横浜線沿線散歩街角散歩
横浜市緑区中山〜青砥町
恩田川河畔
(中山〜青砥)
Visited in September 2024
恩田川河畔(中山〜青砥)
夏の暑さが続く九月の下旬、久しぶりに横浜市緑区中山を訪ねた。中山大橋の辺りから鶴見川との合流点の辺りへ、恩田川の河岸を歩いてみようと思ったのだった。この辺りはすでに何度も訪ねたことがあるが、周辺の街並みの変化は大きく、また新たな景色に出会うことができるかもしれない。
恩田川河畔(中山〜青砥) JR横浜線中山駅北口から北へ向かう。恩田川に架かる中山大橋までは300mほどの距離だ。中山大橋の手前、西側の恩田川河岸に中山駅北第一公園という小公園がある。ちょっと立ち寄っていこう。

中山駅北第一公園は面積3800平方メートルほどの小さな公園で、恩田川河岸の三角形の敷地に設けられている。広場を中心に構成され、東側の一角に滑り台やブランコ、砂場などが置かれている。桜の木が多く、春には美しい景観を見せてくれる公園だ。
恩田川河畔(中山〜青砥) 中山大橋の上から恩田川の上流側を眺めてみる。雲の多い天気で景観の印象が少し暗いが、緩やかな曲線を描いて流れる恩田川の景観は美しい。少し遠くに見える集合住宅の建物も景観のアクセントだ。

中山大橋から河岸の道を下流側に辿れば、200m足らずで都橋だ。都橋を通る道路は神奈川県道109号青砥上星川線だ。すぐ北側の「青砥」交差点を起点に保土ケ谷区西谷の「梅の木」交差点までを繋いでいる。交通量の多い道路で、ひっきりなしに車が行き交っている。

恩田川河畔(中山〜青砥) 今は「青砥」交差点から北へ県道109号の延長のように広い道路が抜けており、そのまま川和町を経て都筑区の区役所通りへと繋いでいるが、昔の「青砥」交差点は県道140号との丁字路の交差点だった。おぼろげな記憶を辿れば、その丁字路のすぐ東側から細い道路が青砥町北部の住宅地の中を抜けて北八朔町方面へ繋いでいた。

「青砥」交差点周辺が現在のような形に整備されたのは比較的近年のことだ。おそらく2014年(平成26年)頃のことだったのではないか。その後に車で通りかかって、あまりの変貌ぶりに驚いた記憶がある。すでに昔の景観を思い出すことも難しい。
恩田川河畔(中山〜青砥) 時と共に変わっていく町の景観に感慨を覚えつつ、「青砥」交差点の横断歩道を渡る。余談だが、交差点の南側、都橋袂のマツダの販売店は少なくとも40年以上前からここにある(いつからあるのか、正確なところは寡聞にして知らない)。

都橋から恩田川左岸側の堤防道を下流側に辿っていこう。この辺り、恩田川は町域の境だ。恩田川左岸側(北側)は青砥町、右岸側(南側)は中山二丁目だ。この辺りの河岸の景色もずいぶんと変わったように思える。
恩田川河畔(中山〜青砥) 都橋から恩田川左岸を200mほど辿ったところ、河岸に「よろづ絞(しぼり)」という会社が建っている。「よろづ絞」は金属の“絞り加工”を専門に行う会社で、正式には「株式会社よろづ絞製作所」という。“絞り加工”とは金属の板を成形して円筒形や円錐形などさまざまな形状の底付容器を製造する加工法のことで、「よろづ絞」はこの“絞り加工”の分野で高い技術力とノウハウを持つ会社として知られる。

この「よろづ絞」も、40年以上前からここにある。「よろづ絞」のウェブサイトを見ると、「沿革」の欄に「1994年 新社屋、工場完成。」とあるから、今の建物は建て替えられたもののようだ。昔とは違った印象なのはそのためだろう。
恩田川河畔(中山〜青砥) 「よろづ絞」の横を通り過ぎ、さらに恩田川左岸を下流側に歩く。堤防の斜面にはところどころで彼岸花が咲き始めている。この辺りまで来ると車の音もほとんど聞こえない。静かな河岸散歩が楽しめる。

「よろづ絞」横から300mほど行ったところに、河原近くまで降りていけるように階段が設けられていた。河原の一部が親水空間として整備されているようだ。階段を降りてみる。ほんの少し視点の高さが変わっただけだが、堤防上から見る恩田川とはまったく違った表情だ。そのまま鶴見川合流点近くまで河原横を歩いて行けるようだが、夏草に覆われて歩くのが憚られる。階段を上って堤防へ上がろう。
恩田川河畔(中山〜青砥) 階段の場所から200mほどで鶴見川との合流点だ。堤防道の脇に恩田川と鶴見川(谷本川)が合流して鶴見川となる旨を記した案内標識がある。

合流点にも階段から降りていけるようだ。ここも降りてみる。右手後方から恩田川が左手後方から谷本川(鶴見川本川)が流れてきて合流し、さらに下流に向かって流れていく。目の前で鶴見川を跨ぐのは中原街道(神奈川県道45号丸子中山茅ヶ崎線)の通る落合橋。落合橋の手前、左岸側に設けられた水門は「都築水再生センター放流樋管」だ。
恩田川河畔(中山〜青砥) 鶴見川合流点から恩田川右岸側へと移るにはいったん鶴見川右岸を上流側へ辿って千代橋を渡り、鶴見川左岸を下流側に向かい、落合橋を渡らなくてはならない。少し大回りになるが、それも悪くない。

