佳景探訪
昇仙峡
山梨県甲府市の昇仙峡は国の特別名勝にも指定された有名な景勝地だ。仙娥滝や覚円峰などの景勝が点在し、その渓谷美は日本一とも謳われる。渓谷が新緑に覆われた五月の初め、昇仙峡を訪ねた。



昇仙峡

昇仙峡

昇仙峡
山梨県甲府市、中心市街の北部の山間に昇仙峡と呼ばれる渓谷がある。美しい渓谷美で知られ、「御嶽昇仙峡(みたけしょうせんきょう)」として国の特別名勝にも指定された有名な景勝地であり、その清流は環境省が選定した「平成の名水百選」のひとつでもある。

上流部は仙娥滝(せんがたき)の周辺から下流部は長潭橋(ながとろばし)まで約4.5km、北から南へ流れる荒川が荒々しくも美しい渓谷美を見せる。川に沿って遊歩道が辿り、奇岩・奇石の見せる渓谷の景観を堪能しつつの散策が楽しめる。仙娥滝や覚円峰(かくえんぽう)、石門(いしもん)といった見所も点在し、渓谷を包む樹林は初夏には新緑に輝き、晩秋には紅葉に染まって見事な景観を見せる。素晴らしい景勝地である。


昇仙峡

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昇仙峡
仙娥滝の上流側は道沿いに土産物店や飲食店などが並び、一角には昇仙峡ロープウェイの乗り場もある。いかにも“観光地”的な佇まいが楽しい。川沿いの道を下流側に歩いて行くと、土産物店の並ぶ中に「仙娥滝 入口」の案内がある。案内看板をくぐって土産物店が両脇に並ぶ中を進んでゆくと、道は渓谷沿いの小径に姿を変えて下ってゆく。

下っていった先で水音を轟かせているのが仙娥滝である。地殻変動による断層に生じた滝で、花崗岩の岩肌を削りながら30mの落差を流れ落ちる。それほど“巨大な”滝という印象ではないが、花崗岩の崖に細い隙間を穿って流れ落ちる様子はなかなかの迫力である。滝の周囲には木々が茂り、風趣に満ちた景観を見せる。秋には紅葉と滝とのコラボが美しいが、初夏の新緑も素晴らしい。「仙娥」の名は中国の神話に登場する人物「嫦娥(じょうが、こうが)」に由来するものだそうである。仙娥滝は「日本の滝百選」のひとつ、評判に恥じない名瀑である。

仙娥滝からさらに渓流沿いの小径を下流側へと辿っていこう。小径は崖面を抉って通されたような場所もあってなかなか野趣に富んでいる。見上げれば空に向かって岩塊がそそり立っている。有名な覚円峰を裏側(北側)から見た姿である。

渓流の右岸側を辿っていた小径はすぐに小橋を渡って左岸側へと移る。小橋の中は「昇仙橋」、橋の上からは美しい渓流を見下ろし、橋の姿そのものにも興趣がある。

昇仙橋から100mほど下ったところに「石門」がある。巨岩が形作ったアーチをくぐって道が通っている。その景観はまさに「石門」である。「石門」は複数の岩によって構成されているのだが、特筆すべきは頭上に被さるように張り出した岩が渓流側の岩と繋がっていないことである。離れたところから見るとわからないが、近くに寄って覗き込むように見てみると、頭上の岩と下側の岩との間にわずかな隙間があることがわかる。少しばかりスリリングさも感じる景観である。

「石門」を過ぎてさらに下流側に辿ってゆく。荒川の右岸側、見上げると巨大な岩塊がそそり立っている。これが覚円峰である。ほぼ真下から見上げているために、観光パンフレットなどで見慣れた姿とは少し違った印象だ。

岩肌と岩肌に挟まれて渓流が流れてゆく。その岸辺に小径が刻まれて遊歩道となっている。木々は新緑に輝き、初夏の青空が頭上に広がる。河床には巨岩、巨石がごろごろと転がり、その隙間を縫って川が流れてゆく。荒々しく、美しい渓流の景観だ。

しばらく行くと、遊歩道脇に長田円右衛門という人物を顕彰する石碑が設けられている。長田円右衛門は一介の農民だったが、1843年(天保14年)、苦難の末に昇仙峡に道を開いた。これによって人々の暮らしは便利になり、現在の観光地の礎が築かれた。石碑はその偉業を讃えるものだ。

長田円右衛門の碑を過ぎて川の蛇行を回り込んだところで、振り返るように見上げると覚円峰の姿がよく見える。観光パンフレットなどで見慣れた、昇仙峡の代名詞的な景観となった象徴的な姿である。昇仙峡に来たなら、この景観はぜひとも見ておかなくていけない。

