佳景探訪
池上梅園
東京都大田区の池上梅園は都内の梅の名所のひとつに数えられている。戦前には日本画家伊藤深水の自宅兼アトリエだったところだという。梅が満開となった二月中旬、池上梅園を訪ねた。



池上梅園

池上梅園
池上梅園は東京都大田区の中央部辺り、池上本門寺の北西側に隣接する形で位置している。すぐ西側を第二京浜(国道1号)が走る立地だが、梅園の中は木々が茂って閑静な空気感に満たされ、市街地の中であることを忘れさせてくれる。梅園は西向きの斜面とその下の庭園から成り、その園内の随所で梅が咲き誇る。約30種、370本ほどの梅があるという。

池上梅園は、戦前には日本画家伊藤深水の自宅兼アトリエのあったところらしいが、残念ながら戦災で焼失、戦後になって築地の料亭経営者小倉氏の所有となり、南半分を拡張して別邸として使っていたという。小倉氏が亡くなった後、庭園として残すことを条件にご遺族から東京都に譲渡され、1978年(昭和53年)に大田区に移管、植林や拡張を経て現在の池上梅園へ至っている。


池上梅園

池上梅園
北側に設けられた入口から梅園に入ると斜面に咲き誇る梅の花が出迎えてくれる。斜面を覆い尽くすように植えられた梅が見せてくれる光景は圧巻だ。斜面の下にはまっすぐに舗道が延び、舗道脇にはベンチが並んでいる。ベンチに腰を下ろし、ひととき斜面の梅を眺めて過ごすのもいい。舗道の東側も梅の林で、その中を縫うように散策路が辿る。紅白の梅の花に包まれての散策が楽しい。

まっすぐに伸びる舗道の南端辺りから斜面へと登る小径があり、これを辿ると斜面上の「見晴台」へと至る。「見晴台」はちょっとした広場になっており、四阿が建っている。四阿で一休みする人の姿も多い。「見晴台」の端部は展望所のように整備され、そこからは梅園と東方の町並みが見える。一休みを兼ねて高所からの展望を楽しむのも一興だ。


池上梅園

池上梅園
梅園の南側の区画へと歩を進めると雰囲気が変わる。北側の区画は斜面に咲き誇る梅を中心に、数多くの梅を楽しめる“梅林”だが、南側の区画は基本的に“庭園”で、その中を巡って散策路が辿る。松の木に“雪吊り”が施されているのもなかなか良い風情だが、この“雪吊り”は本来の目的より修景の意味が大きいのだろう。一角には水琴窟も設けてあり、来園者の注目を集めている。

その庭園の中、随所で梅が咲いている。北側の区画に比べれば数は多くないが、閑寂な佇まいの庭園の中で良い風情を感じさせてくれる。梅はさまざまな品種のものがあり、それぞれの梅を丹念に観賞してゆくのが楽しい。


池上梅園和室
庭園の中には池を臨む和室や「清月庵」と「聴雨庵」という二棟の茶室が建っている。和室は梅園が整備されたときに造られたもののようだが、茶室はそれぞれに由来があり、保存の目的も兼ねてここに移築されたもののようだ。それらの和室や茶室は大田区の公共施設利用システムに事前登録して利用予約をすれば、所定の利用料金を支払って茶会や歌会などに使用することができるという。
「清月庵」


池上梅園「清月庵」
「清月庵」は伊藤深水のアトリエを設計した川尻善治氏が自宅に建てた離れだったもので、その後、大田区在住の茶道・華道家中島恭名氏が保存に尽力、氏が買い取って大田区に寄贈されたものという。
「聴雨庵」


池上梅園「聴雨庵」
「聴雨庵」は1957年(昭和32年)に発足した岸内閣で外務大臣を務めた政治家、藤山愛一郎所有の茶室だったもので、1983年(昭和58年)に藤友倶楽部から大田区へ寄贈されたものだ。戦時中の1944年(昭和19年)、この聴雨庵で、岡田啓介、米内光正、末次信正らを集めて東条内閣打倒の密議が行われたという。


池上梅園
池上梅園は1ヘクタールほどの面積で、特筆するほどの広さがあるわけではない。しかし、その中に370本ほどの梅というのは梅園としては多い方ではないだろうか。北側区画の斜面を埋め尽くす梅も見事なものだし、南側区画の庭園も良い風情があって日常を忘れて散策を楽しむことができる。梅の名所と言っていい。

園内には50本の牡丹や800株のツツジも植えられているという。それらが花期を迎える季節も美しいに違いない。
参考情報
池上梅園は入場料が必要だ。開園時間や休園日、和室や茶室の利用方法等については大田区の施設案内(「関連するウェブサイト」欄のリンク先)を参照されたい。

交通

池上梅園には都営地下鉄浅草線西馬込駅や東急池上線池上駅が近い。都営地下鉄浅草線西馬込駅からなら第二京浜(国道1号線)を南下、徒歩で10分ほど、東急池上線池上駅からなら駅前の「池上駅」交差点から北へ辿り、徒歩で20分ほどだ。第二京浜(国道1号線)の「本門寺入口」から東へ入り込んだところに梅園があるので、この交差点を目指すとわかりやすい。交差点横に「池上梅園」を示す案内標識がある。

JR五反田駅からJR川崎駅行き、JR川崎駅からJR五反田駅行きなどのバス路線を利用することもできる。「本門寺裏」バス停で降りれば梅園まで至近だ。

車で来訪する際も第二京浜(国道1号線)の「本門寺入口」から東へ入り、すぐに南へ折れると梅園前に駐車場が設けてある。駐車場は有料(2009年2月に訪れたときには100円/30分だった)で、20〜30台分ほどのスペースがあるように見えた。

飲食

梅園内には飲食店や売店などはない。園内にはテーブル付きベンチが設置されており、そこに座ってお弁当を食べる人の姿もあった。梅を眺めながらのお弁当も楽しいかもしれない。梅園近くには飲食店は見あたらないようだが、第二京浜(国道1号線)を少し南へ行けば道沿いにファーストフード店やファミリーレストランなど、飲食店が点在している。西馬込駅や池上駅近くにもさまざまな飲食店がある。

周辺

池上梅園は池上本門寺のすぐ西側に位置している。池上本門寺は1282年(弘安5年)に日蓮聖人が入滅(亡くなること)された霊場として信仰を集めている。本門寺へ参拝していくのも良いかもしれない。
池上梅園

池上梅園

関連する他のウェブサイト


梅散歩
東京23区散歩