横浜市中区山手町
−元町公園−
エリスマン邸
Visited in May 2024

元町公園の敷地内の一角、山手本通りに面してエリスマン邸という洋館が建っている。横浜山手に保存された洋館群、いわゆる“山手西洋館”のひとつで、スイス人貿易商フリッツ・エリスマンの私邸として1926年(大正15年)に建てられたものだという。緑の木立に囲まれて建つ風情も美しく、山手散策を楽しむ観光客を集めている。

エリスマン邸を設計したのは「日本現代建築の父」とも呼ばれるアントニン・レーモンドだ。レーモンドは1888年にチェコに生まれ、後にアメリカ国籍を取得、世界的建築家であるフランク・ロイド・ライトに師事した。
1919年(大正8年)、旧帝国ホテルの建築の際にフランク・ロイド・ライトの助手として来日、第二次世界大戦中には一時帰国したものの戦後再び来日、その活躍の舞台を主に日本に求めた。東京女子大学本館、東京女子大学礼拝堂、軽井沢夏の家、イタリア大使館山荘、旧東京ゴルフ倶楽部、札幌聖ミカエル教会、リーダーズダイジェスト東京支社など、日本全国に数々の作品を残し、横浜ではライジングサン石油社宅やスタンダード石油社宅などがよく知られている。
日本近代建築に於けるレーモンドの功績の大きさは計り知れず、彼のもとからは吉村順三や前川國男といった高名な建築家が育っている。1973年(昭和48年)にレーモンドは日本を離れ、1976年、ニューホープで他界している。88年の生涯だった。

1982年(昭和57年)に集合住宅建設のために解体されたが、その歴史的価値が高く評価され、当時の所有者から横浜市が譲り受けた。それを1990年(平成2年)に元町公園内に移築復元したものが現在の「エリスマン邸」だ。解体前には和館が併設されていたということだが、移築復元の際には省略され、現在は洋館部分のみの美しい姿が公開されている。
エリスマン邸を設計した当時のレーモンドは、師であったライトのもとから独立して間もない頃で、細部にはまだライトの影響が見られつつも、後のレーモンドの作風を感じさせるものだという。その簡潔で清涼なイメージはレーモンドの作品の持ち味とも言えるもので、横浜に残る他の洋館群とは少々異なる風情を醸している。

かつてエリスマンがこの家に暮らした時にどのような家具類が使われていたのかは詳しくわかっていないということだが、展示されているエリスマン邸の内部の様子から往時の暮らしぶりを思い描くことは困難なことではない。庭に面して広く窓を取った明るいサンルームの、窓辺に置かれた藤製のデッキチェアなどを眺めていると、かつてこの家に暮らした外国人実業家の家族の姿が光の揺らめきの中に見えるようでもある。




エリスマン邸は山手散策の際にぜひとも立ち寄って見学しておきたいところだ。清爽な印象の建物はたいへんに美しく、建築に興味がなくてもぜひ見ておきたいものだし、館内を巡りながら往時のエリスマン一家の生活を思い描いてみるのも楽しいひとときだ。
二階部分の展示室には山手本通り沿いに並ぶ洋館のそれぞれについての解説が展示されているので、山手散策の参考に見ておくといい。一階部分の奧には喫茶室が設けられており、散策の際の一休みの場所としてお薦めだ。喫茶室の窓の外には元町公園の緑の木立が間近に見え、心休まる静かなひとときを過ごすことができる。
二階部分の展示室には山手本通り沿いに並ぶ洋館のそれぞれについての解説が展示されているので、山手散策の参考に見ておくといい。一階部分の奧には喫茶室が設けられており、散策の際の一休みの場所としてお薦めだ。喫茶室の窓の外には元町公園の緑の木立が間近に見え、心休まる静かなひとときを過ごすことができる。

