横浜市中区山手町
アメリカ山公園
Visited in May 2024

山手町の北東部、山手97番地に「アメリカ山公園」という公園がある。みなとみらい線元町・中華街駅の駅舎屋上部分を利用して造られた公園で、感覚的には“元町・中華街駅の真上にある”と言ってもいい。横浜開港150周年(2009年)の関連事業として2006年度(平成18年度)から整備が進められ、2009年(平成21年)8月に開園したものだ。公園は元町・中華街駅からエスカレーターやエレベーターで繋がれ、アクセスも便利だ。横浜山手の観光名所のひとつとして知られる公園だ。

しかし当時のアメリカ公使ヴァルケンバーグはここには住まず、山手27番地(現在の横浜山手女子中学校・高等学校)に居を構えた。山手97番地にはアメリカ公使館の書記官だったポートマンが暮らし、1876年(明治9年)以降はイギリス人医師のウィーラーが住んでいたが関東大震災後に競売にかけられて民有地となったという。
戦後はアメリカ軍に接収され、米軍住宅が建てられた。1971年(昭和46年)には返還、国有地となったものを、2004年(平成16年)に横浜市が取得、公園として整備されることになった。このように横浜開港期にアメリカ公使館の予定地であったことや、戦後にアメリカ軍に接収されたことなど、アメリカとの縁があることからの「アメリカ山」のネーミングなのだろう。

これは2004年(平成16年)に都市公園法が改正されたのに伴って創設された「立体都市公園制度」を活用したもので、「立体都市公園」として全国初の例なのだそうだ。「立体都市公園制度」は公園用地確保の困難な都市部に於いて民間の施設や公共施設などと都市公園を一体的、立体的に整備することを可能にし、緑とオープンスペースを効率的、効果的に確保することを目的としているものなのだそうだ。
公園の総面積は0.6haほど(5520u)、そのうちの890uが駅舎の屋上部分となっている。公園の整備のため、それまで2階建てだった駅舎を4階建てに増築、エスカレーターやエレベーターが設置された。みなとみらい線の方でも公園の開園に併せて元町・中華街駅に新たに「アメリカ山公園口」を開設、駅から山手地区へのアクセスが格段に便利になった。
元町地区と山手地区との高低差は20メートル弱あるそうだ。これまでみなとみらい線の元町・中華街駅から山手地区を目指そうとすると駅東側の谷戸坂を上るか、あるいは港の見える丘公園内の散策路を辿って上るか、または西側の元町商店街側から見尻坂や元町公園内の散策路などを上らなくてはならなかった。エスカレーターとエレベーターの設置による“バリアフリー化”は観光客のみならず、地元に暮らす人にとっても嬉しいことなのだ。

残念ながら決して広い公園ではないからゆったりと園内を巡るには少し物足りなく、また通り抜ける人々の往来が多いからのんびりとくつろぐにも不向きかもしれない。

うまく構図を考えてバラと一緒に記念写真を撮るのも楽しいひとときだ。園内の一角からは北東の方角に横浜ベイブリッジを見ることができるが、横浜ベイブリッジを背景にバラと一緒に写真を撮るのもお勧めだ。バラの花をモチーフにしたデザインを園内で見つけることができるのも楽しい。

横浜というと幕末の開港期からの歴史ばかりに興味をそそられてしまうが、「元町貝塚」も解説に目を通しつつ、開港期よりもっとずっと古い時代の横浜の様子を想像してみるのも一興かもしれない。

アメリカ山公園から南へ、外国人墓地の東側の道を辿ってゆくと横浜地方気象台の横を抜けて山手本通りへ抜け出る。交差点になっており、すぐ横に外国人墓地の入口がある。そこから東へ数十メートル辿れば港の見える丘公園、そのまま真っ直ぐに南へ向かえばこちらも数十メートルで山手資料館や元町公園に至る。この付近が横浜山手の中心と言っていいところだ。
みなとみらい線元町・中華街駅と“直結”し、山手との動線を結ぶという立地のアメリカ山公園は、みなとみらい線を利用して横浜山手の観光に訪れる人にとっては“山手の玄関口”として機能することになるだろう。横浜山手の魅力をコンパクトに凝縮し、象徴したようなアメリカ山公園の印象は、充分にその役割を担ってくれるに違いない。
みなとみらい線元町・中華街駅と“直結”し、山手との動線を結ぶという立地のアメリカ山公園は、みなとみらい線を利用して横浜山手の観光に訪れる人にとっては“山手の玄関口”として機能することになるだろう。横浜山手の魅力をコンパクトに凝縮し、象徴したようなアメリカ山公園の印象は、充分にその役割を担ってくれるに違いない。




