日野市南平
南平用水
(上流部)
Visited in November 2024

秋晴れに恵まれた十一月上旬、日野市南平を訪ねた。南平を流れる南平用水に沿って歩いてみたいと思ったのだ。今回は平山用水から南平用水が分水される場所から一番橋通りの辺りまで、南平6丁目、7丁目の町域を歩いてみたい。
日野市平山四丁目の中心部辺りに平山東公園という公園がある。この公園の南側に沿って平山用水が流れている。公園横で用水から一本の流れが分水され、元の用水に沿うように公園南側を流れていく。実は分水された流れの方が平山用水の本流で、元の流れはそのまま南平用水として東へ流れていく。11月上旬、平山用水へと逸れる水路にはほとんど水が流れていないが、その先、平山東公園の東側の区域に設けられた自噴井戸からの水が平山用水となって流れていく。
平山東公園のすぐ東側で、南平用水は南側から流れてきた水路と交差する。南側からの水路は丘陵地の湧き水を流しているものだとのことで、その濁り水が用水に混じるのを防ぐためにこうして水路を分け、水路の“立体交差”ができているというわけだ。南側から流れてきた水路は、その先で平山用水に合流しているようだ。平山用水は平山東公園の東側から北へ流れ、やがて南平西排水樋管に導かれ、浅川に流れ出ているようだ。
“水路の立体交差”を過ぎ、市道をくぐると、南平用水はスーパーの横を流れていく。駐車場の横を流れ、店舗の建物の裏側へと続いている。駐車場と店舗建物との間付近、用水から南へ分水する流れがある。分水された流れはスーパーの敷地脇を南に流れ、東京都道173号上館日野線(いわゆる「北野街道」)を横切り、北野街道の南側を東へ流れていく。根田堀と呼ばれる水路で、南平用水のもうひとつの主要流路と言っていい。根田堀の流れも追ってみたいが、それはまた次の機会にしたい。
スーパーの建物裏を流れる南平用水の右岸側に小径が沿っており、用水沿いを歩くことができる。用水沿いの小径は通り抜ける人の姿も無く、ひっそりとしている。歩くのが憚られるような印象だが、特に立入禁止などの注意書きは見当たらなかったから、通り抜けてもかまわないのだろう。スーパー店舗裏からアパートの裏へと用水沿いを歩いていくと、道路に出た。市道のようだ。市道が用水を越える小橋には「第3044橋」とのプレートがある。市道を横切った用水の、今度は左岸側に小径が沿っている。その小径を辿ってみたが、やがて生い茂る草木に阻まれて通り抜けることはできなかった。
市道へ戻って西側へと回り込んで北へ進んでみると、すぐに用水脇に出ることができた。用水の岸辺はちょっとした緑地スペースになっていてさまざまな木々が植栽されている。紫陽花が植え込まれた一角もあったから、花期を迎えれば美しい景観を見ることができるだろう。少し進むと、用水の上に“蓋”をして、その上を駐輪場として活用しているところがあった。「南平駅南第1駐輪場」だそうだ。もう南平駅が近いのだ。
さらに進んでいくといよいよ京王線南平駅が近くなり、町にも“駅前”の風情が漂い始める。駅に近付いた辺りで、用水は市道を斜めにくぐって市道の北側へ流れ、そのまま京王線の線路下へ流れていく。この先は用水沿いを歩くことができない。地図を確かめると、このまま駅前に出て、踏切を渡って線路の北側へ移ればまた用水沿いに出ることができるようだ。市道を真っ直ぐに進めば、南平駅の西側を南北に抜ける市道との丁字路だ。この辺りが南平駅の“駅前”と言っていい。周辺には何軒かの店舗が並び、ちょっとした駅前商店街の佇まいだ。
南平駅の“駅前”から北へ向かえば踏切(南平1号踏切)だ。踏切のすぐ北側で、市道が用水を越えている。「第3022橋」だそうだ。市道の東側、用水の上を利用して「南平駅北口ポケット広場」という施設が設けられている。ベンチなどを置いた休憩スペースという印象だが、面白いのは自由に利用できる“本箱”が設置されていることだ。小さな小屋のようなデザインの可愛らしい“本箱”の中には絵本などが常備され、開いている時間なら自由に読むことができる。「南平・緑と水のネットワークの会」によって2022年(令和4年)4月に設置されたものらしい。素敵な施設だ。
「南平駅北口ポケット広場」前から用水の右岸側に道路が辿っている。50mほど進むと「南平駅北第1駐輪場」の入口があり、用水は駐輪場の西側に沿うように北へ折れている。ちょうどその部分で、北へ折れる用水の本流から分水された水路が真っ直ぐに京王線の線路の北側に沿うように伸びている。こちらは(訪れたときには)水は流れていない。「南平駅北第1駐輪場」入口の先は用水沿いを歩くことができない。少し迷ったが、「南平駅北口ポケット広場」まで戻り、市道を辿って用水の北側を回り込んで東へ向かうことにしよう。
