横浜線沿線散歩公園探訪
町田市相原町
大戸緑地
Visited in April 2023
大戸緑地
町田市相原町の西端部近く、大戸緑地という都立公園が設けられている。大戸緑地はこの地域に古くから残る山林(里山)の一部を活用して都立公園として整備したもので、約28.4haの面積で2011年(平成23年)に開園した。園内のほぼすべては鬱蒼と木々の茂る山林で、その中を縫って園路が延びる。豊かな自然に触れることのできる公園だ。
大戸緑地 「大戸(おおと)」は、町田市相原町西部地域の古くからの地名だ。昔、大木戸番所が設けられていたことから「大木戸」が「大戸」に転じたものらしい。大戸緑地は、その大戸地区の山林の一部を活用して都立公園として整備したものだ。おそらく民有地の山林を取得して設けられたものだろう。開園面積は約28.4haだが、今後も拡張整備が継続される予定で、計画面積は約124haに及ぶ。広大な公園だ。

2023年現在、公園は東側の「牛田地区」と西側の「段木入(だんぎり)地区」とに別れ、さらに「段木入地区」は北側と南側とに別れている。それぞれの区域には「大戸のおか」や「雨乞い場の碑」、「段木入の広場」、「段木入のおか」といったスポットが点在し、それらを繋いで小径が延びているという構成だ。園内のほぼすべては鬱蒼と木々の茂る山林で、その中を延びる道も未舗装の“山道”だ。当然、園内の高低差も大きい。一般的な都市公園とはまったく性格が異なり、野趣に溢れ、日常を離れたひとときを過ごすことができる。
大戸緑地 大戸緑地利用の拠点となるのが「牛田地区」に設けられた「草地広場」の周辺だ。来園者用駐車場やトイレが設けられ、名の通り草地の広場が置かれている。広場はそれほど規模の大きなものではないが、山々に囲まれた谷戸にひっそりと設けられた印象だ。広場の脇の方にはパーゴラとベンチが設置されており、休憩には便利だ。

広場の横手には小さいながらも池があり、夏にはハスの花が見られるようだ。池の周辺にはタニウツギの木が多く植えられている。タニウツギは5月から7月にかけて花を咲かせる。5月の中旬、タニウツギが鮮やかな花を咲かせていた。

大戸緑地 「草地広場」の西側に、尾根の間に入り込む小谷戸の地形に段々畑のような形状で広場が並んだところがある。「雪(ゆく)の里」と名付けられている。この一角にユクノキ(雪の木)があることからの名のようだ。

「雪の里」の南側の小高い丘は「大戸のおか」だ。「草地広場」横手や「雪の里」の奥から登っていくことができる。頂上部分は標高228mだそうだ。「草地広場」辺りの標高が190mほどだから30m近くの高低差がある。頂上部分は少し開けた平坦地があり、ベンチが置かれている。そこから木々の間に少しだけ眺望を楽しむこともできる。春には八重桜やミツバツツジが美しいそうである。
大戸緑地 「大戸のおか」から、あるいは「草地広場」の北側から、山林を縫って辿る小径を300mほど西へ進んだところに「雨乞い場の碑」がある。日照りによる被害が懸念されるときに雨乞いが行われた場所だといい、そのことを示す碑が建てられている。

刻まれた碑文によれば、由来は詳しくわかっていないものの、遠い昔から集落の人々総出で降雨の祈りを捧げるのが習慣となっていたそうで、1947年(昭和22年)頃に行われた雨乞いが最後だったという。大戸の八雲神社の祭礼前日の7月31日、集落の人たちがここに集まり、火を焚き、祝詞をあげ、大戸の観音様から借りてきた鐘を叩き、火の周りを回りながら雨乞いの歌を歌って降雨を祈ったそうである。現代に暮らす我々にはなかなか実感できない、自然というものに対する畏れと願いの儀式である。

大戸緑地 「雨乞い場の碑」の場所は標高259m、「大戸のおか」からはさらに30mほど高い。南側は木々がなく視界が開け、爽快な眺望を楽しむことができる。

ちょうど正面辺りには武蔵岡団地が見え、そのやや左手には橋本駅周辺の高層ビル群が見えている。武蔵岡団地のさらに向こうに目を凝らせば町田駅周辺、さらに横浜ランドマークタワーのシルエットも見える。その向こうに見えるのは房総半島の山々だ。のんびりと眺めていると時の経つのを忘れる。
大戸緑地 「雨乞い場の碑」から民有地の中を抜ける尾根道を辿って西へ向かえば「段木入地区」だ。尾根道は「段木入地区」の北側の外縁部を辿ってアップダウンを繰り返しながら延びている。「雨乞い場の碑」から数百メートルの距離で権現平へ至る。

