鹿児島県錦江町の北西部、錦江湾に注ぐ神ノ川に神川大滝という滝がある。高さ25m、幅30mという規模は大隅半島最大級という。夏の盛りの七月末、神川大滝を訪ねた。
神川大滝
神川大滝
鹿児島県大隅半島、肝属山地の懐深くから錦江湾に注ぐ神ノ川という川がある。この神ノ川には数多くの滝があり、「神川七滝」とも呼ばれているという。その中で最も大きなものが「神川大滝」だ。推測だが、もともとは単に「大滝」と呼ばれていたのだろう。「神ノ川の大滝」が「神川大滝」と呼ばれるようになったものだろうと思える。

神川大滝は高さは25m、幅は30mあるそうだ。水量も多く、堂々たる姿を見せる。大滝周辺の岩肌からも湧水が小さな滝となって流れ落ちている。木々の茂った山肌を切り裂くように流れる滝の姿はなかなかの迫力だ。日本各地の名瀑と比べても遜色のない見事さだと思える。川岸を辿って滝近くまで行くと、風向きによっては大量の水飛沫を浴びるが、暑い季節にはそれも楽しい。大滝周辺の山肌は木々に覆われてはいるが、切り立った岩肌の断崖になっているようで、ところどころ剥き出しになった岩肌が荒々しい表情を見せている。神ノ川の流れが永い年月をかけて、この岩肌を刻んでいったのだろう。
神川大滝
神川大滝の下流側の河畔は神川大滝公園として整備されており、広場や遊具なども設けられている。駐車場も完備され、行楽地として整備されている印象だ。大滝を臨む河岸には「大滝の茶屋」という店があり、滝を眺めながら食事を楽しむこともできる。
神川大滝
神川大滝
その「大滝の茶屋」から少し下流側、神ノ川の右岸側には別の滝が流れ落ちている。こちらは単に「小滝」と呼ばれているようだ。確かに大滝に比べれば小規模だが、木々の茂る中から一筋の流れが滝となって落ちる姿はなかなか良い風情がある。この小滝、滝の背後を歩くことができるように散策路が整備されている。訪れたときはぜひ小滝の“裏”を歩いてみよう。

この小滝の横手には赤く塗装された螺旋階段が設けられている。これを上がって山中の小径を辿れば、大滝の遥か上方に架けられた大吊橋へ行くことができる。今回訪れたときには大吊橋まで行かなかったのだが、大吊橋からは大滝と滝壺、神川大滝公園の全景を俯瞰することができ、圧巻の景観を堪能することができるようだ。高いところが苦手でない人は大吊橋からの眺めを楽しむといい。
神川大滝
神川大滝
神川大滝は公園として整備され、広場などもあり、遊具もあるから、近くの人なら家族連れでピクニック感覚で訪れても楽しめるだろう。春は桜も楽しめるようだ。神川大滝公園周辺の神ノ川には「カワゴケソウ」という鹿児島県指定天然記念物の植物が生息しているそうだ。11月から12月に花を咲かせるという。そうした植物に興味のある人はカワゴケソウを目当てに訪れてもいいだろう。そして何より、滝というものが好きな人なら、神川大滝はぜひ訪れてみたい滝のひとつに数えていい。全国的な知名度はあまり高くないかもしれないが、実に堂々として迫力に満ちた、見事な滝である。
参考情報
交通
大隅半島には鉄道路線が通っていないため、訪れる際には車を利用しなくてはならない。鹿児島県北部や宮崎県方面から訪れる場合は国道220号や国道269号を辿って鹿屋市を経由し、そこから錦江湾の東岸を辿る国道269号を南下すればよい。錦江町に入って3kmほど走ると、神川大滝を指し示す案内標識が現れるので、それに従って山側(東側)へ折れ、2kmほど行くと神川大滝公園だ。

薩摩半島からは指宿市と南大隅町とを繋ぐフェリー、いわゆる「山川・根占フェリー」を利用し、南大隅町から国道269号を北上するのが便利だ。

神川大滝公園に来園者用の駐車場が用意されており、駐車スペースにも比較的余裕がある。駐車場へのルートもわかりやすい。

飲食
神川大滝公園には滝を見ながら食事のできる「大滝の茶屋」がある。蕎麦やニジマスの塩焼きなどが楽しめるようだ。陽気の良い季節であればお弁当とレジャーシートを持参してアウトドアランチを楽しむのもお勧めだ。

公園周辺には飲食店はない。錦江町中心部へ行けば飲食店が点在しているようだ。

周辺
国道269号を北上すれば鹿屋市、丘陵地に造られた霧島ヶ丘公園に立ち寄ってみるのもいい。公園には「かのやばら園」が併設され、初夏と秋には美しいバラを楽しむことができる。鹿屋市の海上自衛隊鹿屋航空基地には戦史資料や自衛隊の航空機などを展示した史料館がある。興味のある人なら訪ねてみるといい。

国道269号を南下すれば南大隅町、錦江湾に沿ってドライヴを楽しみつつ、本土最南端の佐多岬を目指してみるのも一興だ。

南大隅町の根占港からフェリーを使えば指宿市へも近い。指宿市へと渡って周辺を巡ってみるのもお薦めだ。
水景散歩
鹿児島散歩