佳景探訪
吹割の滝
群馬県沼田市に「吹割の滝」の名で知られる名瀑がある。河床の割れ目に水が流れ落ちる様は一般的な滝とな異なり、「東洋のナイアガラ」とも呼ばれる。新緑萌える五月の末、「吹割の滝」を訪ねた。



吹割の滝

吹割の滝

吹割の滝
群馬県沼田市、河岸段丘の地形で有名な片品川の上流部に「吹割の滝」の名で知られる名瀑がある。この辺りは美しい渓谷美を堪能できるところで、「吹割渓ならびに吹割瀑」として国の天然記念物と名勝の指定を受けている。

この渓谷は、約900万年前に起きた火山噴火によって発生した火砕流の堆積物が岩石化した「溶結凝灰岩」の地層を片品川の流れが浸食して生まれたものだ。「吹割の滝」は、その「吹割渓ならびに吹割瀑」を成す滝のひとつで、河床に生じた割れ目に三方から水が流れ込み、その景観の様子から「吹割(ふきわれ)」の名が生まれたようだ。「吹割の滝」は「日本百名瀑」のひとつでもあり、名実共に“名瀑”として群馬を代表する景勝地のひとつである。


吹割の滝

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吹割の滝

吹割の滝

吹割の滝

吹割の滝

吹割の滝

吹割の滝

吹割の滝
沼田市の中心部から「日本ロマンチック街道」と愛称の付けられた国道120号を東へ20kmほど、国道120号が北寄りに向きを変え、周囲の山々がいよいよ深くなった辺りに「吹割渓ならびに吹割瀑」がある。国道脇には土産物屋や飲食店などが並んで観光地の賑わいを見せている。駐在所前から西へ入り込んでゆく小径があり、「吹割の滝 遊歩道入口」と案内標識が指し示している。ここから「吹割渓ならびに吹割瀑」散策へと出発するのが順当なルートだろう。

土産物店の並ぶ小径を降りてゆくと、片品川の河岸だ。ちょうど「鱒飛の滝」の上である。遡上する鱒が滝を登るために飛び跳ねていたことからその名で呼ばれるようになったとのことだが、他説には“鱒でも遡れない”ということで「鱒止め」が「ますとび」に転じたものともいう。「鱒飛の滝」は落差約15m、約1万年前には同じ場所にもっと大きな滝があったのではないかという。それが浸食によって後退し、現在のような景観になったということらしい。河原に降りることもできるが、もちろんあまりに滝に近づくことは危険だ。立入禁止のラインが設けられているので、その先には決して立ち入らないようにしよう。

下流側からのルートに沿って辿れば、「鱒飛の滝」が「吹割渓ならびに吹割瀑」観光のまさに序章のような役割を果たしてくれる。渓谷の左岸側にはコンクリートで散策路が設けられている。この散策路を辿って、さらに上流側へと歩を進めてゆこう。

溶結凝灰岩の地層を抉って形作られた渓谷は独特の景観を見せる。自然の営みによって生じた造形美に圧倒される思いだ。途中の岸壁には「般若岩」と呼ばれる場所もある。岸壁の様子が「般若」を思わせることなら名付けられたようだが、それほどに荒々しい岩肌だということだ。

「般若岩」を過ぎてさらに進めば、いよいよ「吹割の滝」である。片品川の流れが溶結凝灰岩の河床に高さ7m、幅30mという巨大な溝を抉り、そこに三方から水が流れ込む。滝というものは、たいていは岩壁の上から水が流れ落ちるものであったり、あるいは川の流れの中に巨大な段差があって生じるものであったり、どちらにしても下から見上げるものであることが多いものだ。しかし「吹割の滝」は違う。足の下に広がる河床の割れ目に、川の水が轟々と流れ込む。このような形の滝はなかなか類例がない。その景観には驚くばかりだ。「東洋のナイアガラ」と呼ばれるのも納得である。

「吹割の滝」の近くはコンクリートの遊歩道がなく、河床の岩盤上を歩く。滝に近づくこともできるが、もちろん立入禁止ラインが設けられている。過去には事故もあったようで、ラインより先には絶対に立ち入ってはいけない。

「吹割の滝」の上流側は河床が広く現れている。「千畳敷」と呼ばれるところだ。川の流れが緩やかになると、下側より両岸を削る力が大きく働き、こうした地形が生まれるのだという。「千畳敷」の上流側には「浮島」と「浮島橋」が見えている。眼前の「吹割の滝」と、その上流側に広がる「千畳敷」、その向こうに見える「浮島」と「浮島橋」、それらを新緑の山々が包む。なかなかの絶景である。

遊歩道をさらに辿ってゆけば「吹割の滝」を上流側から眺めることができる。滝横の河床に立つ人たちとの対比が滝の大きさを物語る。「吹割の滝」は、今も「千畳敷」を浸食し続けている。やがて何千年、何万年という時をかけて、滝はさらに上流側へと後退してゆくのだ。自然というもののスケールの大きさを実感する。

遊歩道をさらに上流側に辿り、浮島橋を渡ろう。浮島橋からは「千畳敷」を見下ろす。周囲の山肌の木々が新緑のグラデーションを描き、見事な渓谷美を見せている。浮島橋を渡った先が浮島。浮島は片品川の浸食から取り残されて「島」となったものだ。約1万年前頃にはできはじめていたのだろうという。

