佳景探訪
袋田の滝
茨城県大子町の「袋田の滝」は日本三名瀑のひとつと謳われる。岩肌を四段に落ちる滝の姿は迫力に満ちて美しく、茨城の名所のひとつに数えられる。残暑の続く九月半ば、袋田の滝を訪ねた。



袋田の滝

袋田の滝

袋田の滝

袋田の滝

袋田の滝
大子町は茨城県の北西端に位置する。西は栃木県に接し、北東側は福島県だ。茨城県の最奥部と言っていい。その大子町の中央部、やや東寄りに位置して「袋田の滝」がある。「袋田の滝」は久慈川の支流である滝川に架かる滝だ。栃木県日光の「華厳の滝」、和歌山県那智勝浦の「那智の滝」と共に「日本三名瀑」に数えられる名瀑である。

「袋田の滝」は高さ120m、幅73m、川床の岩肌を四段に流れて瀑布を形作る。そのことから「袋田の滝」は「四度の滝」の別名もあるが、一説には、昔、西行法師がこの地を訪れたとき、「四季に一度ずつ訪れてみなければ真の風趣は味わえない」と評したことが由来とも言う。西行法師の言葉通り、「袋田の滝」は四季折々に美しい姿を見せる。新緑の中に流れ落ちる春、暑さの中に涼を運ぶ夏、紅葉に彩られた秋、寒さの中に氷瀑の姿を見せる冬、それぞれに風趣に富んで、そのすべてを見たいと思わせてくれる。

「華厳の滝」や「那智の滝」は、遙かな高みから断崖を一気に流れ落ちる水の流れが美しい滝と言っていいが、「袋田の滝」はそれらとは少し様相が違う。「袋田の滝」は、誤解を恐れずに言えば、川床に生じた“巨大な段差”とでも言うべき姿だ。ただ、その“段差”の規模が想像を遙かに超える巨大さなのだ。設置された「観瀑台」から眼前に見る「袋田の滝」は迫力に満ちて力強く、圧倒されるような景観である。


袋田の滝

袋田の滝
「袋田の滝」は、久慈川の河畔から滝川に沿って2kmほどの距離を東へ入り込んだところに位置している。駐車場に車を駐め、徒歩でさらに川上へと進んでゆく。辺りは土産物店などが並んでいかにも観光名所的な風情を漂わせている。その風情が楽しい。

道を奥へと進んでゆくと「袋田観瀑施設管理事務所」が出迎えてくれる。「袋田の滝」を観るための「観瀑台」へは、ここで施設利用料を支払ってトンネルを抜けていかなくてはならない。トンネルは250mほどの長さがあり、その先に「第一観瀑台」が設けられている。途中、210mほどの地点には吊橋へと降りてゆくための出口も設けられている。トンネルの最奥にはエレベーターが設置されており、44m上に設けられた「第二観瀑台」へ登ることができる。
袋田の滝

袋田の滝

袋田の滝
まずはトンネルを抜けて「第一観瀑台」を目指そう。トンネルと歩き通し、「第一観瀑台」へと出ると、間近に瀑布が現れる。トンネルから抜け出るといきなり目の前に滝、という視界の変化は衝撃的と言ってよく、ほとんどの人が感嘆の声を上げる。

観瀑台の最前部に立てば、手を伸ばせば届きそうな距離に滝がある。幅73mの瀑布が轟々たる水音を立てて眼前を流れ落ちる。圧倒されるような迫力である。見上げれば大瀑布の向こうに上の段の滝が見え、下には絶えず流れ落ちる水の流れが岩盤を抉って滝壺を形作っている。素晴らしい景観である。当然のことだが、流れ落ちる水の流れは常に姿を変えて片時も同じ表情を保たない。見ていると時の経つのを忘れ、飽きることがない。

観瀑台の最前部に立って間近に滝の姿を楽しむのももちろんお勧めだが、少し下がって、観瀑台施設の柱や床、天井部に中に見える滝の姿を楽しむのも良いものだ。施設の柱や手摺りなどが額縁のように滝を切り取り、一枚の絵画のようにも見える。滝を観る人たちの姿がシルエットになってそこに収まるのも、興趣のあるものだ。
袋田の滝

袋田の滝

袋田の滝
「第一観瀑台」の横手にエレベーターが設置されており、エレベーターによって44m高みに設けられた「第二観瀑台」に上がることができる。「第二観瀑台」はさらに三つのデッキから成っており、エレベーターを降りると最下段の「第一観瀑デッキ」、そこから階段を上がって「第二観瀑デッキ」、さらに階段を上がると「第三観瀑デッキ」がある。「第二観瀑デッキ」は「第一観瀑デッキ」より4m高く、「第三観瀑デッキ」は「第二」よりさらに3m高い。

「第二観瀑台」の三つのデッキからは「袋田の滝」の全貌を上方から俯瞰する。「第一観瀑デッキ」からは滝の上段部分をほぼ正面に、「第二デッキ」、「第三デッキ」へと上がれば、さらに高みから「袋田の滝」を見下ろすことができる。「第一観瀑台」からは見えない上段部分の滝もよく見える。

