海岸に沿って南下してきた日南線は、
小内海の駅を過ぎるといったん海岸を離れ、鶯巣トンネルを抜けると日南市だ。再び窓外に海が見えるようになると、すぐに伊比井(いびい)の駅に到着する。
伊比井は南北を岬に挟まれた入江を成し、砂浜と伊比井川に挟まれるようにして小さな集落がある。
伊比井は観光名所として知られるところではなく、美しい浜辺も海水浴場ではないが、近年では波乗りのポイントとして知られるようになり、波を待つサーファーの姿を見ることも多くなった。
日南線の線路は砂浜と集落とを東に見ながら山裾を辿っている。駅は山裾の斜面の立地で、線路に沿った国道220号から石段を上がったところに設けられている。駅下には伊比井のバス停があり、その傍らに「伊比井駅」と記された名標が立っている。「駅前」としての佇まいはそれがすべてと言ってもいい。
駅は小さなものだが、島式ホーム1面2線を有する交換可能駅だ。ホームへ通じる構内踏切が設けられている。2024年度(令和6年度)には駅のリニューアルが実施されている。かつて石段上に立っていた小さな駅舎も今は無い。リニューアルに伴って駅構内が整然としてシンプルな印象になった。
リニューアルの一環として2025年(令和7年)2月には駅名標やホームに設けられたベンチも新しくなった。波乗りのポイントとして知られる伊比井の駅らしく、ベンチの背もたれはサーフボードを象ったもので、駅名標にもサーフボードをモチーフにしたデザインがあしらわれている。
伊比井駅から南へ向かう日南線はここでいったん海岸を離れ、山間部へと向かってゆく。窓外がいよいよ山深くなると谷之城トンネルへと入ってゆく。日南線の中で最も長いトンネルを抜けると日南市北郷町、間もなく
北郷駅へと到着する。