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八王子市楢原町
浅川のメタセコイア化石林
Visited in November 2003
浅川のメタセコイア化石林
八王子市役所の北、鶴巻橋から浅川左岸を上流へと向かい、南浅川との合流点を過ぎ、城山川との合流点を過ぎたあたりに、メタセコイアの切り株の化石が多数露出した場所がある。学術的にも貴重だという、この「メタセコイア化石林」を、秋晴れの十一月上旬に訪ねてみた。
「メタセコイア化石林」を目指すだけなら鶴巻橋を通るバス路線を使って「八王子市役所」バス停や「鶴巻橋」バス停で降りるのが近いのだが、少し河岸の散策も楽しみたいと思って、敢えて陣馬街道を通るバス路線を使って「水無瀬橋」バス停で降りた。

南浅川河畔
「水無瀬橋」バス停でバスを降りると南浅川が至近だ。そのまま南浅川右岸の遊歩道を下流側へと歩いた。河岸には広場などが設けられており、近所の子どもたちの遊ぶ姿もある。サイクリングロードを兼ねた遊歩道が河岸に沿い、散策を楽しむ人も少なくない。

やがて横川橋を過ぎ、浅川との合流点が近くなると、道脇の並木が枝を伸ばして遊歩道を覆うように葉を茂らせている。多賀公園の桜並木で、春には美しい景観に染まる。

合流点を過ぎると、鶴巻橋上流側の浅川河川敷に広場がある。広場では多くの人たちが秋の休日を楽しんでいる。吹き渡る風も爽快で、秋晴れの下の河畔はとても気分がいい。ひととき腰を下ろしてのんびり過ごしたい気もするが、先へ進むことにしよう。

市役所駐車場脇を過ぎると鶴巻橋だ。鶴巻橋を通る道路は南は陣馬街道や甲州街道へ、北は秋川街道へと繋いでおり、バス路線も通っている。鶴巻橋には幾つかの彫像が置かれている。「松姫」などの八王子に因んだものもあり、それぞれの像を見てゆくのも楽しい。
鶴巻橋の彫像鶴巻橋の彫像鶴巻橋の彫像

広々とした浅川の風景を眺めながら鶴巻橋を渡り、浅川左岸に沿った道路を上流側へと向かう。南浅川の合流点を対岸に見ながら進み、さらに城山川との合流点のあたりに来ると、こちら側の河岸にも広場があり、家族連れの遊ぶ姿があった。河岸の道は桜並木で、これも春の景色が美しい。そのまま進んでやがて前方に中央高速が浅川を渡る橋梁が見えてくると、目指すメタセコイア化石林が近い。
浅川河畔
道脇に「メタセコイア化石林」があることを示す案内板が設置されている。河原へ降りてゆく小径を辿ってゆく。河原は露出した泥岩の層が川の流れに浸食されたものらしいが、まるで太古の地球を思わせるような独特の景観が目を引く。
浅川の河原浅川の河原

メタセコイアの化石はその河原の中に点在している。予備知識が無ければ、これがメタセコイアの化石であることに気づかないかもしれない。予めさまざまな資料で見つけた写真で確かめておいたから、これがそうなのかと見つけることができた。化石は完全な石になる手前の状態なのだそうで、一見すると炭のようにも思える。

メタセコイア化石
メタセコイアはスギ科の落葉高木で、その特徴的な姿と秋に赤茶色に紅葉する美しさが印象的な樹木だ。そもそもは150万年から200万年前くらいの時代に地表に繁茂していた樹木で、1945年(昭和20年)に中国四川省で自生しているものが発見されるまでは絶滅種と思われていたのだという。

「アケボノスギ」という和名もあるようだが、今では「メタセコイア」の名で街路樹や公園内の樹木として広くみることができる。この浅川の化石林は1967年(昭和42年)に発見されたもので、170〜200万年前の群生の跡であるらしい。

調査研究の結果、メタセコイアの樹幹化石の他にも葉や枝、球果、さらに他の植物の化石などが多数発見されたという。2002年(平成14年)には、この対岸の辺りではやはり同じ時代のステゴドンの化石が見つかり、話題になった。牙や臼歯など、約40点の化石が発見されたということだが、こちらは埋め戻されて今は見ることができないようだ。
メタセコイア化石メタセコイア化石

下を見ながら河原を散策していると、これもそうか、これもそうらしいと、メタセコイアの化石らしいものを多数見つけることができて楽しい。中には水の流れに浸っているものもある。化石らしいものを探しながら、ひととき河原の散策を楽しんだ。思いがけない大発見に遭遇すると楽しいと思ったりもするが、なかなかそのようなことはない。
この浅川のメタセコイアの化石林は学術的にも貴重なものであるらしく、上野の国立科学博物館にもここの切り株の化石が展示されている。上野に足を運んだときには見てみるとよい。

身近な場所で見られるこうした化石に太古の地球の様相を想像してみるのは楽しい。小学生くらいの子どものいる家族であれば、子ども連れで見に来るといい。

メタセコイア化石林を見た後はのんびりと北へ歩いて清川町の住宅地を抜けて秋川街道からバスに乗ったが、浅川河岸の散策の足をさらに上流側へと延ばしても楽しそうだ。
浅川の河原