神奈川県藤沢市、江ノ島電鉄藤沢本町駅の西側に伊勢山緑地という丘がある。かつて神明宮が祀られていたことからこの名がある。伊勢山公園と呼ばれて市民に親しまれている緑地だ。木々の緑も濃くなった六月の半ば、伊勢山緑地を訪ねた。
伊勢山公園
神奈川県藤沢市の中心市街からほど近い、江ノ島電鉄藤沢本町駅の西側にこんもりと木々の茂った丘がある。丘は伊勢山緑地というのだが、伊勢山公園と通称されている。伊勢山の名はかつて丘の上に伊勢神宮の分霊を祀った神明宮があったことに由来するという。古くから桜の名所として市民に親しまれている緑地だ。
伊勢山公園
伊勢山は標高50mほどの丘だ。その丘に伊勢神宮の分霊を祀った神明宮が建立されたことから伊勢山と呼ばれるようになったという。1800年代の書物にはすでに記述があるらしい。南に東海道を見下ろし、その向こうに相模湾を望む丘は良い立地だったのだろう。

関東大震災後に戦没者慰霊碑が山上に集められ、桜が植樹されて、1927年(昭和2年)に遊園地として開園したという。1951年(昭和26年)、伊勢山の遊園地は伊勢山公園として供用開始になっている。藤沢市の公園第1号だそうだ(ちなみに藤沢市の市制施行は1940年(昭和15年)のことだ)。1957年(昭和32年)には都市計画の決定により伊勢山は伊勢山緑地となり、以後「伊勢山公園」は通称ということになっている。
伊勢山公園
現在の“伊勢山公園”は丘の上の広場という様相だ。北側には戦没者慰霊碑が並び、南側には遊具類が置かれている。遊具はブランコ、滑り台、シーソー、ジャングルジムといった一般的なもので、大型の複合遊具は設置されていない。広場の隅にはトイレも設置されているから、子ども連れで訪れても困ることはないだろう。
伊勢山公園
広場の北西側の隅に釣鐘堂がある(鐘はない)。この釣鐘堂はかつては山王神社を祀った山王山にあったもので、堂守が一日に3回、時報として鐘をついていたという。山王山は「白旗」交差点の南西側にあった。かつて藤沢高校があったところだ(現在は住宅地に変貌している)。

1925年(大正14年)、山王山に藤澤町立実科高等女学校(後の神奈川県立藤沢高等学校)の校舎が建設されることになり、山王神社は白旗神社に合祀、釣鐘堂は伊勢山に移された。その後、鐘は1943年(昭和18年)の金属回収令によって回収され、現在は御堂だけが残っているというわけだ。
伊勢山公園
広場の南東側には展望台が設けられている。斜面の上に張り出すように木製のデッキが設けられ、デッキに立てば南に視界が開けて爽快な眺望が楽しめる。展望台には「江の島の見える展望台」と記した標識柱が立っているが、その名の通り、眼前には藤沢の町を見下ろし、その向こうに江の島が見えている。伊勢山から見れば江の島はほぼ真南、逆光に霞んではいるが、シーキャンドルのシルエットもよく見える。その背後には相模湾が広がっている。古い時代の人たちもこの眺めを楽しんだのだろう。この眺望が伊勢山のいちばんの魅力かもしれない。
伊勢山公園
伊勢山公園は特に規模の大きな公園というわけではないが、その歴史は興味深く、藤沢散策の際にはぜひ訪ねてみたいところだと言っていい。旧東海道散策の際に立ち寄るのもお勧めだ。かつて神明宮に参拝していた人たちを思い浮かべながら、江の島の眺望を楽しむのも一興だろう。
伊勢山公園
伊勢山公園
伊勢山公園
伊勢山公園
参考情報
本欄の内容は2025年6月現在の状況です
交通
伊勢山公園は小田急江ノ島線藤沢本町駅から至近だ。駅を出て駅の西側に回れば、目の前の丘が伊勢山公園だ。

伊勢山公園に来園者用の駐車場は設けられていない。車で来訪する場合は藤沢本町駅周辺のコインパーキングを利用しよう。

飲食
公園内にはレストランや売店などはない。食事やティータイムは藤沢本町駅周辺の飲食店を利用しよう。

周辺
伊勢山公園の東側、国道467号沿いは旧東海道の藤沢宿だったところだ。藤沢本町駅から藤沢市ふじさわ宿交流館まで歩いても20分ほど、散策の足を延ばしてみるのもお勧めだ。
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