横浜市都筑区東方町
大熊川あじさい緑道
Visited in June 2024

鶴見川の支流の一つに大熊川という川がある。横浜市都筑区東方町付近を源流とし、折本町から大熊町へと流れ、新羽町の南西端に沿うように鶴見川に注いでいる。この大熊川の最上流部、東方町を流れる部分は河岸に紫陽花が植栽され、初夏には美しい景観を見せてくれる。「大熊川あじさい緑道」と呼ばれて親しまれているところだ。紫陽花が見頃を迎えた六月初旬、大熊川あじさい緑道を歩いた。

仲町台駅前から南へ真っ直ぐに舗道が延びている。この舗道を辿っていく。舗道は陽光歩道橋という人道橋で新横浜元石川線を越えて、さらに南へ延びる。住宅地の中を抜け、道路を渡り、目の前の石段を登ると、風景が一変する。目の前に広がるのは港北ニュータウンとは対照的な、丘の上に広がる畑地の風景だ。

もうずいぶん前のことになるが、今回と同じように仲町台から出発して折本町を経由して横浜線鴨居駅まで歩いたこともあったし、東方町を経由して池辺町辺りまで歩いたこともある。農業専用地区の風景はあの頃とほとんど変わっていないように見える。

数百メートル降りたところでバス通りとの交差点がある。バス通りを西へ辿っていく。交通量はそれほど多くはないが、歩道が無いため歩くのは気を遣う。一部暗渠になっているために気付きにくいが、100mほど進んだところでバス通りは大熊川を越えている。大熊川を越えると、その先は東方町だ。

バス通りから100mほど進んだところで、道は五反(ごたん)橋という橋で大熊川を渡る。五反橋は1990年(平成2年)3月の竣工だそうだ。そこからさらに100mほど進むと視界が開けた。道の(すなわち大熊川の)両側には広大な畑地が広がっている。東方町の農業専用地区だ。

この十字路の脇に「東方農業専用地区」であることを示す案内パネルが設置されている。県内屈指のほうれん草、小松菜の産地だそうである。あまり知られていないことだと思うが、東方農業専用地区も折本農業専用地区も港北ニュータウン計画の一環として指定されているものだ。

大熊川の対岸側(南側)は北側より少し高くなっているため、河岸の農地と大熊川との間に小さな斜面がある。その斜面に紫陽花を植栽した形だ。南側には川沿いの道はなく、北側の道から川越しに見ることができるだけだから、紫陽花の花を至近距離で見ることはできない。あくまで“紫陽花の咲く風景”として楽しむ形だが、川沿いの道は一般車両の通行が制限されており、のんびりと散策を楽しむことができるのが嬉しい。

それでも一般的な西洋アジサイが植えられている場所やガクアジサイが植えられている場所があったりとそれなりに変化があり、また大熊川も途中で緩やかに蛇行するところもあって風景に変化があり、飽きずに楽しむことができる。

新田橋の上から上流側に目を向けると、大熊川の上流側の延長線上に、横浜ダイヤビルディング港北館やスズキ株式会社横浜研究所の建物が見える。それらの建物は新横浜元石川線と歴博通りとの交差点の角に建っているのだが、丘の上の立地であるためにこうして少し遠くからでもよく見える。それらの建物と、河岸に咲き誇る紫陽花、さらに送電鉄塔の姿などが組み合わさって興趣のある風景を織り成している。

新道下橋のすぐ下流側で、大熊川は緩やかに曲がっている。ゆっくりと曲がっていく大熊川の右岸の斜面に紫陽花が咲き誇っている。橋の上から見ればその風景がたいへんに美しい。

暗渠から開渠になる部分の河岸にも紫陽花が咲いている。大熊川あじさい緑道も、ここが“上流端”だ。

この辺り、新横浜元石川線の南側、歴博通りの東側に位置する住宅地は「桜並木」という町名が付けられている(横浜ダイヤビルディング港北館とスズキ株式会社横浜研究所は、この桜並木の町の西端部に建っている)。桜並木とはなかなか風雅な町名ではないか。歴史のある立派な桜並木があるのだろうかと連想してしまうが、実は町名の「桜並木」は“桜の並木”に由来するものではない。この辺りの古い地名「サクラナミ」(“狭間”を意味するらしい)に「キ」を付加して、「桜並木」の字を当て、新しい町名としたものだという。地名の変遷というものの面白みを感じる。

向原交差点を過ぎれば仲町台入口交差点まで400mほど。のんびりと駅を目指し、今回の散策もそろそろ帰路を辿ることにしたい。

大熊川のあじさい緑道は以前から訪ねてみたいと思っていた。今年(2024年)、ようやく機会を設けることができた。今回は大熊川のあじさい緑道にフォーカスを当てて、仲町台を拠点に一回りするコースで歩いたが、そのまま西進して横浜市営地下鉄グリーンライン都築ふれあいの丘駅を目指すコースにしても良さそうだ。久しぶりに折本町と東方町の田園風景の中を歩くことができて、大熊川の紫陽花もたいへんに美しく、楽しい散策だった。


