日南海岸散歩
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「わかば」に見る宮崎
第1週(第1回〜第6回)
2004年9月27日〜10月2日放送
高原若葉は神戸に生まれ育った。1995年の阪神淡路大震災で父を亡くし、震災後は母親の実家である宮崎県日南市飫肥に避難した。飫肥の町で酒造会社を営む伯父の家に、母詩子と弟光と共に身を寄せ、それから五年が経った。若葉は亡き父との約束を果たすため、造園家を目指し、神戸の建設会社への就職を考えている。詩子は常に笑顔で楽天的な女性だが、まだ震災の傷が癒えていないようだ。光もまた父を亡くした悲しみから立ち直れていないように見える。そんな三人を見守りながら共に暮らす伯父の一家だが、その村上家の息子啓太はどうやら父親に反抗し、あまり素直ではないようだ。若葉は宮崎環境造園大学で造園を学び、チアリーディングに打ちこむ日々だが、同級生谷準一が若葉に思いを寄せているらしい。同級生の吉村絵里にそのことを教えられ、戸惑う若葉だ。
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第1回(9月27日放送)
第1回の「わかば」は主人公の高原若葉が生まれ育った神戸の町を就職活動のために訪れているというシーンから始まる。内容は主要登場人物と物語の舞台となる神戸の町と飫肥の町の紹介といったところで、特に大きく物語が動き出したわけではない。

飫肥の町 若葉(原田夏希)の母、詩子(田中裕子)は趣味がウォーキングだそうだ。歩いているシーンがあったが、あれは飫肥の町を囲むように南側を流れる酒谷川の河岸だ。

若葉と弟の光(崎本大海)、母の詩子の三人が身を寄せるのは、詩子の実家である飫肥の酒造会社村上家だ。酒造会社といってももちろん日本酒ではなく、焼酎だ。日南市には焼酎の醸造元が多い。その村上酒造の当主村上浩太朗(西郷輝彦)が若葉の伯父にあたる。その息子、若葉の従弟にあたる村上啓太(内野謙太)はどうやら少々素行がよろしくないようだ。親の声を無視して啓太は家を飛び出してゆくが、その息子に対して浩太朗が「あんげながんたれ、おらしらん」と言う台詞を吐くシーンがあった。「あんなろくでなし、おれは知らん」といった意味だ。「あんげな」が「あんな」で、「おら」は「おれは」だ。「がんたれ」は「役立たず」とか「おんぼろ」といった意味で、「元々の造りがよくない、あるいは老朽化してしまったなどという理由で、役に立たない」という場合に用いる言葉で、人だけでなく物品やシステムに対しても用いる。「こん車はがんたれじゃ」と言えば「この車は造りのよくない粗悪品だ」とか「この車はもうポンコツだ」といった意味になる。人に対して用いれば「役立たずのろくでなし」といったところか。

浩太朗の母、村上のぶ(南田洋子)と浩太朗の妻、村上幸恵(斉藤慶子)が仕事をしているところに詩子が帰ってくる。三人で談笑し、「いっちゃが、いっちゃが」というシーンがある。「いっちゃが」は「いいんだよ」といった意味だ。「いっちゃが、いっちゃが」は、だから「いいよ、いいよ、だいじょうぶだよ」といったニュアンスで使われる。「〜ちゃが」は「〜だよ」という意味で広く使う。村上幸恵を演じる斉藤慶子は宮崎県出身だから宮崎弁は巧みだが、斉藤慶子の出身地である小林市と、「わかば」の舞台となっている日南市とでは少々方言は違っている。それでもやはり他の俳優の方々に比べれば、彼女の言葉は完璧な宮崎弁と言ってかまわないだろう。ひとくちに「宮崎弁」と言ってしまうが、宮崎県の中でもその方言は微妙に違う。日南市の中でさえ、地域によって異なっている。例えば港町である油津は少々荒っぽい印象があり、城下町である飫肥では穏やかで上品なニュアンスがある。「わかば」で用いられているのは完璧な「日南弁(飫肥弁)」ではなく、他の地方の人にもわかりやすいように少々の工夫がなされているとのことだ。

