佳景探訪
茅ヶ崎里山公園
神奈川県茅ヶ崎市の北端部に茅ヶ崎里山公園という広大な県立公園がある。里山の自然を残した園内は風景も美しく、各種の遊具も備えて多くの人たちに親しまれている。緑滴る五月の下旬、茅ヶ崎里山公園を訪ねた。



茅ヶ崎里山公園

茅ヶ崎里山公園

茅ヶ崎里山公園

茅ヶ崎里山公園

茅ヶ崎里山公園

茅ヶ崎里山公園

茅ヶ崎里山公園
神奈川県茅ヶ崎市の最北部、藤沢市との市境に沿って小出川が流れる辺りは長閑な田園風景の広がるところだ。小出川河畔には水田地帯が広がり、その周辺の丘陵地に大小の谷戸が入り組み、美しい里山の風景を成している。その里山風景を保全活用して整備されたのが茅ヶ崎里山公園だ。種別としては「広域公園」となる県立公園で、面積は30haを超える(都市計画決定面積は36.8ha)広大な公園だ。その性格を象徴するような名称は公募に寄せられた中から選定されたものという。

茅ヶ崎里山公園は北に小出川を見下ろす丘陵地の北端部を利用して設けられており、園内は南が高く、北に低い。丘陵地となった南側は端正に整備され、公園のメインエントランスが設けられ、パークセンターも置かれている。パークセンター前から少し北へ降りれば子どもたちのための遊具を設置した広場や開放感溢れる芝生の広場などが設けられている。園内中央部から北側にかけては里山の風景を残すエリアで、谷戸と尾根とが織り成す美しい風景を楽しむことができる。園内はその性格に応じていくつかのエリアに分けられており、それぞれ「山頂の村」、「子供の村」、「森の村」、「谷の村」、「畑の村」、「丘の村」といった名が与えられているが、明確に区画分けされているわけではなく、それぞれが有機的に繋がりあって茅ヶ崎里山公園を形作っているという印象だ。

30haを超える面積は、広大な公園だと言っていい。園内の表情は変化に富み、端正に整備された公園の人工的な美しさから里山風景の長閑で素朴な美しさまで、存分に楽しむことができる。「山頂の村」から「子供の村」にかけての公園南東部のエリアは端正に整備され、子ども連れでピクニック感覚で訪れるのに適したところだ。自然豊かな行楽地としての役割を担っているのだろう。里山の自然を保全して整備された中央部から北側のエリアは、その長閑で郷愁を誘うような風景が魅力的で、のんびりと園路を辿れば里山散策の醍醐味を味わうことができる。園内の一部には一般路が抜けているところもあるが、昔ながらの尾根道の風景を残した細道で、里山散策の好きな人には魅力のひとつだと言えるだろう。端正な公園施設を造って整備されたエリアと、里山の自然を残して整備を施したエリア、どちらもそれぞれに魅力的だ。目的や楽しみ方に応じて利用するのがお勧めだろう。

茅ヶ崎里山公園には「茅ヶ崎里山公園倶楽部」という組織が存在し、園内に設けられた田圃や畑、雑木林での活動を通してさまざまな里山体験を行っているという。田植えや稲刈りなどの米作りや畑での種蒔きや収穫、あるいは雑木林での間伐や炭焼きなど、里山の自然の中での体験は町の中に暮らす人たちにとって魅力的なものだろう。そうした活動が公園の保全にも役立っていることは言うまでもない。興味のある人は入会してみるといい。
山頂の村
公園の南端中央部は「山頂の村」と名付けられたエリアだ。「山頂」という名が示すように、公園内では最も高所に当たるところで、広々とした開放感が魅力のエリアとなっている。場所によっては北に視界が開け、公園のほぼ全貌を俯瞰することができる。緑濃い里山風景が眼下に広がり、その向こうには小出川河畔の田園風景が横たわる。爽快な眺めだ。

「湘南の丘」と名付けられた丘に登れば、さらに視点が高くなり、周囲の眺望が広がる。ベンチに腰を降ろし、丘を吹き渡る風に吹かれながら眺望を楽しむのは、なかなか素敵なひとときだ。

「山頂の村」のエリアは“草はらの丘”として端正に整備され、その中を園路が緩やかな曲線を描いて延びる。随所に植栽が施され、ベンチも設けられている。人工的に造られた風景としての美しさがあり、その風景が里山風景を借景にしてさらに魅力を増している。園路は広く、舗装されており、車椅子やベビーカーでも利用に不便がない。

