日南海岸風景
赤池渓谷
赤池渓谷
JR日南線日向大束駅のやや北側で国道220号から県道34号が北西の方角へと延びている。県道34号は鹿児島県との県境近くの山間部を北上し、やがて都城市へと入って国道222号へ合流するのだが、その途中、県境も近くなった辺りに赤池渓谷と呼ばれるところがある。その名の通り、川の流れが永い年月をかけて岩盤を浸食してできた滝や渓谷を見ることができ、小さなキャンプ場も併設されており、地元の行楽地として知られている。
赤池渓谷
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赤池渓谷は、姶良(あいら)カルデラの噴火による火砕流堆積物の地層を川の流れが浸食してできたものだ。「姶良カルデラ」とは鹿児島県の錦江湾最奥部に存在する巨大なカルデラのことだ。錦江湾の桜島以北のほぼ円形をした部分が、古代の噴火によって生じたカルデラである。約3万年前に大噴火が起こり、巨大なカルデラが生じ、そこへ海水が流れ込んで現在のような錦江湾の奥部を構成する形となった。世界でも例の少ない海域カルデラと呼ばれるものだ。

同様のカルデラは九州南部に他にも点在し(すべてが「海域カルデラ」ではないが)、それらの噴火による火砕流堆積物が周辺の地形と土壌を形作っている。宮崎県南部から鹿児島県にかけて広く分布する「シラス台地」はその代表的なもので、串間市大束地区でさつまいも(いわゆる「甘藷」)の栽培が盛んなのは、このシラス台地の特性を利用したものだ。一方で、火砕流堆積物による岩盤を川の流れが浸食して造られた峡谷や滝も各所に点在する。都城市の名所「関之尾の滝」はその代表例で、これは姶良カルデラの噴火による火砕流堆積物の地形を川の流れが穿ってできた。赤池渓谷もそうしたもののひとつである。
赤池渓谷
赤池渓谷は福島川の上流部に位置し、鬱蒼とした天然広葉樹林に包まれている。岩床を水の流れが浸食してできた奇岩群から滝が落ち、水は渓谷の中を清流となって流れてゆく。滝上側の岩床部には甌穴も見ることができる。滝は大小ふたつがあり、大きな滝の北側の上流部に岩を穿って小さな滝が落ちている。小滝の方もなかなか迫力のある姿を見せる。滝の下流側は岩壁に挟まれた渓谷の様相を成し、緑の水がゆったりと流れている。渓谷は小規模で、やがて河原が現れ、川は木々の茂った山々を縫ってさらに流れてゆく。

夏空の下、緑濃い山々に包まれた滝の姿は美しいものだ。滝そのものは決して規模の大きなものではなく、“名瀑”と呼ばれるようなものではないと思うが、滝上部の甌穴群や下流側の渓谷部などの景観と合わせて、景勝地として充分に魅力あるものだと思える。辺りは町の喧噪からは遥かに遠く、野鳥の声や風にそよぐ木々の音が聞こえるばかりだ。それをかき消すように轟々とした水音が周囲に響くが、しかしその中に静けさを感じるのが不思議だ。
赤池渓谷
赤池渓谷
赤池渓谷
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赤池渓谷は「赤池キャンプ場」になっている。炊飯用の施設などが設置されているが、管理事務所などはない。「当赤池キャンプ場には監視人はいません 十分気をつけて楽しいキャンプを行って下さい」との注意書きが串間市の名で立てられている。事故等の場合も責任を負わないとのことだから、キャンプは行う人の自己責任で、ということだろう。
赤池渓谷
赤池渓谷
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赤池渓谷は“観光名所”として広く知られているわけではないが、滝の様相や甌穴群などは、そうしたものに興味のある人なら魅力あるものだろう。昔から地元の人たちの行楽地として親しまれてきたところだが、今では訪れる人もそれほど多くはないようだ。しかしそれがかえって深い森林に包まれた渓谷の魅力を味わうには都合が良いかもしれない。人の姿の無い赤池渓谷で、轟々と水音をたてる滝の横に立って空を眺めていると、日常の些事をすべて忘れる。そのひとときを過ごすために訪れるのも悪くない。
赤池渓谷
赤池渓谷
INFORMATION
赤池渓谷
【所】串間市大字大矢取(無料駐車場有)
【問】串間市観光協会
【問】串間市観光協会赤池事業所
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ページ内の写真は2010年夏に撮影したものです。本文は2014年6月に作成しました。