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稲荷山公園を後にして、「旧道」を北へ辿ろう。歩道も設置されていない道だが、それほど歩きにくいわけではない。寺田町を抜けて南北を行き来する車はほぼすべて「めじろ台グリーンヒル通り」を通るために、こちらの「旧道」は地元に暮らす人たちの車が利用するだけらしく、車両の通行量がとても少ないのだ。「鍛冶谷戸」バス停を過ぎ、大恩寺前を過ぎてしばらく進むと、牛に出会った。道脇の農家で乳牛を飼っているようだ。道の両脇に牛舎が並び、何頭もの牛が飼育されている。道の東側の牛舎は屋根と柵を設けただけの簡素なもので、すぐ近くに牛の姿を見ることができる。手を伸ばせば触れるほどの距離だが、やはり不用意に触るのは遠慮しておこう。牛は好奇心旺盛な動物なのか、通りかかると近寄って見つめられる。その表情がなかなか可愛らしい。
牛たちに見送られてさらに北へ辿る。「めじろ台グリーンヒル通り」はすっかり離れ、東側の丘の上を通っている。「めじろ台グリーンヒル通り」の周囲にはその名の由来となった「グリーンヒル寺田」の住宅地が広がっている。こちらの道路の周囲には昔からの農家と真新しい住宅とが混在している。東側へ入り込む横道に、誘われるようにして歩を進めた。寺田川を渡る。周辺には刈り取りを終えた水田も残り、そのすぐ脇にはアパートが建っていたりする。丘へ登る小径を辿って行けば、今では「グリーンヒル寺田」の住宅街に抜け出てしまうが、昔は木々の茂る里山が広がっていたのだろう。丘の麓を辿る小径の佇まいに、古い時代の名残が感じられる。
寺田川に沿って小径があった。辿って行くとそのまま「寺田緑地」の中を辿る散策路へと繋がっている。緑地の木々はすでに落葉しているものも多く、林の中は日差しが入り込んで明るい。この緑地は桜の林で、桜の花期には斜面全体が桜に染まって壮観な眺めになる。左手に寺田川を見下ろしながら進むと、小径はやがて鬱蒼と木々の茂る中を抜け、広場に出た。「寺田緑地」に隣接して「ねの沢公園」という小公園があり、その公園の広場へと出たのだ。公園は「めじろ台グリーンヒル通り」沿いに位置しており、すぐ横が「緑ヶ丘小学校入口」交差点だ。「ねの沢公園」は広場があるだけの小公園だが、「めじろ台グリーンヒル通り」沿いにあり、トイレも設置されているため、横道に車を停めて休憩する人の姿がある。
「ねの沢公園」から横の道を再び西へ降りてゆこう。寺田川を渡り、住宅の並ぶ中を抜けると「旧道」へ戻れる。その辺りに「榛名神社」という神社がある。境内には特に由緒などを記したものは置かれていないようだが、その名が示すように群馬県の榛名神社を勧請したもののようだ。寺田町は江戸期には寺田村と呼ばれたところで、後に横山村大字寺田、さらに八王子市寺田町となった。榛名神社は寺田村の鎮守であったのだろう。道路に面して鳥居が建ち、鳥居をくぐると西の斜面を石段が登っている。上ってゆくと丘の上に社殿と神楽殿があり、背後には林が広がっている。
神社の脇には広場があり、滑り台やブランコなどの遊具が置かれ、「榛名公園」という公園となっている。広場下には「八王子市榛名公園会館」という建物もあり、神社の一帯は地域のコミュニティスペースとして機能しているのだろう。昔は神社や寺の境内で子どもたちは遊んだものだ。山と田畑の中に家々が点在する農村の暮らしで、子どもたちが集まるのはこうした神社の境内だった。「榛名公園」はそうした時代の匂いを濃厚に感じさせる。木々に囲まれた広場に立ち、堂々とした巨木を見上げながら風のそよぎに耳をすませれば、地元の氏神様を祀った神社の境内で仲間たちと遊んだ子どもの頃の日々が、ふと思い出されるようでもある。
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