横浜市保土ヶ谷区の北東端、峰沢町に「滝ノ川あじさいロード」という緑道がある。その名が示すように「滝ノ川」の川跡を整備して紫陽花を植栽した散策路で、紫陽花の名所としてよく知られている。

「滝ノ川あじさいロード」の“入口”は国道1号線と県道13号線（新横浜通り）とが交差する「三ツ沢上町」交差点の北西側の角に設けられている。交差点の北西側に立って周囲を見回せば、「滝ノ川あじさいロード」の名を掲げたゲートをすぐに見つけることができる。「滝ノ川あじさいロード」はその名の通り「道」であるから、両端があるわけで、その片方だけを“入口”と呼ぶのは妥当ではないが、反対側に当たる西端部では「滝ノ川あじさいロード」の名を示した標柱が立てられているだけで少しばかりわかりにくい。そしてまた「三ツ沢上町」交差点側の方が横浜市営地下鉄ブルーラインの駅に近いこともあって便利だ。そうしたことを考え合わせれば、「三ツ沢上町」交差点側の東端を“入口”と呼んでおきたい。この辺りでは県道13号線（新横浜通り）が保土ヶ谷区と神奈川区との区境に当たり、東側は神奈川区だが「滝ノ川あじさいロード」は保土ヶ谷区の峰沢町に位置している。「滝ノ川」は「滝の川」と書いたりもするが、現地の標識などに記されている名は「滝ノ川」なので、本頁では「滝ノ川」に統一することにしよう。

「滝ノ川あじさいロード」は、容易に推測できることだが、滝ノ川の流路跡を散歩道として整備したものだ。ここにはかつて滝ノ川という川が流れていた。1993年（平成5年）頃までは川だったとのことだから、それほど遠い話ではない。「滝ノ川あじさいロード」に設けられた案内板の記述によれば、昔、滝ノ川の上流（現在の峰沢町260番地）には三ツ沢池という大きな用水池があったそうだ。ちなみに「滝ノ川あじさいロード」のすぐ北側には「大池道路」という道路が通っているが、この道路の名は三ツ沢池に由来するもののようだ。

その三ツ沢池から滝ノ川が東へ流れ、三ツ沢から反町にかけての地域の水田を潤していた。時代の変化と共に水田が宅地に姿を変えてゆくと滝ノ川は灌漑用水としての役割を失ってゆくわけだが、それでも子どもたちの遊び場などとして親しまれていたようだ。しかし周辺の市街化によって滝ノ川は悪臭のする川になってしまい、やがて暗渠となってしまう。

その川跡を緑道として整備したものが「滝ノ川あじさいロード」だ。完成したのは2000年（平成12年）のことという。「滝ノ川あじさいロード」はその名が示すように道に沿って紫陽花が植栽され、六月の花期には美しい景観を見せてくれる。すでに“紫陽花の名所”として知られているようで、遠方から訪れる人も少なくないようだ。

「あじさいロード」と名付けられているように、紫陽花は見事なものだ。緑道のほぼ全域に紫陽花が植栽され、鮮やかな景観を見せてくれている。緑道脇に畑地のあるところもあり、“紫陽花の咲く風景”としてもなかなかよい風情だ。場所によって表情が変わるのも楽しい。紫陽花には特に品種名などを示すプレートなどは設置されていなかったが、西洋アジサイとガクアジサイがバランス良く配されているように思える。特に珍しい品種があるというわけではないようだが、カシワバアジサイの姿も見ることができた。

「滝ノ川あじさいロード」の周辺は基本的に住宅地で、西側へと辿ってゆけば工場なども建っており、さらに第三京浜の高架がのしかかるように頭上を覆うところもある。少しばかり殺伐とした印象になってしまいかねないところだが、「滝ノ川あじさいロード」は紫陽花の他にも種々の木々が植栽されて穏やかな表情の散歩道として端正に整備されており、快適な散策を楽しむことができる。中央部付近ではせせらぎを模した池が造られていたり、手動汲み上げ式ポンプの設置された井戸などもあって工夫が凝らされている。今回訪れたとき、おばあちゃんとお孫さんだろうか、井戸のポンプで水遊びをする姿があった。

「滝ノ川あじさいロード」を西端へ通り抜けると「大池道路」へと出る。そこから「大池道路」を少し西へ辿ると畑地の広がる地域もあるから、少し散策の足を延ばしてみるのも楽しいかもしれない。「滝ノ川あじさいロード」は保土ヶ谷区に位置するが、東側の神奈川区に位置する「三ツ沢せせらぎ緑道」もまた滝ノ川の川跡を緑道として整備したもので、ここも紫陽花が美しい。滝ノ川の川跡を繋いで合わせて散策を楽しむのもお勧めだ。

「滝ノ川あじさいロード」に訪れるには横浜市営地下鉄ブルーライン「三ツ沢上町」駅が便利だ。駅を出て西へ向かえば数分で「三ツ沢上町」交差点に着く。交差点付近には数は少ないながらも飲食店があるから、散歩の後はのんびりと食事や休憩を楽しむのもいい。