神奈川県真鶴町、その南部は相模灘に突き出た真鶴半島だ。真鶴半島の北側の入り江には真鶴漁港がある。潮の匂いを感じながらの漁港の散策が楽しい。残暑の九月下旬、真鶴漁港を訪ねた。
真鶴漁港
真鶴漁港
神奈川県の南西端に位置する真鶴町、その南部は相模灘に突き出た真鶴半島だ。真鶴半島の北側の“付け根”部分には、小さな入り江がある。その地形によって天然の良港を成し、古い時代から人々の営みがあった土地柄であるらしい。その入り江が、今は真鶴漁港になっている。築港は1934年(昭和9年)のことという。それまでは自然の地形を活かした素朴な港だったのだろう。この築港によって真鶴漁港は漁業の拠点として、そして名産である「小松石」の積み出し港として、真鶴の発展を支えた。近代になっては遊覧船の発着所も設けられ、観光の拠点としても町を支える漁港である。
真鶴漁港
真鶴漁港
入り江の地形が奏功してか、港湾内はほとんど波も無く穏やかだ。繋がれた漁船がゆったりと日差しを浴びている。岸壁では釣りを楽しむ人の姿や、漁具の手入れをする人の姿をちらほらと見る。そんな様子を見ながらの散策が楽しい。漁港としての規模は決して大きなものではないが、しかし小さすぎるわけでもなく、歴史ある漁港としての佇まいが良い風情を醸している。北側の一角にヨットの停泊する船溜まりが設けられているのは、観光に力を入れている今の真鶴の姿を象徴するものかもしれない。 漁港北側の湾岸部には今は使われなくなったらしい建物が残る場所もあり、鄙びた景観が郷愁を誘うような興趣を漂わせている。
真鶴漁港
真鶴漁港
漁港の北西側には、斜面にひしめくように家々が建ち並んで真鶴の町を成している。漁港側から、その特徴的な景観が一望できる。真鶴に対して“東洋のアマルフィ”という形容を目にすることもあるが、海を見下ろす斜面に処狭しと建ち並ぶ家々の景観は確かにアマルフィ海岸の景観を彷彿とさせるものかもしれない。

町中に歩を進め、斜面に建ち並ぶ家々の間を縫うように延びる路地や石段を辿ってゆく。少しばかりの探検気分も味わえて楽しい。気の向くままに路を辿れば、さまざまに素敵な風景に出会える。町の一角には「真鶴漁港碑」も建っている。1934年(昭和9年)の築港についての経緯などを記した石碑だ。碑は高さ440cmという堂々としたもので、小松石が使われているという。
真鶴漁港
バス通りに設けられたバス停標識の佇まいも素敵だ。バス停標識とは言っても、ただの角材に色を塗ったものだ。上部は赤地にバス停名が記され、下部は白地に「伊豆箱根バス」の名が記されている。その角材の標識に時刻表のパネルが取り付けられている。そのシンプルさが何とも良い風情だ。歩いているとさまざまな発見がある。その小さな発見が散策の醍醐味だ。
真鶴漁港
真鶴漁港
漁港南側の岸壁には、今は遊覧船の発着所や町営のレストラン「魚座(さかなざ)」などがあって観光客の人気を集めている。「魚座」からさらに東へ、すなわち岬方面へと県道を辿ると、貴船神社という神社が鎮座している。889年(寛平元年)の創建と伝えられる古社で、真鶴の人々の信仰を集める神社だ。今は神社まで漁港沿いの道を辿って行けるが、築港前には湾岸の道は無く、舟で入り江を渡ってお参りしたのだそうだ。その慣習が、日本三大船祭りのひとつにも数えられる貴船祭りに受け継がれているのだろう。

漁港の風景を楽しみつつ湾岸を巡り、周辺の町並みへも歩を進めて、その風情を楽しむのがお勧めだろう。古い時代の面影も残る町並みは存分に町歩きの楽しみを味わえる。漁港の町の佇まいに旅情を誘われる、そんな真鶴漁港である。
参考情報
交通
真鶴漁港へはJR東海道本線真鶴駅から「ケープ真鶴」行きの路線バスを利用し、「西の浜」バス停や「魚市場」バス停などで降りれば近い。バスは1時間に2本ほどの頻度で運行している。

東京方面から車で訪れる場合は小田原から国道135号を南下するのが一般的だろう。沼津市方面からなら、国道1号の箱根峠から湯河原パークウェイ、県道75号と辿って湯河原を経由、国道135号を北上するルートか、三島市から函南町を経由して県道11号で熱海で抜け、国道135号を北上するルートがよいだろう。

真鶴駅前で東(海側)へ折れて県道739号を辿り、道なりに進めば真鶴漁港へ行けるが、漁港周辺には観光客用の駐車場がない。真鶴駅周辺の民間駐車場に車を置き、バスや徒歩で漁港へ向かう方法をお勧めする。

飲食
真鶴漁港周辺には新鮮な海の幸を味わえるお店が点在している。好みのお店を選んで食事を楽しむといい。

周辺
漁港周辺から真鶴岬先端部へと移動し、岬からの眺望や海辺の散策を楽しむのもお勧めだ。真鶴漁港北側に位置する岩海岸を訪ねてみるのも楽しい。

国道135号を南へ辿れば湯河原にも近い。温泉街を散策し、日帰り温泉を楽しむのもいい。もちろん宿泊してのんびり過ごすのおお勧めだ。
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