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