緑濃い山々の間に深い谷を抉って、岩盤に四つの滝を形作って落ちてゆく水の流れはたいへんに美しい。水の流れが描く白いラインは荒々しくもあり繊細でもある。これもまた、時を忘れて観ていたい風景だ。
袋田の滝

袋田の滝
「第一観瀑台」と「第二観瀑台」からの展望を堪能したら、トンネルを少し戻って吊橋へと歩を進めよう。滝の下流側に架かる吊橋の上からは、「袋田の滝」を横から見る形だ。正面から見る滝とはまた表情が違って別の興趣がある。滝の左側、相対する岸壁に設けられた「第一観瀑台」の様子もよく見える。

吊橋を渡った先の山の斜面には「袋田自然探求路」と名付けられた小径が辿っている。小径を下流側へと進んでゆくと滝は遠ざかるが、山々の木々に包まれるようにして遠望する滝の姿も風趣に富んでいる。吊橋と滝とがうまく視界に収まるところもあって、これもなかなか素敵な景観だ。


袋田の滝

袋田の滝

袋田の滝

袋田の滝
「袋田の滝」を観る際は、まず「第一観瀑台」からの景観を堪能し、次に「第二観瀑台」へ上がって滝の全貌を観て、帰り道の途中で吊橋に立ち寄る、という順番を強くお勧めする。まずは「第一観瀑台」へと進んで、そこから眼前間近に見える大迫力の「袋田の滝」を最初に観ておきたい。トンネルと抜け出た先でいきなり間近に見える滝の迫力は衝撃的と言っていい。「第一観瀑台」へ向かう途中で吊橋に立ち寄ってしまうと、滝と「第一観瀑台」との位置関係を把握できて、「第一観瀑台」からの展望が予期できてしまい、その感動が半減してしまうのだ。

「第一観瀑台」は「袋田の滝」の迫力を間近に感じることができるのが魅力で、「第二観瀑台」は山々の間に流れ落ちる「袋田の滝」の風景の美しさを楽しめるのが魅力と言っていいだろう。吊橋からの眺めはさらに滝周辺の風景を楽しめるのが魅力だ。「袋田の滝」は滝そのものも美しいが、周囲の景観に溶け込む風景としての美しさ、特に「第二観瀑台」から見る風景の美しさが素晴らしい。

緑濃い山々に囲まれた「袋田の滝」は、西行が評したように四季折々に訪ねてみなければ本当の魅力を理解することはできないかもしれない。最初に訪れるなら、春の新緑の頃、あるいは夏の深緑、あるいは秋の紅葉に染まる頃だろうか。一度訪れると、別の季節の表情も観てみたいと、強く思わせてくれる。「日本三名瀑」の形容に恥じない、見事な滝である。
参考情報
袋田の滝そのものは入場料の必要な施設内にあるわけではないが、観瀑施設の利用に利用料が必要だ。料金など、詳細は大子町公式サイト(「関連する他のウェブサイト」欄のリンク先)を参照されたい。

交通

袋田の滝へはJR水郡線袋田駅が最寄りだが、3km以上の距離があり、徒歩ではつらい。袋田駅と袋田の滝を結ぶバス路線が1日4往復ほど通っているので、利用するといい。「滝本」バス停からトンネル入口まで数百メートルの距離だ。

車で訪れる場合は国道118号線の「袋田の滝入口」交差点から国道461号線へと東へ折れて1km近く進み、「袋田の滝」を指し示す案内標識に従って再び東へ折れて進むと袋田の滝だ。袋田の滝には町営の無料駐車場が二ヶ所用意されており、駐車台数にも余裕があるが、トンネル入口まで1km以上の距離がある。あまり歩きたくないという人は土産物店や飲食店などが運営する民間の駐車場が近くにあるので、それを利用するのもいいだろう。

遠方から訪れる場合は東北自動車道の宇都宮ICや西那須野塩原ICから、あるいは常磐自動車道の那珂ICや高萩ICから、まず大子町中心部を目指すとわかりやすい。いずれにしても高速道路を降りてからの距離が長い。余裕を持ってでかけよう。

飲食

袋田の滝の下流側、トンネル入口周辺に土産物店や飲食店などが集まっている。好みの店を見つければいい。

大子町中心部へと移動すれば、常陸大子駅前周辺や国道118号線沿いにも飲食店が点在している。

周辺

袋田の滝の上流には生瀬の滝という滝がある。月居山ハイキングコースを辿って行けば見ることができるそうだ。また袋田の滝から北へ10kmほど行ったところには月待の滝という滝もある。滝巡りを楽しむのも一興だろう。

袋田の滝から国道461号線を辿って西へ10kmほどで旧上岡小学校がある。NHK朝の連続テレビ小説「花子とアン」や「おひさま」などの他、さまざまなドラマやCMのロケに使われた建物だ。土曜、日曜、祝日に見学が可能だそうだ。
袋田の滝

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