「山頂の村」の中央部にはパークセンターも置かれ、東西の端部にそれぞれ駐車場が設けられていることもあって、このエリアが茅ヶ崎里山公園のメインエントランスとしての役割を担っているようだ。一角にはガーデンデザイナーの白井温紀氏がデザインしたという「記念ガーデン」も設けられている。興味のある人は立ち寄ってみるといい。
茅ヶ崎里山公園

茅ヶ崎里山公園

茅ヶ崎里山公園

茅ヶ崎里山公園
子供の村
「山頂の村」から北東側に少し降りたところが「子供の村」のエリアだ。その名から容易に推測できることだが、「子供の村」は子どもたちのための遊び場としての役割を担うエリアだ。各種の遊具を設置した区画と草はらの広場から構成されており、子どもたちを連れてピクニックに訪れるには最適なところだ。

遊具を設置した区画は「風の谷」の名があり、遊具のそれぞれにも「風のすべり台」や「谷のすべり台」、「風のとりで」、「雲のトランポリン」といった愛称が付けられている。「風のすべり台」はパークセンター前の広場脇に乗り場があり、木々の間を縫うように緩やかに曲がりながら斜面を下って行く。距離も長く、なかなか楽しそうだ。「谷のすべり台」は斜面の裾部分に設置されており、距離も短く、こちらは幼児向けの滑り台なのだろう。「風のとりで」は幼児向けの複合遊具だ。「雲のトランポリン」は空気圧で膨らんだ半球状のドームで、その上で跳ねて遊ぶ、いわゆる“ふわふわドーム”だ。小さな子どもたちから小学生くらいの子どもたちまで、特に人気を集めているようだ。遊具の周辺には適度に木々が植栽されており、見守る親にとっては木陰が嬉しいだろう。

草はらの広場には「多目的広場」の名があり、さまざまなイベントの会場としても使用されるのだろう。災害時にはヘリポートとしても使われるという。周囲を木々に囲まれて適度な“包まれ感”があり、しかし頭上には大きく空が広がって開放感に富み、魅力的な広場を成している。外縁部には木々が植栽されており、その木陰にシートを敷いてのんびりと過ごせば自然豊かな公園での休日を満喫することができるだろう。

「風の谷」の複合遊具の奥には小さな池があり、そこから階段状になった水路が北側の低地へ降りている。降りたところには「中ノ谷池(なかのやといけ)」と名付けられた池が設けられており、初夏から夏にかけて水遊びを楽しむ子どもたちで賑わうようだ。水路も池も岸辺は自然石を用いて整備され、自然の渓流を思わせる造りになっているのがいい。ちょっとした“川遊び”の疑似体験といったところだろう。もともとこの辺りに小川や池があって、それを公園の水遊び施設として整備したものなのかもしれない。「風の広場」という愛称が付けられているが、周囲から低くなった“谷”の地形で、おそらく昔からの呼び名が“中ノ谷(なかのやと)”だったのではないか。
茅ヶ崎里山公園

茅ヶ崎里山公園

茅ヶ崎里山公園

茅ヶ崎里山公園

茅ヶ崎里山公園

茅ヶ崎里山公園
尾根道と森の村
「山頂の村」のパークセンター裏から北へ尾根道が延びている。車両の通行も可能な一般路だが、道幅は狭く、普段は車両の通行はほとんどない。希に地元の人が軽トラックなどで通り抜けることがあるくらいのようだ。この尾根道の佇まいがいい。昔ながらの里山の尾根道の風情を漂わせている。尾根道を北へ辿って行くと、尾根を越えて東西を繋ぐ道と交差する。東西を繋ぐ道からの視点で言えば“峠”であるわけで、「一寸峠(ひとあしとうげ)」の名がある。なかなか風情のある名だという気がする。一寸峠から東へ下りれば「中ノ谷池」を見下ろす場所に「栗の木広場」という広場が設けられている。西へ降りれば「谷の村」のエリア、「芹沢の池」の岸辺へと降りてゆく。

一寸峠からさらに北へ尾根道を辿って行くと、道の東側にベンチや四阿を設けた広場がある。この辺りが「森の村」のエリアだ。周囲は木々が茂り、東側に少し視界が開けている。尾根上の広場という立地が爽快でありつつ落ち着いた佇まいで、散策中の一休みなどにはよい場所だろう。一角には「梅の小径」も設けられており、早春には梅が楽しめる。

「森の村」のエリアを過ぎてさらに北へ辿ると、東側の谷戸から上ってきた道と合流し、道は広くなり、緩やかに北の低地へと降りてゆく。途中、道の東側に腰掛神社が鎮座している。興味深い名だが、日本武尊が東征の際に腰掛けて休んだという由緒があるそうだ。創立年代はよくわからないものの、古くから芹澤村の鎮守として信仰されてきた神社だという。腰掛神社前を過ぎると視界が開け、その先は「畑の村」のエリアである。
茅ヶ崎里山公園