若葉の弟、光は日南第一高校に通っているという設定だ。日南市に「日南第一高校」という高校はもちろん実在しない。おそらく「日南高校」をモデルにしたものだろう。

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第2回(9月28日放送)
就職活動のために神戸を訪れていた若葉が日南に帰ってくる。必ず合格すると確信する若葉だが、弟の光はそんな姉をあまり快く思ってはいないようだ。母はどのように思っているのだろうかと心配する若葉だが、なかなか母に直接確かめることができない。

後町通り 神戸から宮崎まではおそらく空の便で帰ってきたのだろう。宮崎空港から飫肥までは日南線だ。日南線の車両に揺られる若葉の姿が映し出される。その車窓の向こうにわずかに「鬼の洗濯板」が見え隠れする。あの景色はおそらく内海から小内海に向かう区間だろう。飫肥駅に降り立った若葉はスクーターで村上家へと戻る。橋を渡るシーンがあるが、あの橋は飫肥の町の南方で酒谷川に架かる前鶴橋だ。飫肥駅から飫肥の町中へ帰るのに前鶴橋を渡るのは不自然だが、演出上の理由でロケ地が前鶴橋となったのだろう。若葉のスクーターは学校帰りらしい光と級友の山下厚子(山内明日)が並んで歩くところを「青春やねー」と声をかけて追い越してゆく。光と山下厚子が歩いていたのは鯉の泳ぐ水路で有名な後町通りだ。

村上家のシーンに「冷や汁」が登場する。最近では宮崎の郷土料理としてすっかり有名になった観のある「冷や汁」だが、「冷や汁」は本来は西都市を中心にした地域に伝わるもので、日南市のあたりではあまり馴染みがない。日南市の家庭で「冷や汁」を日常的に作って食べるところはほとんど無いのではないだろうか。劇中では「おばあちゃん特製の」ということになっているから、おばあちゃんである村上のぶが元々西都の辺りの人で、飫肥に嫁いできたという設定であるのなら不自然ではない。

若葉は宮崎環境造園大学の四年生だそうだ。宮崎環境造園大学という大学は実在しないが、ロケに使われた南九州大学には「環境造園学部」が実在する。若葉は飫肥の村上家から大学までスクーターで通っているようだ。その通学風景が劇中に登場する。「堀切峠」として有名な「日南海岸」を代表する景観が画面に映し出される。ちょうどフェニックス・ドライブインが建っていたところだ。フェニックス・ドライブインは2005年春に「道の駅」としてリニューアルされるため、2004年4月から閉鎖されている。「わかば」の宮崎ロケは2004年6月だったはずだから、劇中の画面に登場する「飫肥土産」などと記した幟は演出のために置かれたものに違いない。「宮崎環境造園大学」は宮崎市にあるという設定だと思うが、若葉は日南市から宮崎市までスクーターで通学していることになる。ちょっと遠いかもしれないな、と思ったりする。

村上家当主の浩太朗は素行の良くない息子に対してまた「がんたれ」を口にする。「がんたれ」はそれほど多く使う言葉ではないように思うのだが、これもおそらく浩太朗の口癖という設定なのかもしれない。おばあちゃんの台詞では印象的に「〜が」という語尾が登場する。「いいが」というふうにだ。「いいが」は「いいんだよ」といった意味で、「〜が」と語尾に付くのはたいてい「〜だよ」という意味合いだ。それにしても、俳優さんたちの話す「日南弁」はやはり少しばかり違和感がある。「こんげな喋り方はせんがね」などと笑いながら「ツッコミ」を入れつつご覧になっている宮崎県人は多いのではないだろうか。その中でただひとり、やはり宮崎県出身の強みか、斉藤慶子の演じる村上幸恵の喋り方は、言葉のアクセントや抑揚などの点に於いて本来の「日南弁」に最も近く、違和感が無い。