南平駅前の踏切から40mほど北へ(正確には北西の方角へ)進むと、十字路がある。十字路を右手(東方向)へ折れる。この道も市道のようだ。十字路から100mほど進んだところで、市道の南側に用水が沿うようになる。「南平駅北第1駐輪場」の西側を流れてきた用水がアパートの駐車場と民家との間に姿を現している。周辺は住宅街だ。住宅が建ち並ぶ中を、市道に沿って南平用水が流れていく。昔は農地が広がっていたのだろうと思うが、今はすっかり様変わりした。
数十メートル進んだところで丁字路がある。右手に折れて辿れば京王線の線路脇に出る。この丁字路部分、市道の下を用水がくぐっている。ここまで市道の南側(東側)を流れていた用水が、ここで市道の西側へ移っている。用水の上は「第3039橋」という“橋”らしい。その一方で、市道の東側にも変わらず水路が沿っている。「第3039橋」の手前で分水されているのだ。こうした用水はあちこちに分岐や合流がある。広い農地をまんべんなく潤すために必要だったのだろう。今は農地はほとんど無くなってしまったが、用水の流れに昔の風景を想像してみるのも楽しい。
「第3039橋」の丁字路のすぐ下流側(北側)、市道脇(東側)に「南平駅北第2駐輪場」が設けられている。駐輪場の北側には「日野市立みなみだいら児童館ぷらねっと」が建っている。用水の本流から分水されて市道の東側を流れていた水路は駐輪場手前で市道脇を離れ、駐輪場東側から児童館東側を辿って東へと流れている。南平用水の本流の方は変わらず市道の西側に沿って北方向へと流れていく。いや、用水が市道に沿って流れているのではなく、正しくは用水沿いに造られた道が今は市道となっていると言うべきか。
「日野市立みなみだいら児童館ぷらねっと」横を過ぎて、南平用水は住宅地の中を市道に沿って流れていく。用水は緩やかに曲がり、北向きから東向きに流れの方向を変えていく。「日野市立みなみだいら児童館ぷらねっと」横から150mほど進んだところで、用水は突然北へ折れて市道脇を離れ、住宅の建ち並ぶ中を抜けていく。その先は用水沿いを歩くことができない。用水を離れてそのまま道を進むと、100mほどで京王線の線路脇に出た。そのすぐ北側で、用水が姿を現している。用水は線路脇の市道と線路をくぐって東へ流れていく。
南平用水が京王線の線路をくぐるところのすぐ北東側、一番橋通りが通っている。一番橋通りは市道で、北野街道の「南平二丁目」交差点から北西の方角へ延びて、京王線の線路をアンダーパスで過ぎ、一番橋で浅川を渡って東豊田の町へ至っている。線路のアンダーパスには歩道も設けられているから、これを通って線路の南側(東側)へ移動しよう。このアンダーパスには「南平立体」の名がある。この立体交差が完成したのは2011年(平成23年)2月のことだ。1992年(平成4年)に道路拡幅などの事業が始まり、完成まで19年の歳月を要した。以前は狭い道路が線路を踏み切りで越えていた。その頃の風景の記憶も次第に薄らいでいく。
南平立体の上を越えていく線路脇、アンダーパスの側道部分に線路をくぐってきた南平用水の姿を見つけることができる。住宅の横にひょっこりと現れ、すぐに側道の下へ消えている。側道の下へ消えた用水の水路は暗渠のまま一番橋通りのアンダーパスの上を越えているようだ。線路沿いに設けられた側道の下を通っているのだろう。一番橋通りのアンダーパスが造られる以前はおそらく南平用水は単純に道路の下を真っ直ぐにくぐって流れていたのだろうと思うが、立体交差の工事の際に流路が変更され、暗渠化されて、アンダーパスの上部を越えるように改められたものだろう。
側道の路面にはマンホールやグレーチングを見つけることができる。グレーチングの上で耳を澄ますと水の流れる音が聞こえる。この下を暗渠となった南平用水が流れていると考えて良さそうだ。一番橋通りを越えた南平用水は、一番橋通り北東側の住宅横に再び開渠となって姿を現し、南平四丁目の町を流れていく。日野市立南平体育館横から日野市立南平小学校横へと流れ、その先で大きく曲がって北へ折れ、線路に近い辺りを東へ向かっている。その辺りはまた次の機会に辿ってみることにしたい。
