佳景探訪
谷津バラ園
千葉県習志野市の谷津バラ園は関東でも屈指のバラの名所として知られている。端正に整えられた園内にさまざまな品種のバラが咲き誇る景観は圧倒的な美しさだ。バラが盛りの五月下旬、谷津バラ園を訪ねた。



谷津バラ園

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谷津バラ園谷津バラ園

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谷津バラ園

谷津バラ園
谷津バラ園は、そもそもは谷津遊園の施設として1957年(昭和32年)に開園したのが始まりという。翌年には規模を拡大、東洋一とまで謳われたバラ園だったらしい。その谷津遊園はさらに歴史が古く、1925年(大正14年)に京成遊園地として開園、後に谷津遊園に改称されたものだ。京成電鉄の運営による谷津遊園は海岸の立地で、海水浴のできる遊園地として人気を集めたという。現在の谷津駅が当然のことだが谷津遊園の最寄り駅で、当初は谷津海岸駅、後に谷津遊園駅と改称され、行楽客の足を担っていた。

やがて戦後の高度成長期、周辺の東京湾岸が次第に埋め立てられてゆく。現在は埋め立て地の中に池のように残された谷津干潟は、谷津遊園が開園した当時の海岸の名残だという。1965年(昭和40年)にはバラ園が現在地に移設される。バラ園の敷地が京葉道路の建設地にかかってしまったためだった。そして1982年(昭和57年)、谷津遊園は社会情勢の変化などに伴う諸事情により閉園、園内の施設は売却、あるいは廃棄され、跡地には高層住宅の建物が建った。バラ園も一旦は閉園されたが、惜しむ声も多かったようで、習志野市の都市公園として再スタートすることになる。こうして現在の谷津バラ園が開園した。1988年(昭和63年)のことだという。

現在の谷津バラ園は京成線谷津駅の南方300mほどのところに位置している。周辺は住宅地で、高層の建物もあり、バラ園の中からもその姿が見える。現在のバラ園周辺の風景の中にかつての谷津遊園の面影を探すのは難しい。谷津駅から商店街を抜け、京葉道路をくぐったあたりにかつての谷津遊園の正面入口があったらしい。今はそこからさらに少し歩かなくてはならない。

谷津バラ園の北側には小公園が隣接しているが、バラ園を含めた全体が「谷津公園」という公園を成しており、隣接する小公園は谷津公園の「花木広場」という位置付けのようだ。この「花木広場」は谷津遊園時代には運動場だったところらしい。

バラ園は面積12,600u、ほぼ正方形をした敷地の中に700種類、7,000株のバラが植栽されているという。 中央部には円形の区画を放射状に分割した花壇が設けられ、その中心には噴水が置かれている。それを取り囲むように幾何学的デザインを基調に花壇が整備され、西洋庭園を思わせる造りだ。南側には“ツルバラのアーチ”が設けられ、“バラのトンネル”を形作っている。西側には大きなパーゴラが設けられ、ベンチも置かれている。このパーゴラの中央部からカスケードが設けられ、中央部の噴水を含んだ水路を形作っている。南側と西側の端部は中央部に比べて少し高くなっており、そこからは庭園のほぼ全景を俯瞰することができる。視界いっぱいに広がるバラ咲く風景は実に見事なものだ。バラ園には珍しく、東南側の角には日本庭園風に設えられた一角も置かれている。

バラの花に包まれるようにして園路を歩くひとときは楽しい。ひとつひとつの品種を丁寧に観賞しながら園内を巡るのはバラ園観賞の醍醐味だ。ふと視点を挙げれば噴水やパーゴラなどの施設が視界に入ってきて、その景観を楽しむのもいい。少し高く造られた外縁部に立てば庭園のほぼ全景が視界に入り、見渡す限りのバラの景観に圧倒される思いがする。園内随所に置かれた白い彫像も雰囲気を盛り上げてくれる。園内のどこに立っても眼前には美しいバラ園の風景が広がり、園内散策は楽しく飽きない。

庭園内には「皇室・王室コーナー」や「鈴木省三コーナー」、「イングリッシュローズコーナー」、「有名人コーナー」、「世界のバラコンテスト受賞作コーナー」、「香りの庭」といったテーマ別の区画も設けられているのも楽しい。

「皇室・王室コーナー」では「モナコ王室コーナー」、「オランダ王室コーナー」といったようにさらにそれぞれの王室に因んだバラを集めた区画が設けられており、丹念に見てゆくと興味が尽きない。

「鈴木省三コーナー」というのは、バラに詳しくない人にはわかりにくいが、日本に於けるバラの育種で多大な功績を残した鈴木省三氏の功績を顕彰する目的で名付けられたコーナーのようだ。谷津遊園時代から改修される際にも鈴木省三氏の尽力があったという。一角には鈴木省三氏のプロフィールを簡単に説明した案内板も設けられている。ぜひ目を通しておきたい。

12,600uという敷地は圧倒的な広大さを誇るわけではないが、バラ園としては充分に広い。その中にさまざまな品種のバラが咲き誇る様子は見事なものだ。バラ園の美しさというものは、バラの花そのものの美しさはもちろんだが、造園の巧みさに負うところも大きい。庭園の基本的な造形、品種の配置、カスケードや噴水などの水景施設の配置、パーゴラや他の樹木の配置など、それらがバラの花と組み合わされて見せる景観の美しさ、庭園内での視点の変化に伴う景観の表情の変化、そうしたものすべてがバラ園の美しさの印象を決定づけてしまう。そうした観点からも、谷津バラ園は素晴らしいバラ園ということができるのではないか。