覚円峰は花崗岩が水の浸食と風化によってこのような形状となったもので、約180mの高さにそそり立つ岸壁を成している。頂上部は畳が数畳敷ける広さだそうで、かつて澤庵禅師の弟子であった僧侶覚円がそこで座禅を組んだことが名の由来だそうである。

その辺りに「昇仙峡園地(夢の松島)」という小公園のようなエリアが設けられており、荒川の河原に降りて行ける。河原には巨岩、巨石が折り重なるように転がり、その上に覚円峰の姿が見える。見事な景観である。

「昇仙峡園地(夢の松島)」を離れてさらに下流側に辿ってゆけば、やがて覚円峰の姿も見えなくなり、1km足らずで「グリーンライン昇仙峡」バス停のある県営駐車場に着く。仙娥滝からここまで約1.5km、昇仙峡の魅力を堪能できる1.5kmである。


昇仙峡

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昇仙峡を隅々までくまなく堪能しようと思うなら、仙娥滝から長潭橋までゆっくりと時間をかけて歩いてみるべきだが、何しろ4.5kmの距離があり、気軽に楽しめるとは言い難い。昇仙峡の魅力を満喫しつつ、気軽に楽しむなら、仙娥滝から「グリーンライン昇仙峡」バス停辺りまでの区間を歩いてみるのがお勧めだ。この区間なら距離は約1.5kmで、仙娥滝から覚円峰、石門などの見所も楽しめる。

昇仙峡観光の際には仙娥滝上流部の市営滝上駐車場や「グリーンライン昇仙峡」バス停のある県営駐車場に車を駐めて散策を楽しむのがお勧めだが、往復歩けば4km近くの距離になり、特に下流側から上流側へ向かうとずっと坂を上り続けることになる。仙娥滝付近と「グリーンライン昇仙峡」バス停付近とでは100mほどの標高差があり、下流側から上流側へと歩くのはなかなかつらい。そこでお勧めなのが昇仙峡渓谷循環乗合バスを利用することだ。県営駐車場に車を置き、乗合バスで仙娥滝の滝上まで行って、そこから歩いて下ってくればいい。これなら気軽に楽しめる。

昇仙峡はその評判に恥じない、見事な渓流美を楽しむことのできる景勝地である。秋の紅葉の名所として名高いが、初夏の新緑も素晴らしい。涼やかな渓流の景観は夏に涼を求めて訪れるにもいい。冬に雪化粧した覚円峰の姿も風趣に富んでいる。四季折々にその景観を見てみたくなる。素晴らしい。
参考情報
交通

公共の交通機関で昇仙峡に訪れる場合は、JR中央本線甲府駅から「昇仙峡」行きのバスを利用すればいい。甲府駅から「グリーンライン昇仙峡」バス停まで約40分、「昇仙峡滝上」バス停までは約50分だ。

昇仙峡周辺には公営無料駐車場がいくつか設けられている。昇仙峡ロープウェイや仙娥滝に最も近いのは「昇仙峡滝上市営駐車場」だ。さらに渓谷沿いに「昇仙峡グリーンライン県営駐車場」、「昇仙峡入口市営駐車場」などが設けられている。観光したいルートに最も便利な駐車場を選べばいい。昇仙峡エリア内では昇仙峡渓谷循環乗合バスを利用すると移動が便利だ。

遠方から訪れる場合は中央自動車道の甲府昭和ICや双葉スマートICを利用するのが便利だ。どちらからも「昇仙峡グリーンライン」経由で30分強といったところだ。

今回訪れたとき(2018年5月)は連休の真っ直中だった。早朝に出発したお陰で昇仙峡の県営駐車場には8時半頃に着き、難なく駐車することができたが、11時半頃に昇仙峡を後にする頃には駐車待ちの長蛇の列ができていた。行楽シーズンの休日に訪れるときには余裕を持って早め早めの行動をお勧めする。

飲食

昇仙峡ロープウェイ「仙娥滝」駅付近から仙娥滝の滝上周辺にかけて数多くの飲食店がある。渓谷沿いにも観光客向けの飲食店が点在している。好みの店を見つけて食事を楽しむといい。

周辺

時間に余裕があれば昇仙峡ロープウェイも楽しんでおきたい。山頂からは周囲に絶景が広がる。パワースポットとしても知られている。

昇仙峡から10km強で甲府市の中心部に着く。舞鶴城公園や武田神社などを訪ねてみるのもお勧めだ。
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