東京都府中市の北東部、北に隣接する小金井市との市境を跨いで都立武蔵野公園がある。野川の河畔に造られた、緑豊かな公園だ。公園中央部には苗圃があり、さまざまな木々の育つ様子を見ることができる。新緑の美しい四月の末、武蔵野公園を訪ねた。
武蔵野公園
府中運転免許試験場に行ったことのある人ならおわかりいただけると思うが、試験場の北東側には鬱蒼と木々が茂った一角がある。あれが、実は武蔵野公園の木々だ。武蔵野公園は野川の河畔に造られた公園で、23ヘクタールほどの面積を有し、園内には野球場も設けられている。武蔵野公園が特徴的なのは公園中央部に「苗圃」があることだろうか。東京都の公園や街路に植栽する木々の苗木を育てているという。緑濃い園内にはバーベキュー場も設けられ、雑木林や草はらなどもあり、野川河岸の散策も楽しく、休日のひとときをのんびりと過ごすのにも良いところだ。
武蔵野公園
府中運転免許試験場の東側、「東八道路」に面した入口が武蔵野公園のメインエントランスと言っていいのだろう。ケヤキ並木のプロムナードが園内に延び、その東側には来園者用駐車場やサービスセンター(管理事務所)が設けられている。ケヤキ並木のプロムナードを辿った先、サービスセンター脇には美しいデザインの「じゃぶじゃぶ池」が設けられている。噴水も設置され、暑い季節には水遊びを楽しむ子どもたちの歓声が響いている。
武蔵野公園
駐車場の東側、駐車場と東八道路と西武多摩川線の線路に囲まれるようにして広場が設けられている。脇の方にはパーゴラや遊具を設置した小広場もある。木々に囲まれて緑濃い佇まいが魅力的なところだが、公園の中心部から少し離れている印象で、人の姿は少ない。のんびりと過ごすには良いところだろう。
武蔵野公園
メインエントランスから北西の方角、公園敷地のほぼ中央部を苗圃が占めている。円形の区画を小径が縦横に区切り、その小区画のそれぞれにさまざまな樹木が育てられている。この武蔵野公園はそもそも街路樹用の樹木を育てる苗圃だったところを公園として公開したもので、現在も街路樹や公園に植栽される木々の育成や、調査、研究などの役割を担っている。
武蔵野公園
苗圃内には約80種、7000本ほどの樹木が育てられているという。四月から五月にかけて、それらの樹木が新緑に輝き、眩しいほどの美しさだ。樹木に興味のある人にはもちろんだが、特に樹木に詳しくなくても、さまざまな樹木が植えられた中を歩いてみるのは楽しい。
武蔵野公園
苗圃の西側、公園の西端に当たる部分は野川河畔に設けられた原っぱだ。原っぱの一角には小さな丘があり、その形状が鯨の背を思わせるというので「くじら山」と名付けられている。「くじら山」と原っぱは子どもたちのための良い遊び場になっているようだ。原っぱは地元のイベント会場として利用されることもあるようだ。その原っぱの西端、小金井新橋という橋が野川に架かり、対岸とを繋いでいる。
武蔵野公園
野川の左岸側は低地となっており、調節池として整備されている。調節池は二ヶ所に分かれ、東側が第一調節池、西側が第二調節池となっている。調節池とは言っても味気ないものではなく、特に第一調節池は北側には国分寺崖線に茂る木々が横たわり、緑濃く穏やかな風景が広がっている。調整池の周辺をのんびりと散策するのもお勧めだ。
武蔵野公園
第一調整池の東端部辺りには「とんぼたんぼ」と名付けられた“田圃”がある。その名が示すようにトンボが棲息する環境を保持するために設けられたものだろう。小さいながらも“田圃”の風景は長閑な興趣を漂わせて、郊外の里山風景を彷彿とさせる。第一調整池には他にも「どじょう池」や「ため池」などが設けられ、さまざまな水辺の風景を楽しむことができる。
武蔵野公園
野川左岸、すなわち野川と調整池との間は堤防を利用した舗道が整備されており、野川の流れを眺めながらの散策が楽しい。第一調節池横の箭真舳(やまべ)橋近くでは舗道はハナミズキ並木だ。舗道の両脇にハナミズキが植栽され、ハナミズキの根方にはツツジが植えられている。四月の末、すでにハナミズキは花期が終わり、ツツジが真っ赤な花を咲かせて河岸の風景に彩りを添えている。ハナミズキが盛りの頃に訪ねてみるのもお勧めだ。
武蔵野公園
野川は自然のままの河岸の様子が保全され、親水空間として整備されている印象だ。初夏から夏にかけては川遊びを楽しむ家族連れで賑わう。特に「バーベキュー広場」脇ではバーベキューと川遊びをセットで楽しむ家族連れが多いらしく、なかなかの賑わいだ。野川は水もなかなかきれいで、通常は水深も浅い。比較的安全に川遊びが楽しめるだろう。

武蔵野公園
公園の西端部、小金井新橋の上流部も川遊びを楽しむ人たちで賑わうところだ。小金井新橋の上流部はすでに武蔵野公園の区域外だと思うが、野川自体は親水空間として整備されており、公園の延長のように楽しめる。小金井新橋脇では川原に降りる石段も整備されているから、川遊びも快適だ。

武蔵野公園
武蔵野公園は苗圃を中心にさまざまな樹木が茂る緑濃い佇まいと野川河畔の長閑な風景が魅力の公園と言っていい。子どもたちのための遊具類は少ないが、西側の原っぱが良い遊び場になってくれるだろう。また園内には40種、900本ほどの桜が植えられており、桜の名所としても知られている。秋の紅葉も美しく、四季折々の表情を楽しむことのできる公園だ。
武蔵野公園
武蔵野公園
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参考情報
本欄の内容は武蔵野公園関連ページ共通です
武蔵野公園について、詳細は指定管理者である西武・武蔵野パートナーズによる公式サイト(「関連する他のウェブサイト」欄のリンク先)を参照されたい。

交通
電車で来訪する場合はJR中央線武蔵小金井駅から調布行きバス、あるいは京王線調布駅北口から武蔵小金井行きバスを利用し、「武蔵野公園」バス停で下車するとよい。

車で来訪する場合は公園南側の「東八道路」沿い、府中運転免許試験場の東側に駐車場入口がある。駐車場は有料で、約120台分のスペースがあるということだが、休日には満車になることが多いようだ。

飲食
園内には売店やレストランなどは無く、公園の周辺にも飲食店などは無い。のんびりと訪れるときにはお弁当持参がいい。東側に隣接する野川公園には軽食を販売する売店があるので、少し距離があるが、それを利用するのもいい。

バーベキュー場を利用するには事前予約が必要だ。予約方法や利用時間など、詳細は西武・武蔵野パートナーズによる公式サイト(「関連する他のウェブサイト」欄のリンク先)を参照されたい。

周辺
武蔵野公園の東側には都立野川公園が隣接し、野川河岸の散策路を下流側に辿って行けば道路をひとつ横切るだけで野川公園に入って行ける。野川公園は広々とした芝生広場が魅力の規模の大きな公園だ。併せて散策を楽しむのがお薦めだ。

野川公園からさらに野川の河岸を下流側に辿れば三鷹市大沢の里がある。昔ながらの水田風景や古民家、水車農家などが残されている。ここも併せて訪ねてみたい。

野川公園から南へ少し辿れば都立武蔵野の森公園だ。調布飛行場に隣接する公園で、開放感が魅力だ。余裕があれば散策の足を延ばしてみるのもいい。
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