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第3回(9月29日放送)
村上家では村上酒造の跡継ぎ問題に頭を悩ませているようだ。息子の啓太はさっぱりあてになりそうにない。それにひきかえ、若葉の弟、光は自らすすんで毎朝浩太朗の仕事を手伝っている。幸恵と詩子が談笑しているとき、冗談なのか、本気なのか、いっそのこと光と啓太のふたりを村上酒造の跡継ぎにと、話が盛り上がる。どうやら啓太は村上酒造の跡を継ぐつもりのようだが、それは光しか知らないことのようだ。

飫肥城址の杉林 啓太と光が朝の通学途中に自転車で並んで話をするシーンがある。あのシーンの道は飫肥城大手門前から東へ延びる横馬場通りだ。道沿いに武家屋敷が並び、「武家屋敷通り」として知られ、飫肥城址と共に飫肥の観光名所のひとつになっている。劇中に登場した場所は通りの東端近くで、大手門側から見ている。番組終了間際、若葉が散策する杉林は飫肥城址の奧、旧本丸跡の杉林だ。劇中に登場したように杉の大木が並び、静けさに包まれた場所だ。

大学で若葉が同級生の谷準一(塚本高史)と話をするシーンで、谷の家ではピーマンも作っているという話題が出る。宮崎県はピーマンの生産で日本一だから、それを意識しての脚本なのだろう。

詩子と幸恵がふたりで焼酎の瓶にラベルを貼る仕事をしているシーンで、村上酒造の跡継ぎ問題に話題が及び、幸恵は出来の悪い息子を嘆く。「なしけあんげなったちゃろかねー」がその台詞だ。「どうしてあんなふうになったんだろう」という意味だ。この台詞がいい。宮崎では、まさにあのように言う。

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第4回(9月30日放送)
若葉は宮崎環境造園大学で学ぶ日々だ。同級生吉村絵里(仁平裕子)と話をしていて、準一が若葉と結婚したいと思っていることを知る。若葉はまったく気づかずにいたので驚いている様子だ。

田ノ上八幡の大クス ウォーキングが趣味の詩子は、今回は田ノ上八幡神社への参道を歩いている。石段を登る途中、すれ違う人と挨拶を交わすシーンがあったが、その背景に映っていた巨木は市の天然記念物にもなっているクスノキだ。樹齢450年ほど、樹高は30メートルという。飫肥藩初代藩主である伊東祐兵が植樹したクスノキであるともいう。

宮崎環境造園大学で、若葉が造園のための各種機械の操作を学んでいるシーンがある。ロケ地となった南九州大学にも「環境造園学部」があるが、そこでも実際に劇中と同様のことを学んでいるのに違いない。そのような大学でどのようなことを学ぶのか、紹介する意味もあるのだろう。大学からの帰り、若葉のスクーターがまた旧フェニックスドライブイン前を走る光景が映し出された。今回はあまり天気が良くなかったようだ。

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第5回(10月1日放送)
若葉が大学から帰ってくると、伯父夫妻が慌ただしく出かけようとしている。啓太の学校から呼び出されたという。どうやら喧嘩騒ぎを起こしたらしい。帰宅して啓太への怒りを爆発させる浩太朗だが、光から「啓太は仲裁に入って巻き込まれただけ」と真相を聴かされる。啓太を信じているという幸恵だが、父親の立場ではそうもいかないだろうと浩太朗はつぶやく。一方、親子喧嘩をする浩太朗と啓太を見て、今さらながらに父を亡くしたことを悲しむ光だった。