ところで、南平用水が一番橋通りの南平立体の側道脇に出てきた辺り、そのすぐ南側にもう一つの水路が出てきているのに気付く。それほど広い水路ではないが、わずかに水が流れている。南平用水から分水された支流の一つだと思うが、どこから来たものか。この水路を遡ってみたい。水路脇の道路を上流側へと辿ってみよう。南平立体の側道から数十メートルは水路に沿って歩くことができるが、すぐに水路は住宅の間に姿を消してしまう。そのまま道路を100mほど、水路の上流側(と思われる方向)へ進み、丁字路の交差点を南へ折れてみると、水路を見つけることができた。
水路は建ち並ぶ住宅の間に挟まれるようにして流れている。市道をくぐる水路の上流側は蓋がされて暗渠化されている。その上を歩くことができそうだ。横の住宅が間近に迫り、入り込むのが憚られる印象だが、立入禁止などの注意書きはない。蓋がされて暗渠となった水路は30mほど進んだところで行き止まりになった。行き止まりになったところで、二本の水路が合流している。西側からの水路はほとんど水が流れていないが、北側(正確には北西側)からの水路にはわずかに水が流れている。
道路に戻って回り込み、さきほどの合流地点の北西側の上流部分へ向かってみる。水路はどうやら上流側で京王線の線路をくぐり、二本の道路を横切り、家々の隙間を流れてきているようだ。住宅と住宅の間を流れる水路がなかなか興趣のある景観を見せている。線路の向こう側がどうなっているのか、どこかで線路を渡らなくてはならない。少し西へ進むと、道の南側に水路が沿うようになる。どうやら先ほどの“暗渠の行き止まり”のところで合流していた、西からの流れのようだ。この水路も100mほど西で、南平駅のホームと線路の下に姿を消している。これも線路の北側に移動しなくてはわからない。
それらの二本の水路が流れている辺り、京王線の線路脇に「鼻どり田公園」という公園が設けられている。面積は452平方メートルほどの小さな公園だ。日野市緑と清流課によって園内に設けられた案内板に記された解説によれば、「鼻どり田」は公園の東にあった水田の名だという。“鼻どり田”というのは5〜6月頃に馬や牛を使って田を起こすときに馬や牛を誘導する補助的な仕事だそうで、少年や主婦が受け持つことが多かったという。その水田に“鼻どり田”の名を付けたのには理由があったと思われるが、今では不明とのことだ。
鼻どり田公園の南西側、すぐ横に踏切(高幡不動16号踏切)がある。踏切を渡って線路の向こう側へ移動しよう。踏切を渡った先では市道が線路に沿っている。踏切の南西側にはすでに南平駅のホームが延びてきている。市道を北東側(高幡不動側)へ50mほど進んだところ、線路脇に建ち並ぶ住宅の間から水路が現れている。水路は市道を暗渠でくぐり、そのまま線路下へと続いている。線路の向こうでは、先ほど上流側へと辿っていた水路に繋がっているようだ。市道から線路越しに先ほど見た風景が見えている。
この水路はどこから来たものか。線路脇の市道を南西側へ辿り、丁字路から北西側の住宅地に入り込んでみると、すぐにまた丁字路があった。「第3039橋」をくぐって南平用水が市道を横切っていた、あの丁字路だった。どうやら「第3039橋」の手前で南平用水本流から分水され、南平駅北第2駐輪場脇へと逸れ、「日野市立みなみだいら児童館ぷらねっと」の横を流れていった水路のようだ。あの水路がここで線路をくぐり、住宅地の中を東へ流れて、一番橋通りへ至っていたということだ。
「第3039橋」の丁字路へ通じる線路脇の丁字路から、線路脇には舗道が沿っている。舗道の横は南平駅のホーム、すでに“駅の横”と言っていい。この舗道の線路とは反対側に小さな水路がある。水は流れていない。どうやらこの水路が“暗渠の行き止まり”のところで合流していた、もう一本の水路、南平駅近くで線路をくぐっていた、あの水路の上流側のようだ。そのまま辿っていくと「南平駅北第1駐輪場」の入口に出た。なるほど、「南平駅北第1駐輪場」入口で南平用水本流から分かれた水路が、この水路だったというわけだ。納得できたところで、そろそろ今回の南平用水散歩は終わりにしたい。

今回は平山東公園から南平用水の本流に沿って一番橋通りの南平立体までを歩き、後半は期せずして途中で本流から分水された支流を遡る形になってしまった。まるで“調査”のような散策だったが、楽しいひとときだった。次の機会には上流部から南へ分水された「根田堀」や、一番橋通りを越えた南平用水の下流部を歩いてみたい。






