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神奈川県伊勢原市の北端部、北側の山を越えれば厚木市という辺りに、彼岸花の群生地として有名な地域がある。「日向(ひなた)」、あるいは「日向路」と呼ばれる地域だが、北側の山間に日向薬師があるために“日向薬師の彼岸花”としてよく知られている。この辺りは丹沢大山国定公園の東端部に当たり、緑濃い山々に囲まれた地域だ。 「日向」は日向薬師参道入口からさらに西方、日向渓谷のある地域を指す字名のようだが、彼岸花群生地は日向薬師参道入口付近の「坊中」から日向川に沿うように、「藤野」、「洗水(あろうず)」地区にかけて広がっており、それらの地域を総称して「日向」、あるいは「日向路」と呼ぶことも多いようだ。山々と田圃や畑地が織りなす里山風景の中に咲き誇る彼岸花はたいへんに美しく、関東でも屈指の彼岸花の名所として知られ、九月下旬の花期には多くの観光客を迎えている。 |
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“日向路の彼岸花”の中心となるのは日向薬師参道入口周辺の地域だ。参道入口近くに「日向薬師」バス停があり、バスの折り返し場になっているのだが、ここが観光客を迎える拠点となっているようで、テントが張られて案内所が設けられており、その横から彼岸花群生地へと入って行ける。群生地は基本的に農地で、観光客は農道や畦道を歩くことになる。農地への立ち入りが出来ないように道脇にはロープが張られ、道は一方通行の措置がとられて“順路”が設定されている。 緑濃い山々に抱かれた彼岸花群生地の風景は実に見事なものだ。水田は山間の日向川沿いのわずかな平地を利用して造られたもので、“棚田”というほどではないが段差を伴って並んでいる。その田圃の畦に彼岸花が群生し、深紅の花を咲かせている。彼岸花の花期、そろそろ田圃では稲刈りも終わり、刈り取られた稲が竿に架けられて田圃に並ぶ。その間に真っ赤な彼岸花が帯を引き、その向こうには緑の山々が重畳する。その上には澄み渡った初秋の青空が広がる。長閑でありつつも、鮮やかな風景だ。 “順路”に沿って歩いて行くと、眼前に広がる風景は次第にその表情を変え、その美しさには飽きることがない。優美な曲線を描く畦に沿って並ぶ彼岸花や土手を埋め尽くすように咲き誇る彼岸花が初秋の日差しを浴びて輝く。高みから俯瞰するように見下ろす風景も美しく、青空を背景に彼岸花を間近に見上げるのもいい。歩いて行くとさまざまにフォトジェニックな風景が目の前に現れ、ついつい何度もカメラを向けてしまう。 バス折り返し場横の“彼岸花群生地への入口”近くでは一方通行の措置がとられていたが、西へ離れると特に制限もないようで、訪れた人たちはそれぞれに美しい風景を求めて散策を楽しんでいる。カメラを構える人の姿も多く、場所を見つけてスケッチを楽しむ人の姿も少なくない。緑濃い風景の中で彼岸花の赤が鮮やかなコントラストを見せる様子は、まさに「彼岸花の名所」の名に恥じない。 |





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東側に位置する洗水(あろうず)地区の彼岸花群生地は“台地”というべき地形で、視界の開けた“おか”の風景の中に水田や畑地が広がり、その中を辿る細い農道や畦道に沿って、あちらこちらに彼岸花が群生し、風景の一部を紅く染める。山々に囲まれた日向薬師参道入口周辺の景観も美しいものだが、洗水地区の広々とした景観もまた違った味わいがあって美しい。西側には山々が少し近いが、他は山々の稜線が遠く、空が広い。吹き渡る初秋の風も爽やかだ。 田圃は稲刈りの終わったところもあるが、まだ稲刈り前のところもある。ちょうど稲刈り作業の真っ最中の田圃もある。田圃に混じって少しばかり蕎麦の畑もある。黄金の稲穂や白い蕎麦の花、初秋の青空、緑の山並み、そして深紅の彼岸花が織りなす風景の色彩のコントラストがたいへんに美しい。小さな溜め池の脇に咲く彼岸花も良い風情だ。段差を伴った田圃の土手を埋め尽くすように群生する彼岸花もあり、圧巻の景観を見せる。その見事さに訪れた人たちも驚嘆の声を上げている。 洗水地区の彼岸花群生地には特に観光の拠点となるような施設はなく、案内所なども置かれていない。“散策路”として指定された道もなく、訪れた人たちは農道や畦道を辿って彼岸花を観賞している。当然のことだが、農地には立ち入らないように注意したい。洗水地区の彼岸花群生地は「神奈川能力開発センター」が近く、彼岸花の花期には「神奈川能力開発センター」の駐車場が観光客用に臨時駐車場として解放されている。車で訪れたときにはこの駐車場を利用すると便利だ。センターから彼岸花群生地へ案内標識が設置されているので迷うこともない。 |
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日向薬師参道入口付近から東の洗水地区まで、彼岸花群生地はかなり広範囲に渡って広がっている。日向薬師参道入口付近だけでも充分に堪能できるが、そこから東へ向かい、藤野地区を経て洗水地区へと歩いている人も少なくないようだ。彼岸花ももちろん美しいものだが、日向路の景観そのものがたいへんに美しい。里山の風景を楽しみながら、のんびりと歩くのがお勧めだ。 |
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彼岸花群生地へは小田急線伊勢原駅北口から「日向薬師」行きのバスを利用するといい。平日で一時間に平均して二便ほど、土曜休日には三便ほどが通っている。 車で訪れる場合には伊勢原市街から県道44号(伊勢原藤沢線)、県道63号(相模原大磯線)などを辿って北上し、日向薬師を目指すのがわかりやすいだろう。東名高速道路厚木ICからなら国道246号を西進して伊勢原市へ向かい、県道44号へ折れて北上するか、あるいは県道603号(上粕屋厚木線)などを辿って西進する方法などがあるが、土地勘の無い人には少しわかりにくいかもしれない。ナビを使用したり、予め地図でしっかりと確認しておいた方がいい。また日向薬師近くでは道が狭く、そこをバスが運行している。くれぐれも慎重な運転をお勧めする。 日向薬師参道入口近くのバス折り返し場の脇に観光客用の駐車場が設けられている他、民間の有料駐車場もいくつかあるが、いずれも駐車台数にはあまり余裕がない。日向薬師裏手にも参拝者用の駐車場が設けられているが、駐車スペースは十台分ほどか。また日向薬師から東に2kmほど離れた「神奈川能力開発センター」の駐車場が彼岸花の花期には観光客用に解放される。これもそれほど規模の大きな駐車場ではない。彼岸花最盛期の休日には混み合うことは必至だ。バスでの来訪がお勧めだ。 日向薬師周辺には飲食店はほとんどない。その意味ではお弁当持参がお勧めだが、彼岸花群生地は基本的に農地なので、のんびりとお弁当を広げる場所を見つけるのは難しいかもしれない。日向川南側の「日陰道」の脇に場所を見つけてお弁当を広げているグループの姿もあったから、工夫次第といったところか。伊勢原駅周辺に戻れば飲食店は多いから、食事は街中に戻ってから楽しむ方がいいかもしれない。 日向薬師参道入口から西へ数百メートル進むと日向渓谷、景勝地として知られ、名水が有名だ。車で来訪したなら、日向から東へ出て、県道64号(伊勢原津久井線)を北上してみるのもいい。すぐに市境を越えて厚木市に入ると七沢、七沢温泉や県立七沢森林公園が近い。 |
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