多摩市南野の一本杉公園は野球場やテニスコートを併設した、規模の大きな公園だ。南側のエリアには古民家や池などがあって散策を愉しむにもいい。古民家の周辺には梅が植えられており、早春には風情ある景観を見せてくれる。

一本杉公園の南側のエリアには旧有山家住宅と旧加藤家住宅の二棟の古民家が移設保存されている。この古民家の周辺に梅が植えられている。梅の木の数はそれほど多くはなく、豪華絢爛な梅林というものではないが、かえって素朴な味わいがある。

特に古民家を背景に見る梅は昔の農家の庭先のような風情があって、郷愁を誘うような風景だ。旧加藤家住宅は少し小高くなった場所にあり、入口から見上げれば早春の青空を背景に梅越しに古民家が見える。風趣に富んだ風景だ。

古民家のある一角から南側の斜面下へ降りて行くと、谷戸の地形となったところに梅林がある。こちらもそれほど梅の木は多くないが、静かな山里のような風情がいい。間近に梅を眺めるのもよく、少し離れたところから梅林の風景を眺めるのもいい。

梅が並ぶ奥には炭焼き小屋があり、傍らには薪の束などが無造作に置かれていたりもするが、そうした光景と梅の取り合わせも興趣のあるものだ。いろいろを構図を考えてカメラを構えるのも楽しい。

一本杉公園は特に“観梅の名所”として知られているわけではなく、観梅客はあまり多くはない。地元の人にはそれなりに知られているようで、散策を楽しむ人の姿がちらほらとある。梅の数もそれほど多いわけではないから、梅の花を楽しむというより、梅の咲く山里の風情を楽しむために訪れるのがお勧めだ。かつての多摩丘陵の素朴な早春の光景を彷彿とさせる風景が素敵だ。