横浜線沿線散歩公園探訪
八王子市別所
蓮生寺公園
Visited in May 2004
蓮生寺公園
八王子市別所二丁目の北部、京王線の線路に近く、蓮生寺公園という公園がある。このあたりは多摩ニュータウンの近代的な街並みの広がる地域だが、造成以前の自然をそのまま公園として残したものと思える。公園の南側には蓮生寺という寺があり、そこからこの公園の名となったのだろう。公園自体はこんもりとした雑木林の丘とその周辺部で構成されており、その中を散策路が辿り、広場などが置かれている。散策路は「ふくろうの道」、「どんぐりの道」、「ひぐらしの道」などといった名が付けられている。
門前広場
公園の東側部分、蓮生寺の傍らには「門前広場」と名付けられた広場がある。トイレも設けられており、ここが公園のメインエントランスという位置付けだろう。「門前広場」の北側の一角には湧水によるもの思われる湿地もあり、水辺の植物などの姿を見ることができる。「まむしに注意」の看板もあるから足元には注意を怠らない方がよいだろう。「門前広場」はそれほど広い場所ではないが、四阿なども置かれ、辺りにはカエルの声が満ちてのんびりとした雰囲気だ。どこからかウグイスの声も聞こえてくる。

ふくろうの道
「門前広場」からは背後の雑木林の丘へと分け入っていく小道が延びている。「ふくろうの道」という名のその小道はなかなかの坂道で、昔ながらの山道といった風情だ。「ふくろうの道」は蓮生寺の横を登ってやがて尾根を辿る散策路へと至る。その尾根道は「どんぐりの道」という名で、北の「展望広場」と南西側の「ふれあいの丘」とを繋いでいる。「どんぐりの道」は比較的広く造られており、勾配もなく、木々に囲まれて野鳥の声を聴きながらの散策が楽しい。

ふれあいの丘
「どんぐりの道」を西へと辿ると林の中から抜け出て視界が開け、「ふれあいの丘」へと至る。「ふれあいの丘」には円形の広場を囲むように造られた建物がある。詳細はわからないのだが、その様子から地域の活動の際に使用されるのだろう。建物の一角には管理室が置かれ、トイレや水飲み場も設置されている。「ふれあいの丘」からは西南の方角に視界が開けており、整然とした多摩ニュータウンの街並みを望むことができる。傍らの小径を辿って公園の外へと抜け出ると浄瑠璃緑地の北端部へ至る。

さえずり橋
「ふれあいの丘」の片隅から北へと林の中を降りて行く小道がある。「ひぐらしの道」という。木立の中、山道のような「ひぐらしの道」を足元を確かめながら降りて行くと、目の前に吊り橋が見えてくる。「さえずり橋」と名付けられた吊り橋は林の湧水を集めた沢に架けられたもので、堅牢な造りだがわずかに上下にふわりふわりと揺れるあたりは吊り橋の風情を感じさせて楽しい。下から見上げる様子もよく、傍らのミズキが枝を伸ばした様子も美しい。

「さえずり橋」の下の沢はあまり水の流れはないが、わずかな水を集めて西へと流れている。その辺りは「水辺の広場」という名が付けられている。流れがあまりないからか、沢はそれほど美しいという印象ではないのが残念だ。沢の周辺にはあちらこちらに「まむしに注意」の看板が立てられている。京王線の線路が近いためにときどき電車の音が聞こえてくるし、横の道路を通る車の音も届くが、「さえずり橋」の方へと入り込むとそれらの音もほとんど気にならなくなり、あたりは鳥の声が満ちるばかりだ。

めがね橋
「水辺の広場」の横に特徴的な意匠の橋が架かっている。「めがね橋」というその名は意匠の印象から名付けられたものだろう。その「めがね橋」を渡る道路は、公園の西側を回り込んで抜ける「蓮生寺公園通り」で、橋の袂の階段を南へ上がると公園駐車場がある。「めがね橋」をくぐって北方へ歩を進めるとすぐに京王線の線路をくぐり、松木小学校や松木川端公園の傍らを抜けて多摩ニュータウン通りへと抜け出る。

展望広場
「水辺の広場」の傍らから木道の階段が林の中へ東に向かって登っている。「たんけんの道」と名付けられている。なるほど森の中を探検するような印象がある。その木道を登り切ると「展望広場」へと至る。「展望広場」は雑木林の丘の尾根の端に設けられており、広場というよりは石造りのテラスのような様相だが、北へ向かっての眺望は良く、大栗川河畔の町並みを一望する。正面の丘の向こうには小さく多摩テックの観覧車の姿も見える。多摩ニュータウン通りを通る車の音も届いてはくるが、丘の上を抜ける風は爽快だ。腰を下ろしてひとときその景観を眺めてくつろぐのもいい。

お祭り広場
「展望広場」の東は斜面となって、その中を「たんぽぽの道」という名の散策路が辿って「お祭り広場」へと降りる。「お祭り広場」は林を背負った草はらで、「たんぽぽの道」の名が示すように春にはたんぽぽの花が多く咲いてのんびりとした風景を見せてくれる。また桜の木もあって、近所の人には手軽なお花見の場所になるのかもしれない。隅には四阿も置かれ、トイレや時計も設置されている。「お祭り広場」の名の由来がわからないが、地元のイベントの会場になったりもするのだろうか。

「お祭り広場」の横手に隣接して小公園のようなスペースがあり、わずかながら遊具も置かれている。蓮生寺公園にはまったく遊具類は置かれていないから、この小公園が近所の子どもたちのための遊び場としての役割を担っているのかもしれない。

みはらしの道
「お祭り広場」から東へと向かうと東口からいったんは公園の外へと出てしまうが、その東口から雑木林の中へと辿る小道があることに気付く。「みはらしの道」という。尾根を辿って公園の中心部へと向かう小道で、昔ながらの里山の中の小道のような風情が素敵だが、道脇には木々が茂ってその名に反して周囲への眺望はそれほどでもない。

「みはらしの道」は送電線の鉄塔の建つ敷地の傍らを抜けて丘を登ってゆき、やがて南側の「門前広場」の方から延びてきた道と合流する。そちらの小道には「つみくさの道」という名がついている。「つみくさの道」は「門前広場」から草はらの脇を通り抜けて「みはらしの道」へと合流する形で延びているのだが、このあたりも昔ながらの風情が感じられて楽しい。「つみくさの道」というその名もなかなか素敵なネーミングだという気がする。
多摩ニュータウンの街の中にこれだけの自然が残っているというのはなかなか素晴らしく、吊り橋などがあったりするのも楽しい。難を言えば、自然をよく残す雑木林の風情も孤島のように取り残されたような印象もあり、周囲の街並みの雰囲気からあまりにかけ離れて溶け込めず、例えば休日に子ども連れでのんびりとしたひとときを過ごすための公園としての魅力には少々欠けるような気もする。それでも生い茂る雑木の木立とその中に聞こえる野鳥の声などは、多摩ニュータウンの中にあっては貴重なものと言えるし、その中で味わう四季折々の自然の表情には心が和む。近くには浄瑠璃緑地せせらぎ緑道別所公園などもあり、近辺の散策を兼ねて訪れてみるとよいだろう。
蓮生寺公園