横浜線沿線散歩公園探訪
相模原市田名塩田
田名向原遺跡公園
Visited in June 2009
田名向原遺跡公園
1997年(平成9年)3月、相模原市田名塩田の相模川左岸段丘上で後期旧石器時代の住居跡の遺構が発見された。約20000年前のもので、現在(2009年6月)、日本で最古の例という。この遺構は1999年(平成11年)に国の史跡に指定され、相模原市は周辺を整備、2007年(平成19年)に遺跡公園として公開が開始された。それが「田名向原遺跡公園」である。
田名向原遺跡は相模原市田名塩田の相模川河岸に位置している。現在の田名塩田地区は八瀬川の両岸に広がる整然とした住宅街だが、以前は畑地の広がる長閑な土地柄だった。旧石器時代の住居状遺構が発見されたのは、この地区の土地区画整理事業が行われているときだったようだ。炉の跡や柱穴の跡などに加え、3000点ほどの石器類が発見されたという。人類定住の歴史上、貴重な遺跡として注目され、保存活用が求められ、土地区画整理事業の事業者の協力を得て遺跡の保存が決定されたのだという。現在の遺跡公園のすぐ横には県道48号線(鍛冶谷相模原線)が通っているが、当初、この県道が遺跡のある場所を通る予定だったらしく、遺跡が発見されたために県道は東側に変更されたのだという。
田名向原遺跡公園 田名向原遺跡公園
「田名向原遺跡公園」はその遺跡を公開活用するために相模原市が計画を策定、平成17年度から工事を開始、2007年(平成19年)3月31日に開園したものという。公園には前述の後期旧石器時代の住居状遺構を復元したものに加え、公園東側の道路建設の際に発見されたという、約5000年前(縄文時代中期)の竪穴住居を復元したもの、さらに公園の北方60メートルの地点で発見されたという、約1400年前(古墳時代後期)の小型円墳を復元したものなどが展示されている。古墳は田名塩田から当麻谷原にかけて十数基が発見されており、「谷原古墳群」と総称されているものという。このうちの二基が公園内に保存されているとのことだ。それぞれに解説板が設置されているから、解説に目を通し、丹念に見学してゆくのがお勧めだ。
田名向原遺跡公園 田名向原遺跡公園
公園は、そもそも田名向原遺跡を保存活用するために計画され、造られたものだから、一般的な公園とは主旨が異なっており、”憩いの場”としての性格はほとんど無く、”子どもたちの遊び場”としての役割はまったく担っていない。それでも園内中央部は小さいながらも草はらの広場のように設えられ、ベンチも置かれ、のんびりとくつろいだひとときを過ごすことはできる。公園の南端部分は「展望広場」と名付けられた一角で、南西側に相模川を見下ろし、その名のようになかなか美しい眺望が楽しめる。ただすぐ横を県道48号線が通り、相模川の対岸には県道511号線(三井相模湖線)が走り、さらに東側に数百メートルほどのところを国道129号線が南北に抜けており、それらの主要道を走る車の音が絶えず耳に届くのが少しばかり残念なところか。
田名向原遺跡公園
公園の東側、県道48号線を挟んだ向かい側に「史跡田名向原遺跡旧石器時代学習館」という施設が建っている。田名向原遺跡のガイダンス施設として造られた学習館で、2009年(平成21年)4月にオープンしたものだ。旧石器時代をテーマにした施設は全国でも数少ないのだという。内部には旧石器時代の人々の暮らしを再現した展示などがなされており、旧石器時代を中心に縄文時代、古墳時代までについて学ぶことができる。講習室なども備え、講習会や体験教室などの利用も可能な施設になっている。小学生が学校の授業の一環として訪れることも少なくないようで、今回訪れたときにもたまたまバスで訪れた小学生たちと一緒になってしまった。小学生たちが乗ってきたバスは東京都内のナンバープレートが付いていたが、都内の小学校から訪れたのだろうか。学習館は入館無料で、展示物も無料で見学ができるから公園に訪れたときにはぜひ立ち寄っておきたい。
田名向原遺跡公園
約20000年前の後期旧石器時代の住居状遺構を復元展示した田名向原遺跡公園は史跡に興味のある人や、先史時代の歴史に興味のある人には見逃せない施設だ。そうしたものに特に興味の無い人でも、学術的に貴重な遺跡は充分に見応えのあるものだ。小学生くらいの子どものいる家庭なら、子ども連れで訪れるのもお勧めだ。復元展示された住居状遺構や古墳などを見学した後は、公園のベンチに腰を降ろし、遠い昔の人々の営みに思いを馳せてみるのも楽しい。

学習館横に駐車場が設けられており、普通車で20台分ほどの駐車スペースがある。施設の性格からバスでの来訪も視野に入れ、大型車の駐車スペースも設けられている。学習館の庭には小さな子どもたちのための複合遊具が置かれているが、これは近隣の人たちのための”子どもの遊び場”としての役割を担っているのかもしれない。トイレは学習館内と公園入口横に設置されており、不便はない。学習館の開館時間や問い合わせ先など、詳細は相模原市のサイト(頁末「関連する外部ウェブサイト」欄のリンク先)を参照されたい。

学習館から北へ住宅地の中を抜けてゆくと300メートルほどで八瀬川の河岸に出る。八瀬川の河岸には遊歩道が整備されており、散策してみるのもいい。学習館から一旦北へ出て、東へ数百メートル辿ると、国道129号線が近くなった辺りに「神奈川県内広域水道企業団 相模原ポンプ場」という施設がある。この施設の敷地内に「当麻谷原古墳」の一部が保存されている。外部から覗き見ることができるだけだが、興味のある人は足を延ばしてみるといい。
田名向原遺跡公園