甲州街道のイチョウ並木を逸れてケヤキ並木の表参道に入り、南浅川を渡り、
陵南公園を左手に見ながら進むと、参道は緩やかに左へ曲がり、やがて武蔵野陵墓地の総門に着く。総門から中に入ると、ケヤキ並木から一変、今度はキタヤマスギの並木の続く玉砂利の参道が奥へと伸びる。
高くそびえるキタヤマスギの並木は壮大ささえ感じるほどだ。このキタヤマスギは大正天皇陵造営の際に高尾から移植されたものであるという。ゆっくりと歩いていると、ときおり林の中から鳥の声が聞こえてくる。まれに風に乗って遠くで車の走る音が聞こえてくることもあるが、辺りは静寂そのもの。玉砂利を踏む足音が妙に大きく聞こえる。
やがて参道の奥、緩やかな丘陵に抱かれて三つの陵が現れる。参道を真っ直ぐに進んだところに大正天皇の「多摩陵」、貞明皇后の「多摩東陵」がある。そこへ進むわずかに手前、右手に参道が別れてその奥に昭和天皇陵の「武蔵野陵」がある。
大鳥居と石段のさらに向こうに上円下方の陵の姿を拝することができる。「武蔵野陵」は造営から10年ほどしか経っていないが、すでに古(いにしえ)の時の流れの中にとけ込んでしまっているかのようだ。陵そのものの大きさ、その前に広く取られた空間など、荘厳さを感じさせて訪れる者にその威容を見せる。静寂と安息という言葉の相応しい、厳かな場所である。