工場の建ち並ぶ鶴見川右岸を上流側へ辿る。合流点から300mほど行ったところ、河岸に釣り堀がある。「やま喜フィッシングセンター」という。「鯉、ヘラ鮒、金魚のつり堀」だそうである。昔と同じ経営主体なのかどうかはわからないが、これも40年以上前からある。木々の隙間から見える釣り堀の風景をしばらく眺めていた。
恩田川河畔(中山〜青砥) 「やま喜フィッシングセンター」横から100mほどで千代橋だ。千代橋は1969年(昭和44年)の竣工、もう充分に歴史を刻んでいる。歩道の無い橋で、その代わりなのか、千代橋の横(下流側)に千代人道橋という人道橋が渡されている。千代人道橋は1984年(昭和59年)竣工の橋だ。

千代人道橋を渡って鶴見川の左岸側へ移る。鶴見川の左岸側は都筑区川和町だ。鶴見川は緑区と都筑区との区境になっている。この辺りはちょうど都筑区の西南端に当たる。
恩田川河畔(中山〜青砥) 千代人道橋から鶴見川左岸を下流側へと辿っていく。鶴見川左岸には一般道が沿っているが、堤防上を利用した歩道が設けられており、歩きやすい。堤防から川面までの斜面にはびっしりと夏草が茂っている。

200m近く行けば川和町の町域を出て、その先は佐江戸町だ。佐江戸町の鶴見川河岸、ちょうど恩田川との合流点の脇に、都筑区水再生センターが置かれている。水再生センターはかなり広い敷地を占めており、500mほどの区間、水再生センターの脇を歩くことになる。
恩田川河畔(中山〜青砥) 恩田川の合流点を見ながら都築水再生センター放流樋管の横を通り過ぎれば、まもなく落合橋だ。落合橋の袂、北東側は都筑区水再生センターだが、その水処理槽の上部を活用して公園が設けられている。「佐江戸おちあい公園」という。水処理場の建造物の屋上を公園として活用する例は他にもあって、港北区大倉山の太尾公園や八王子市小宮町の八石下広場なども同様の手法で設けられた公園だ。

佐江戸おちあい公園に立ち寄っていこう。公園は当然のことながら平坦な広場で、遊具やベンチなどを設置した構成だ。樹木なども植栽されており、建造物の屋上部分だということを忘れてしまうような景観と言っていい。公園の北端部まで行くと、水処理施設の一部を見下ろすことができる。通常は見ることのない景観で、なかなか興味深い。
恩田川河畔(中山〜青砥) 佐江戸おちあい公園を後にして、落合橋を渡ろう。落合橋は鶴見川を跨いで中原街道(神奈川県道45号丸子中山茅ヶ崎線)を通している。現在の落合橋は2001年(平成13年)の竣工という。

落合橋を渡って鶴見川左岸の堤防道を上流側へと辿っていこう。落合橋から上流側、恩田川の右岸は中山二丁目になる。対岸を見れば「都築水再生センター放流樋管」の様子がよく見える。水再生センターで処理された水がここで鶴見川に放出されているわけだ。
恩田川河畔(中山〜青砥) 落合橋の上流側、鶴見川と恩田川の合流点の右岸には日東化成工業株式会社の敷地が広がっている。工場の様子が河岸の道からも見える。配管の巡らされた工場の設備の景観に、ある種の美しさを感じてしまう。“工場萌え”などという言葉があるが、そうした気持ちもわからなくはない。

日東化成工業敷地横、堤防道の脇に「バクの案内板」が設けられている。「バクの案内板」とは「鶴見川流域案内板」のことで、鶴見川の流域が動物のバクを思わせる形だというので「バクの案内板」という愛称で呼ばれている。ここの「バクの案内板」には「谷本川(鶴見川)合流点から0km」と記されている。まさに合流点に設けられた案内板だ。
恩田川河畔(中山〜青砥) 恩田川右岸の道を上流側へと辿っていこう。恩田川は緩やかに曲がりなら流れている。その曲がりに沿って堤防の道を緩やかな曲線を描く。道脇にキバナコスモスが咲いている。九月に入っても真夏の暑さが続いているが、やはり季節は秋に向かっている。

少し進んだところに水門が設けられている。水門のある場所から西南の方向へ緑道らしき舗道が延びている。その先は中山三丁目に設けられた中山北緑道のはずだ。水門はおそらく、中山北緑道の下を暗渠になって流れる水路の排水樋管ではないかと思われる。いずれ機会を設けて、この水門から暗渠となった水路の上流側へと辿ってみたいものだ。

水門を過ぎれば京セラ株式会社横浜中山事業所の敷地の横を経て、都橋だ。今回の恩田川散策はこの辺りで終わりにして、そろそろ中山駅から帰路を辿ることにしたい。
恩田川河畔(中山〜青砥)
中山駅周辺から恩田川の河岸にかけてはこれまで幾度も歩いたことがあるが、その時々の興味や知識によって散策中に興味を覚えるものも変わる。昔は素通りしていたものに、改めて気付いたりもする。それも散策の醍醐味と言っていい。今回も久しぶりの風景の中に新たな発見のあった散策だった。
恩田川河畔(中山〜青砥)
恩田川河畔(中山〜青砥)
恩田川河畔(中山〜青砥)
恩田川河畔(中山〜青砥)
恩田川河畔(中山〜青砥)