第4回放送の吉村絵里との会話シーンが再度映し出されて、第5回の放送は始まった。国道220号をスクーターで帰る若葉が映し出されるが、第4回ではそのまま走りすぎたように見えた旧フェニックス・ドライブイン前を、今回は横断歩道を過ぎたところで停車している。その後、若葉と詩子がふたりで散策する杉林は、第3回で若葉が歩いていた杉林と同じ、飫肥城址奧の杉林だ。1600年代以前に本丸があった場所であるらしい。ちなみに詩子が土産物を売っているのは、飫肥城大手門前の土産物屋が並ぶ一角だ。

帰宅した若葉は慌ただしく出かけて行く幸恵に、お客さんに焼酎を届けて欲しいと頼まれる。お客さんは「北郷町の谷さん」という。若葉の大学の同級生、谷準一の家のようだ。谷家ではスイートピーやピーマンの栽培を行っているということだが、北郷町にあるという設定のようだ。若葉が訊ねた谷家で応対してくれた準一の母親を演じているのが、宮崎県出身の女優、上原由恵で、彼女は「わかば」に於ける宮崎方言指導も担当している。谷家で作業を手伝っていたおばさんたちは、おそらく地元の人々だろう。ロケはどうやら北郷町ではなく東郷の農家を借りて行われたもののようだ。準一の母親が軽トラックに積み込むスイートピーの箱に「JAはまゆう」と記されているのが見える。「JAはまゆう」は「はまゆう農業共同組合」であり、宮崎県南の日南市、串間市、北郷町、南郷町の二市二町から成る。スイートピーもピーマンも、JAはまゆうの代表的な特産品だ。またJAの名となっている「はまゆう」は夏に白色の花を咲かせるヒガンバナ科の植物で、宮崎には多く自生し、「県の花」に指定されている。

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第6回(10月2日放送)
光を心配して神戸の叔母、王繁美(東ちづる)に電話をする若葉に、叔母は心配はいらないと力づける。村上家では焼酎の原料の芋を自家栽培しており、一家総出で作付けが行われる。珍しく啓太も手伝い、浩太朗は嬉しそうだ。そんな啓太の気持ちをおばあちゃんはよくわかっているようだ。詩子と若葉、光の三人は、亡き父浩一(内藤剛志)の誕生日を三人で祝う。常に笑顔を絶やさない詩子だが、未だに仏壇も置かず、好きだったケーキも絶っている。父が死んだことを認めたくないのだろうと若葉は気遣う。

芋の作付けを行うシーンはどこだろうか。よくわからないが、なかなか美しい丘の風景が映し出されていた。宮崎県と言うと、椰子やハイビスカスに彩られた南国的印象ばかりが先行するイメージだろうと思うが、実は海岸を離れればあのようなのんびりと穏やかな山間の風景が広がっている。山を覆う樹木は常緑樹が多く、冬になっても緑のままだ。関東あたりでは落葉樹が多いから冬になると葉が落ちて寒々とした風景となるのだが、それと比べると「冬」というものの印象もずいぶんと違う。

畑での会話シーンで、のぶが「(芋が)ふとーなる」と言っていた。「太くなる」でも意味は通じるのだが、実は日南辺りでは「大きい」ことを「ふとい」と言うことがある。さらに音が詰まって「ふち」と言う地域もある。「ふちこつよ」と言えば「大きいねえ」という感嘆を表す言い方である。「まこつ、ふとか(ふち)もんじゃ」と言えば「ほんとに大きいねぇ」というニュアンスだ。だから、劇中ののぶの台詞は「(芋が)大きくなる」と解釈するのが正しいだろう。

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- 「わかば」に見る宮崎−INDEX
- 「わかば」に見る宮崎−第2週(2004年10月4日〜10月9日放送)
- 「わかば」に見る宮崎−第3週(2004年10月10日〜10月16日放送)
- 「わかば」に見る宮崎−第4週(2004年10月18日〜10月23日放送)
- 「わかば」に見る宮崎−第5週以降(2004年10月25日〜2005年3月26日放送)
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