横浜市中区根岸台の根岸森林公園は園内に梅林が設けられており、横浜市内の梅の名所のひとつに数えられている。約130種、300本ほどの梅が植えられているという。公園に隣接する根岸競馬記念公苑にも梅が咲いており、早春の観梅散歩が楽しめる。

根岸森林公園の梅林は本園部分の南西側に位置している。根岸森林公園は広大な芝生広場の開放感が魅力の公園だが、梅林は周囲から低くなった地形になっており、開放的に過ぎず落ち着いた佇まいだ。

小高い丘に囲まれて細長く伸びる谷筋に沿って、さまざまな品種の梅が植えられ、その中を散策路が延びている。梅林の中をのんびりと歩きながら梅の花を愉しむのもいいし、梅林の東側の丘に登り、そこから梅林を見下ろすのもまた違った風情があってお勧めだ。

梅林を“梅の咲く風景”として楽しむのもいいが、一本一本の梅のそれぞれを愛でながら楽しむのもお勧めだ。紅色の梅やピンクの梅、一重、八重、枝垂れの梅など、それぞれに美しく飽きない。梅にはそれぞれ品種の名を記したプレートが付けられており、何という品種の梅なのか、確かめながら見てゆくのも楽しい。

品種によってか、早咲き遅咲きがあるから、梅林の梅のすべてが同時期に咲き揃うということはないが、それでも花の盛りの時期には梅林全体が紅白の梅の花に染められてたいへんに美しい。

梅林の端にミツマタが植えられている。ミツマタは落葉の低木。樹皮が和紙の原料としても使われる、あのミツマタだ。枝が三つに分かれることからこの名がある。ミツマタは3月から4月にかけて特徴的な形状を花を咲かせる。黄色い花が一般的だが、紅色の花を咲かせるミツマタもある。

梅林のミツマタもちょうど満開を迎えた頃のようだ。あまり目に留める人はいないようだが、ミツマタもまた早春の風情を感じさせる花だ。ぜひ見ておこう。

根岸森林公園は梅の名所として広く知られているだけあって、観梅客は多い。梅林の中には四阿やベンチが設置されているから、それらを利用してランチタイムを楽しむ人たちの姿も多い。梅の花の季節はまだまだ寒いが、梅林は周囲を囲まれているために日溜まりとなって、あまり寒さを感じないのが嬉しい。

梅を愛でながら梅林を一巡りした後は、のんびりと“観梅ランチ”を楽しむのがお勧めだ。レジャーシートを持っていくといい。春を訪れを求めて訪れるのに好適なところだと言っていい。

芝生広場の南側、レストハウス脇の園路沿いに一本の梅が印象的に咲いている。鮮やかな紅色が冬枯れを残す園内の風景の中にアクセントを添えて美しい。遠景で見る風景もいいが、すぐ近くから見上げるのもいい。さまざまな構図で写真を撮りたくなってしまう素晴らしさだ。

この梅に注目する人は少ないようだが、この季節の根岸森林公園を象徴する風景のひとつではないかと思う。この梅の咲く風景も楽しんでおきたい。

根岸森林公園の東側には根岸競馬記念公苑が隣接しているが、この公苑内でも梅の花を愉しむことができる。根岸森林公園の梅林と比べればその規模は小さなものだが、庭先の梅を眺めているような風情があってあってなかなか楽しめる。枝垂れの梅もあるようだが、こちらは品種名の書かれたプレートなどはない。

梅の植えられた一角には四阿も置かれており、静かな公苑内でゆったりと時を過ごすことができる。観梅客もあまり多くなく、観梅の”穴場”的に愉しむことができるように思える。

「横浜駅根岸道路」に面した根岸競馬記念公苑のエントランス部分に河津桜が植えられている。河津桜（カワヅザクラ）はオオシマザクラとカンヒザクラの自然交雑から生まれた桜で、静岡県河津町で発見されたことからこの名がある。今ではすっかり一般の知名度も高くなり、各地に植えられて見ることができるようになった。河津桜はソメイヨシノなどと比べると開花が早く、東京近郊では2月下旬から3月上旬にかけて満開を迎える。

根岸競馬記念公苑に植えられた河津桜はまだ若木のようだが、しっかりピンク色の美しい花を咲かせている。早春の日射しを浴びて咲く河津桜は春の訪れを実感する美しさだ。

根岸森林公園は観梅の名所として充分に期待に応えてくれるものだ。「森林公園」と名付けられている通りに木々の多い公園内は常緑樹も多く、梅の季節でもクスノキなどが葉を茂らせて緑濃い佇まいだ。根岸競馬記念公苑の梅や河津桜と共に、のんびりと早春の公園散歩を楽しみたい。早春の陽気の良い日に、お弁当を持ってピクニックを兼ねた観梅に訪れるのがお勧めだろう。