浮島には浮島観音堂が祀られている。この観音堂は平安初期の795年(延暦14年)に観音不動昆沙門大師が創設、1469年(文明8年)に小海住真海師が本尊を再興したものという。1534年(天文3年)に改築されたお堂が近年まで残っていたが、老朽化のため、1984年(昭和59年)にほぼ原型のままに再建されている。堂内には左甚五郎作と伝えられる「浮島如意輪観音」が安置されている。東照宮の完成後、左甚五郎は幾度か日光を訪れたそうで、その帰りにこの地に立ち寄り、観音像を彫ったのではないかという。

浮島と片品川右岸を繋ぐのは吹割橋。吹割橋からは浮島橋からとはまた違った千畳敷の景観が望める。「夫婦岩」と名付けられた岩もよく見える。上流側に目をやれば、そこにも渓谷の景観が延びている。その渓谷を包むように萌える新緑が眩しい。

吹割橋を渡った先の片品川右岸は木々の茂った山の斜面で、そこに小さな広場が設けられている。そこから下流側に向けて未舗装の遊歩道が辿っている。遊歩道脇には何やら石碑のようなものが並んでいる。遊歩道は「詩のこみち」と名付けられており、全国ふきわれ俳句大会の優秀作品が集められているのだという。石碑のようなものは、その句を刻んだものだ。途中、道脇に小さな鐘が提げられている。見れば「熊除けのカネを鳴らしながらお進みください」とのお願いが添えられている。なるほど、この辺りの山々には熊が出没するのである。

「詩のこみち」を辿ってゆくと、やがて「吹割の滝」の上部に至る。観瀑台が設けられており、木々の間から「吹割の滝」を見下ろすことができる。溶結凝灰岩の河床を抉ってできた割れ目とそこに流れ落ちてゆく滝の全容が見える。脇に立つ人々との対比が滝のスケールを物語る。雄大なスケールである。

さらに小径を進んでゆくと、また別の観瀑台が設けられており、さきほどの観瀑台とは違った角度から「吹割の滝」を見下ろすことができる。ここからは滝の上流側に生じた巨大な甌穴も見ることができる。

さらに辿ってゆけば十二様の社前に至り、国道120号へと抜け出る。片品川を跨いで国道を渡すのは吹割大橋、その歩道から見下ろす片品川の渓谷美も美しい。周囲の山々は新緑に萌え、荒々しい渓流との対比が素晴らしい景勝を生んでいる。吹割大橋から駐在所前までは200mほど、この後は国道脇の店で食事やお茶を楽しむのがお勧めだろう。


吹割の滝

吹割の滝

吹割の滝
駐在所前の遊歩道入口から河岸に降りて上流側へと辿り、浮島を経て右岸側の遊歩道を下流側に辿って一周するコースが「吹割渓ならびに吹割瀑」を堪能するための最も順当でお勧めのルートだろう。このルートを辿れば距離は約2km、途中でゆっくりと観瀑を楽しみながら、のんびりと歩いても1時間ほどか。

「吹割渓ならびに吹割瀑」は「吹割の滝」や「鱒飛の滝」などの滝を含め、圧倒的な自然美を楽しむことのできるところだ。紅葉の名所としても知られるが、それ故に渓谷を包む山々の新緑は美しく、雪解けの水を集めて水量の増した滝とともにその景観を堪能するのがいちばんのお勧めだろうか。もちろん夏の暑さの中、涼を求めての観瀑もいいものだ。さすがは国の天然記念物であり、名勝、素晴らしい景勝地である。
参考情報
「吹割渓ならびに吹割瀑」は12月中旬から3月下旬までは冬季閉鎖される。また遊歩道は夜間は通行止めである。

交通

吹割の滝へ鉄道で訪れる場合はJR上越線沼田駅が最寄りだが、駅からは距離があり、バスを利用しなくてはならない。駅から吹割の滝までバスで40分ほどだそうだ。

車で訪れる場合は沼田市街から国道120号を東進すればいい。遠方から訪れる場合は関越自動車道を沼田ICで降りれば国道120号だ。沼田ICから吹割の滝まで、十数キロ、20分ほどで着く。

吹割の滝周辺の国道沿いに無料駐車場や民間の有料駐車場などが点在している。よく確認してから駐車することをお勧めする。

飲食

滝近くの国道120号沿いに飲食店がいくつか店を構えている。また関越自動車道沼田ICから吹割の滝へ向かう途中にもさまざまな飲食店が点在している。下調べをしておいてお店を選んでおいてもいいし、途中でお店を見つけて利用するのもいいだろう。

周辺

関越自動車道沼田ICから吹割の滝に向かう途中、沼田ICから5kmほどのところに「道の駅白沢」がある。施設内には「望郷の湯」という温泉施設があり、そこからは眼下に有名な片品川の河岸段丘が望めるそうだ。

吹割の滝から国道120号を20kmほど西へ辿れば沼田市街だ。沼田城址などを訪ねてみるのもお勧めだ。
吹割の滝

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