権現平は標高267m、「雨乞い場の碑」よりさらに10mほど高い。権現平に近い辺り、尾根の高みとなって北東の方角へ視界が開けた場所がある。山々の向こうに遠く見えるのは八王子市の市街地だろう。右手、少し近くに聳える塔のような建造物は館の清掃工場か。なかなか爽快な眺望だ。

大戸緑地 「雨乞い場の碑」から権現平へと繋ぐ尾根道の途中、南側に降りてゆく小径がある。案内標識は「段木入の広場」を指し示している。小径を辿っていけば「段木入地区」のほぼ中央に位置する「段木入の広場」へと降りていけるようだ。

道は急峻な斜面の中程に刻まれた細道だ。最低限の整備は施されているが、うっかり足を滑らしたりすると大変なことになる。注意深くゆっくりと足下を確かめながら歩かなくてはならない。

大戸緑地 やがて小径は沢沿いの低地に降りていく。そこから東側、沢の下流側へと進めば「段木入の広場」だ。その反対方向、山の高みへ向けて「段木入のおか」と、案内標識が指し示している。「段木入のおか」は標高292m、大戸緑地で最も高所に当たるところだ。「段木入の広場」辺りの標高が200mほどだから標高差は100m近い。そこを300mを少し超えるほどの距離で登っていく。息が切れるほどの急坂だ。

「段木入のおか」からは東への展望が開けている。左手方向には八王子の中心市街、右寄りには八王子市南大沢周辺の町並みが見える。正面に見えるのは多摩センターの辺り、その向こうには新宿の高層ビル群、さらに目を凝らせば都庁と東京スカイツリーが重なる景観も見える。素晴らしい眺望だ。急坂を登ってきたご褒美というところか。
大戸緑地 「段木入の広場」は尾根と尾根に挟まれた谷戸の地形で、「ビオトープ」として湿地が残されている。「ビオトープ」は昔は谷戸田として使われていたものか。畦によって区切られた湿地を跨いで木道が設けられている。「ビオトープ」の東側は草はらの広場で、さらに東へ向かえば沢沿いに道が延びてバス停付近へと至っている。

「段木入の広場」はひっそりとして静かな谷戸だ。大戸緑地の中では「段木入のおか」の眺望や野趣溢れる小径などとは好対照な場所だと言っていい。のんびりと湿地の植物などを眺めながら山道を歩いた疲れを癒やすのもいいものだ。運が良ければカワセミの姿にも出会うことができるだろう。
大戸緑地 「段木入の広場」の東側から南側の丘へ登る小径がある。登った先は「山桜のおか」だ。「山桜のおか」は標高267m、これも70m近い標高差を短い距離で登らなくてはならない。

「山桜のおか」は名の通りヤマザクラが美しいところだそうだ。頂上部分は平坦な場所にベンチが置かれている。残念ながら周囲を木々に囲まれて眺望を楽しむことはできない。

「山桜のおか」から西へ小径を辿っていけば「Nature Factory 東京町田」(旧大地沢青少年センター)の入口付近へと降りてゆくこともできる。足を延ばしてみるのも悪くない。
大戸緑地
大戸緑地はほぼすべてを山林が占め、木々の茂る中を縫うように小径が辿り、野趣溢れる山歩きが楽しめる。日常を忘れて自然を満喫できる都立公園だ。公園内は高低差も大きく、それなりに体力(脚力)も必要だ。訪れる際にはトレッキングシューズなどを履いていくことを強くお勧めする。一帯は大戸緑地の公園域と民有地が入り組んでおり、歩く際には民有地に立ち入らないよう注意が必要だ。基本的に案内標識の設けられた道筋からは外れないようにしよう。

大戸緑地には来園者用駐車場が設けられているが、駐車台数は20台分ほどと少なく、また駐車場へと至るルートがわかりにくく、道も狭い。(特に初めて)車で来園する際には注意しよう。その他、詳細は指定管理者による公式サイト(頁末「関連する外部ウェブサイト」欄のリンク先)を参照されたい。
大戸緑地
大戸緑地
大戸緑地
大戸緑地