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横浜元町と言えば、服飾関係のお店が多くお洒落な街という一般的イメージがあるように思う。中華街と山手の間に位置し、横浜の観光スポットのひとつに数えられてもいる。その横浜元町を歩いてみた。 |
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「ハマトラ」という言葉をご存じだろうか。1970年代の末から1980年代の初頭にかけて流行した若い女性のファッションスタイルの名称で、「ヨコハマのトラディショナル」を意味している。「ハマトラ」は清楚で溌剌としたお嬢様的雰囲気のスタイルで、当時の若い女性たちの圧倒的な支持を得て全国的規模の大流行となった。
「ハマトラ」にはいくつかの決まった定番アイテムがあった。特にフクゾーのトレーナー、ミハマのローヒール、キタムラのバッグは当時「三種の神器」とも呼ばれ、「ハマトラ」でキメたい女性たちにとってなくてはならない必須アイテムだった。フクゾーもミハマもキタムラもすべて元町に本店を置く老舗であり、それまでそうした流行とは無縁の店であったと言っていい。突然の全国的な大流行の嵐にそうした老舗たちは多少の困惑もあったかもしれない。日本全国から客が詰めかけ、急な量産などできるわけもなく、売るものがなくなったことさえあったという。 やがて「ハマトラ」の大ブームは過ぎ去ったが、その舞台となった元町までもが時代の中に置き去りにされることがなかったのは、「ハマトラ」に使われたアイテムの数々がいずれも職人気質の老舗によって造られる良質の品々ばかりであったことによるものだろう。そもそも元町は「ハマトラ」によって全国的規模の知名度を得る以前からそうした街であったし、それぞれに味のあるオリジナルな商品を提供する専門店の並ぶ商店街として独特のステータスを持っていた。そのイメージを「ハマトラ」の大ブームが決定づけたと言っていいのかもしれない。 あの「ハマトラ」ブームからすでに二十年ほどが過ぎたが、あの当時流行の渦中にあった女性たちはあの頃をどんなふうに思い出されるのだろうか。「私はあのブームの最中に山手の学校に通う女学生だった」というような方がおられたらお話を伺ってみたい気もする。 |

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横浜元町の歴史は横浜開港の時期にまで遡る。1859年(安政6年)に横浜が開港されると、それにともなって横浜村が日本人による商業地区と外国人の居留区に整備されることになり、翌1860年(万延元年)、90戸の横浜村の住民は隣接する山裾に強制移住させられた。そこを元村と言い、それが元町に改称され、元町の歴史が始まる。
元町は山手の外国人居住区を抱えて、彼らの生活を支えるための物資やサービスの供給という側面を持っていた。多くの技術を外国人たちから学びつつ、ベーカリーやクリーニング、洋服の仕立てなどといった西洋文化のサービスが元町から始まっていったのだった。当時から元町は職人の町としての性格も強く、西洋家具などはその代表的なものと言える。
元町商店街は大きく路線転換を計ることによって、その危機を乗り切ろうとした。日本人、特に若者をターゲットにした街造りの模索だった。昭和30年代から昭和40年代、県や市、地元銀行などの協力による街造り、オリジナル商品の開発、一流デパートとの提携などの努力によって次第に知名度を高めて行く。「元町ブランド」の誕生と言ってよいだろう。そして昭和50年代の半ば、「ハマトラ」の大ブームに沸くのである。 |
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ここが「横浜であって東京ではない」ということもまたひとつ大きな意味があるのかもしれない。「東京発」のファッショントレンドに安易に与することなく、その歴史の中で培われてきたであろう独自のセンスというものに、人々は惹かれ、憧れを抱くのではないか。そしてまた、「横浜」についての一般的イメージ、多くの人々が思い浮かべるであろう山下公園や外国人墓地、港の見える丘公園、山手に残る洋館といった異国情緒溢れる風景の数々が、元町のブランドイメージに重なって見えるのもまた事実だろう。 |

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元町商店街はほんの数百メートルの短かさで、ゆっくりと歩いてもすぐに通り抜けてしまう。しかし通り沿いに並ぶ商店はどれもみなお洒落だし、歴史を持つ老舗はどことなく重厚な佇まいさえ感じさせる。お店のショーウインドウの飾り付けや看板なども楽しく、交差する路地などの風情もいい。顧客の大部分が女性というだけあって、並ぶ商店は女性向けの服飾関係のものが多いが、それらにあまり関心の無い男性の身で歩いてみても何故か楽しいのは、そうした街全体の持つ雰囲気のせいだろうか。
狭く通りにくい車道を商品搬入のトラックや地元の人の車が通り抜けて行く。パーキングメーターに停めて買い物をするのも地元の人たちだろう。停まっている「横浜」ナンバーの車の中には、お洒落な外国車の姿も少なくない。通りを行き交う人々の姿もいい。お洒落な街を日常的な生活の場とする人々が必然的に身につける風情のさりげなさがいい。元町が若者の街であると同時に、大人の街でもあることがよくわかる。 中心となる「元町通り」だけでなく、それと平行する堀川沿いの「河岸通り」や山手側の「仲通り」なども歩いてみると、また違った元町の姿を見ることができるだろう。お洒落な構えの店に混じって少々古びた佇まいの建物が並ぶのもまた楽しく、街角にぽっかりと空いた穴のように駐車場があったりするのもおもしろい。ひょっこりと神社があったりするのもいい。神社は厳島神社といい、お祭りの時には大いに賑わうのだそうだ。
横浜の観光スポット、ショッピングスポットのひとつとして数えられる元町は、そうした視点で見てももちろん十分に魅力的だが、敢えて地元の人のような顔をして歩けばさらに楽しい。カップルのデートコースとしてはもちろん、独りでの散策にも良く、家族のある人なら家族連れで訪れても楽しいだろう。訪ねれば訪ねるほどに再び訪れたくなる街だと、そんなふうに思える。 |
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元町への最寄り駅はJR根岸線の石川町駅で、歩いてもすぐだ。元町からは中華街も近い。駅方面から元町通りを通り抜けるとフランス橋があり、そこから山下公園や港の見える丘公園へも近い。それらの横浜の観光スポットへの散策の拠点として元町の街を捉えるのもよいかもしれない。 |
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