茅ヶ崎里山公園

茅ヶ崎里山公園

茅ヶ崎里山公園
畑の村と丘の村
茅ヶ崎里山公園の北端部、「山頂の村」から北へ延びる尾根筋が緩やかに小出川河畔の低地へと降りてゆく辺りが「畑の村」と名付けられたエリアだ。一角には北駐車場が設けられており、茅ヶ崎里山公園の北のエントランスの役割を担うエリアでもある。「畑の村」は「農と食により地域活性化を図るゾーン」だそうだ。その拠点として「里の家」と名付けられた施設も設けられており、普段は来園者の休憩所としての役割も担っているようだ。訪れたとき、「里の家」横の畑には麦が実っていた。

「畑の村」の西側は谷戸の地形で、その向こうには別の尾根が北へ降りている。その尾根の北端部が公園の「丘の村」のエリアだ。「畑の村」と「丘の村」との間に横たわる谷戸には水田や畑地が広がり、長閑な風景を見せる。この谷戸の農地は民有地のようだ(2014年5月現在)。その民有地の農地を横切って「畑の村」から「丘の村」とを細道が繋いでいる。この道も一般路だ。この道の佇まいがいい。丘の裾を辿るように坂を下り、農地を横切り、林の中に分け入るように坂を上る。その様子が昔ながらの表情を残して魅力的だ。「丘の村」の坂道には「きつね坂」との名がある。どのような由来でこの名で呼ばれるようになったのか、興味を覚える。「畑の村」から「丘の村」にかけてのエリアは尾根と谷戸とが織り成す美しい里山風景を満喫できるところだ。一部には民有地もあって散策の際には注意が必要だが、里山散策の好きな人にはとても魅力的なエリアだと言っていい。

「きつね坂」を上って小径(これも一般路だ)を南へ上ると「桜の小径」と名付けられた一角がある。ヤマザクラやオオシマザクラ、エドヒガン、マメザクラなど、日本に自生する8種の桜と、神奈川県で作出されたタマナワザクラ(玉縄桜)が植栽されているという。植えられた桜はまだ小さな若木だが、やがて年月を経て大きく育ってゆくのだろう。種々の桜が咲く様子はきっと美しいに違いない。

「桜の小径」のすぐ南側で尾根道は西側から上ってきた道と合流し、南へ辿れば公園南端部、「山頂の村」と西駐車場との間に抜け出る。道の合流点近から東側の谷戸へと小径が降りている。降りてゆけば東西を尾根に挟まれた谷戸、「谷の村」である。
茅ヶ崎里山公園

茅ヶ崎里山公園

茅ヶ崎里山公園

茅ヶ崎里山公園

茅ヶ崎里山公園

茅ヶ崎里山公園
谷の村
公園南側の丘陵地から「畑の村」へと延びる尾根と「丘の村」へと延びる尾根とに挟まれた谷戸地を活用して設けられているのが「谷の村」だ。中央部には「芹沢の池」という溜池があり、その北側には溜池の水を利用して水田や畑地が設けられている。「芹沢の池」の南側、すなわち谷戸の奥には「柳谷池(やなぎやといけ」という小さな池があり、そこから小さな水の流れが「芹沢の池」へと注いでいる。「芹沢の池」の脇には「谷の家」と名付けられた施設がある。里山の農家風に設えられた施設で、来園者の休憩所と里山体験の拠点施設としての役割を担っているそうだ。

「谷の村」もまた里山散策の醍醐味を存分に味わえるところだ。木々の茂った尾根に挟まれて横たわる谷戸地に畑地や水田が開かれ、丘裾を辿って小径が延びる。小径の脇には美しい竹林があったりもする。木々に包まれるように沈む「芹沢の池」の姿もいい。岸辺には水辺の植物が茂り、静かな水面が周囲の緑を映す。「芹沢の池」の岸辺から東側へ、斜面林の中を抜けて坂道が上る。上ってゆけば尾根道の「一寸峠」だ。その道の佇まいもいい。「柳谷池」の、池と言うより小さな湿地のような様子も素敵だ。池の名の「柳谷(やなぎやと)」は、そのままこの谷戸の名なのだろうか。それらが織り成す風景は郷愁に満ちて美しく、木々と水の匂いを感じながらのんびりと歩いていると飽きることがない。

園内に設置されたパネルの記述によれば「谷の村」は「里山保全エリア」であり、「県内でも貴重となった谷戸の生態系と、そこで育まれた伝統的な農文化を継承していくこと」を目指し、茅ヶ崎里山公園倶楽部などとも連携して「伝統的な里山環境を保全・修復する管理」を行っているそうだ。現在の公園内で美しい里山風景を楽しめるのも、そうした地道な活動の積み重ねがあってこそだろう。日本各地の“里山”は、後継者不足などの要因によって荒れてしまうところも少なくない。茅ヶ崎里山公園は“里山文化”の継承に重要な役割を担っていると言えるのだろう。