そうした造園の美しさや随所に置かれた彫像などは、バラの最盛期でなくても散策が楽しめるようにと考えられたものだそうだ。バラ以外の花では、東南側の一角に設けられた日本庭園風の区画の脇にハンカチノキが植栽されているのが目を引く。ハンカチノキはミズキ科の樹木で、花を咲かせると白いハンカチを吊したように見えるためにこのような名で呼ばれているものだ。ハンカチノキの花期は4月から5月にかけての時期だ。バラの最盛期より少し早いが、機会があれば見てみるといい。またクリスマスローズを植えた区画もあるようで、早春に訪れても楽しめるだろう。

しかし、やはり谷津バラ園の最もお勧めの季節はバラが最盛期を迎える5月中旬から6月初旬にかけてだろう。薫風の中、初夏の陽光を浴びて咲くバラの花は輝くような美しさだ。さまざまなバラの花の一輪一輪を観賞しつつ、バラの花に埋め尽くされた庭園の美しさを堪能しながらの園内散策は至福のひとときだ。バラの愛好家から一般的な花好きの人まで、そして特に花に興味のない人でも、この美しさは充分に楽しめるに違いない。素晴らしいバラ園である。


谷津バラ園/花木広場

谷津バラ園/花木広場
バラ園の北側に隣接する「花木広場」は有料区画外で、誰でも自由に利用することができる。西側の隅には遊具類の置かれた区画もあり、地元の小さな子どもたちの遊び場を担っているようだが、他には特筆するような施設は無く、疎らに樹木を植栽しただけの広場だ。

お昼時には木陰にシートを広げてアウトドアランチを楽しむ家族連れやグループの姿が少なくない。バラ園内は飲食禁止だから、お弁当持参の人たちがこちらでランチタイムを楽しんでいるのだろう。バラ園に訪れたわけでなくでも、陽気の良いこの季節、アウトドアランチを楽しむ地元の人もあるのかもしれない。駅の南側に延びる商店街でテイクアウトの食事を調達しておき、バラ園を観賞した後にこの公園でランチタイムを過ごすのもお勧めだ。




谷津商店街

谷津商店街
谷津駅から南へ延びる商店街は、「谷津商店街」、あるいは「谷津遊路商店街」というらしい。谷津遊園があった時代には飲食店や土産物店が建ち並んでいたということだが、今は町の小さな商店街という様相で、飲食店や衣料品店、薬局、青果店など、さまざまな店が軒を構えている。かつては谷津遊園への行楽客を相手にしていた商店街だったのだろうと思うが、今では客層の中心は地元の人たちのようで、地元の買い物客で賑わう中を、谷津バラ園へ向かう人たちがちらほらと通り抜けてゆくという構図のようだ。

谷津バラ園に向かう途中に、どこかのお店でテイクアウトのものを買い求めておくのもいいし、バラ園からの帰りに商店街のお店で食事やお茶を楽しむのもいい。小さいながらも素敵な商店街だ。町歩きの好きな人、商店街散歩の好きな人ならきっと楽しめるだろう。
参考情報
バラ園への入園は料金が必要で、料金は時期によって異なる。またバラ園内へのペット連れの入場は不可、ケージなどに入れれば入園可能のようだ。その他、休園日、開園時間、入園料金、入園の際の注意事項などについては公式サイト(「関連する他のウェブサイト」欄のリンク先)を参照されたい。

交通

谷津バラ園へは京成電鉄の京成本線谷津駅が至近だ。駅から南へ、徒歩で数分の距離だ。JR線を利用する場合はJR総武線津田沼駅から京成バスの谷津干潟行きの路線を利用し、谷津南小前バス停で下車すれば徒歩3分ほどという。JR総武線を利用して東京方面から訪れる場合は、船橋駅で一旦下車し、JRの船橋駅のすぐ南側の京成船橋駅から京成本線へと乗り換え、谷津駅まで京成線を利用する方法もお勧めだ。JR総武線船橋駅と京成船橋駅とは200mほどしか離れていない。

谷津バラ園に駐車場も用意されているが、駐車可能台数は少ない。バラの時期には裏手の谷津干潟横に臨時駐車場が設けられるようだが、それでも休日などには混雑は避けられない。公共の交通機関の利用をお勧めする。

飲食

バラ園内には売店やレストランなどは無い。またバラ園内での飲食は禁止とのことで、バラ園内でお弁当を広げることはできない。お弁当持参の人はバラ園の外側、ゲートの北側に設けられた「花木広場」を利用するといい。バラを観賞した後、この広場でお弁当タイムを楽しむのもお勧めだろう。ゲート横には露店なども出ているがバラ関連の物品販売が主で、軽食などはほとんど販売していないようだった。

お弁当持参でない人は谷津駅方面へと戻ればいい。駅から南へ京葉道路下までは商店街を成しており、飲食店が点在しているので利用するといいだろう。駅から谷津バラ園に向かう途中、商店街にあるコンビニエンスストアなどでおにぎりなどを調達してゆくのも一案だ。

周辺

谷津バラ園の裏手、南側には有名な谷津干潟がある。すぐ近くなのでバラを観賞した後に足を延ばしてみるのがお勧めだ。谷津干潟からさらに東へ辿れば、JR京葉線新習志野駅の近くに香澄公園という公園がある。園内には小さいながらも菖蒲田が設けられ、6月には花菖蒲が楽しめる。
谷津バラ園

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