埼玉県越生町の黒山地区に美しい百日紅並木がある。山々に囲まれた長閑な風景の中、鮮やかに咲き誇る百日紅が興趣に富んだ姿を見せる。百日紅が見頃の八月半ば、越生町黒山を訪ねた。
埼玉県越生町の南西端に黒山という地区がある。南は飯能市に接する立地で、山深いところだ。その黒山地区を埼玉県道61号越生長沢線が南北に抜けているが、その一部、黒山地区北部の「上大満」バス停から「火の見下」バス停までの辺り、沿道に百日紅が植えられている。延々と続く並木というわけではなく、ところどころに百日紅が並ぶ場所があるという程度だが、山々に囲まれた緑濃い風景の中、夏の日差しを浴びて咲き誇る百日紅がたいへんに美しい。
「上大満」バス停から300mほど県道61号を南下した辺りに梅園小学校南分校跡が残っている。現地に設置された案内板によれば、1872年(明治5年)に黒山の下ヶ戸(さげど)薬師堂を校舎として大満(だいま)・黒山・龍ヶ谷の三村を通学区とする黒山学校が開設され、その後変遷を経て、戦後に梅園小学校南分校となり、1972年(昭和47年)に閉校となったという。
今は県道沿いに跡地が残るだけだが、学校だった時代の名残を感じることはできる。山側の一角には二宮金次郎像が今も残っている。かつては校庭で遊ぶ子どもたちを台座の上から見守っていたのだろう。今は人の気配のない学校跡地に蝉時雨が降り注ぐだけだ。
その梅園小学校南分校跡地の県道沿いに百日紅が並んでいる。跡地を囲むフェンス越しに枝を伸ばして花を咲かせている。県道の歩道から見上げるように眺める景観が美しい。道路の反対側にも百日紅が並んでおり、そちらも美しい景観だ。
梅園小学校南分校跡の200mほど北側、県道沿いに建つ木材店の辺りも百日紅が美しい。県道西側の歩道から眺めるのもいいが、東側歩道に移って間近に見るのもいい。北から南を眺めれば梅園小学校南分校跡横の百日紅を背景に見ることになり、美しい風景だ。
梅園小学校南分校跡から700mほど県道を南下したところに「石戸橋」バス停がある。この付近の百日紅も見応えのあるものだ。県道西側はおそらく道路の改修によって生じたであろう広い歩道になっていて、その歩道に設けられた植え込みに百日紅が立っている。沿道の家々と百日紅が織り成す風景も山里の夏を感じさせて興趣のあるものだ。
「石戸橋」バス停から200mほど南に下った辺りにも百日紅が並んでいるところがある。大きく枝を張って咲き誇る姿はなかなか見事なものだ。県道の西側には三滝川が沿っており、見る角度によっては川の流れと百日紅が織り成す風景を楽しむことができる。県道東側の歩道から眺める光景も美しい。
黒山地区の県道沿いでは梅園小学校南分校跡付近や「石戸橋」バス停付近の他にも随所で美しい“百日紅の咲く風景”を楽しむことができる。山里の風景の中に咲く百日紅は都市部の街路樹や公園内の植栽とは違った興趣を感じさせて魅力のあるものだ。百日紅は濃い紅色のもの、薄いピンクのもの、白花のものなど、様々な花色のものが植えられており、景観が単調にならないのもいい。百日紅の好きな人なら一度は訪ねてみたい。百日紅が見頃になるのは夏の暑さの厳しい頃だ。無理をせず、体調管理に気をつけながら楽しもう。
越生駅(JR八高線・東武越生線)から梅園小学校南分校跡の辺りまで約6km、徒歩では少し遠い。バスを利用するのが賢明だろう。川越観光自動車の運行する路線バスが越生駅と黒山とを繋いでいる。「上大満」バス停や「石戸橋」バス停などを利用するといい。ただし、便数が多くないので注意が必要だ。
車で来訪して百日紅並木を楽しみながらのドライヴもいいものだが、近辺には駐車場が無いのでゆっくりと観賞するには不便だ。道幅の広くなったところで道脇に停車しておく方法もあるが、あまりお勧めはできない。
百日紅並木の辺りには飲食店はほとんどない。食事は越生駅周辺に戻って楽しもう。
越生の中心部から黒山方面へ向かう途中、有名な
越生梅林
がある。梅の花の季節に訪ねてみよう。
越生町役場の西側は「さくらの山公園」だ。その名の通り、
春の桜が見事
だ。
越生駅から東に500mほど離れた越辺川の河岸には「
山吹の里歴史公園
」がある。春にはヤマブキの花が咲き誇る。
越生町の北東部、鳩山町との境に近い辺りには「
大谷ヶ原萬葉公園
」がある。公園としては小さなものだが、周辺の田園風景が美しい。
黒山県道沿線のさるすべり(越生観光ナビ)
越生梅林
さくらの山公園
紫陽花の咲くさくらの山公園
山吹の里歴史公園
桜咲く山吹の里歴史公園
晩秋の山吹の里歴史公園
大谷ヶ原萬葉公園