「谷の村」の谷戸を南側へ、すなわち谷戸の奥へと入り込んでゆけば丘裾の小径は舗装された園路へと姿を変え、坂を上って「山頂の村」へと至る。里山散策を目的に来園した人なら、「山頂の丘」から直接「谷の村」へと降りてゆくのがお勧めだろう。
茅ヶ崎里山公園

茅ヶ崎里山公園

茅ヶ崎里山公園

茅ヶ崎里山公園

茅ヶ崎里山公園

茅ヶ崎里山公園


茅ヶ崎里山公園

茅ヶ崎里山公園

茅ヶ崎里山公園
広大な敷地の中にさまざまな表情を持つ茅ヶ崎里山公園はさまざまな楽しみ方に応えてくれる公園だと言っていい。子どもたちのための遊び場としても充実し、家族連れでピクニックに訪れるのもいい。学校や幼稚園、保育園などの遠足の場所に選ばれることも少なくないようだ。大人のための憩いの場としても充分に魅力的だ。友人同士のグループで、あるいは一人で、里山散策を楽しみに訪れるのもいい。里山散策に訪れたなら、公園からさらに北へ、小出川河岸まで足を延ばしてみるのもお勧めだ。週末休日には各種のイベントも開催されるようだ。そうしたイベントに参加してみるのも楽しいものだろう。文字通り、子どもから大人まで楽しめる、素晴らしい公園である。
参考情報
交通

茅ヶ崎里山公園は鉄道の駅から遠い。JR茅ヶ崎駅北口からの文教大学行きバスや湘南台駅西口からの文教大学行きバスなどを利用しなくてはならない。バス路線などの詳細は茅ヶ崎里山公園公式サイト(「関連する他のウェブサイト」欄のリンク先)を参照されたい。

車で来園する場合は、県道47号線の「茅ヶ崎里山公園入口」交差点を目指せばいい。茅ヶ崎市街方面からは県道404号線を北上、藤沢市街方面からは県道43号線から県道47号線へと辿るのがわかりやすい。海老名市方面からは寒川を経由して県道47号線へ、綾瀬市方面からは県道県道42号線から43号線、404号線と辿って47号線へ至るのが近い。

公園には東駐車場、西駐車場、北駐車場の三ヶ所の駐車場があり、混雑時には臨時駐車場も設けられる。全部で500台近い駐車スペースが用意されている。

東駐車場と西駐車場、臨時駐車場はいずれも公園南側にあり、県道47号線の「茅ヶ崎里山公園入口」交差点から北へ入り込んだところに入口がある。この三ヶ所で400台分近い駐車スペースが確保されており、場所もわかりやすいが、土日祝日は駐車料金が必要だ。

公園北側に設けられた北駐車場は100台ほどの駐車スペースがある。駐車料金は必要ないが、駐車場へ至るルートがわかりにくく、道も狭い。初めて訪れる人、車の運転に自信のない人、大型の車などは南側に設けられた東駐車場や西駐車場をお勧めする。

飲食

公園内にはドリンク類の自動販売機が置かれているのみで、レストランや売店などはない。県道47号線の「茅ヶ崎里山公園入口」交差点の角にコンビニエンスストアがあるが、公園周辺には食事のできる店はない。お弁当持参が必須だ。自然豊かな公園だからピクニック感覚で訪れるのがお勧めだ。

「畑の村」エリアには「里山バーベキュー場」が設けられている。食材と機材を持ち込んでの利用も機材のみのレンタルも可能、すべて予約して手ぶらで訪れて利用することもできるようだ。利用するにはインターネットでの会員登録と予約が必要とのことだ。詳細は茅ヶ崎里山公園公式サイト(「関連する他のウェブサイト」欄のリンク先)を参照されたい。

周辺

茅ヶ崎里山公園の北側には長閑な田園風景が広がっている。足を延ばして散策を楽しむのもいい。公園の北方には小出川という川が流れているが、その河畔には彼岸花が植えられており、初秋には美しい景観を見せてくれる。また小出川の上流側、慶應大学湘南藤沢キャンパスの東側の辺りでは河岸に紫陽花が植栽されている。それぞれの季節に散策に訪れるのもお勧めだろう。
茅ヶ崎里山公園

茅ヶ崎里山公園

茅ヶ崎里山公園

関連する他のウェブサイト

関連する他のコンテンツ


公園散歩
神奈川散歩