上田電鉄別所線は長野県上田市の中心部と別所温泉とを30分ほどで結ぶ。別所温泉駅はその別所線の別所温泉側のターミナル、別所温泉への鉄道の玄関口だ。九月初旬の早朝、別所温泉駅を訪ねた。
上田電鉄別所線別所温泉駅
長野県上田市の別所温泉は歴史の古い温泉で、日本武尊が東征した際に発見したとの伝承もあるほどだ。その別所温泉と上田市の中心部とを上田電鉄別所線というローカル線が結んでいる。その別所温泉側のターミナルが「別所温泉駅」だ。
上田電鉄別所線別所温泉駅
上田電鉄別所線別所温泉駅
別所温泉駅は1921年(大正10年)に上田温泉電軌川西線の「別所駅」として開業したのが始まりだそうだ。1924年(大正13年)には「信濃別所駅」に改称、さらに1930年(昭和5年)になって「別所温泉駅」と改称されたものという。1939年(昭和14年)には「川西線」が「別所線」に改称、ここでようやく「別所線別所温泉駅」となったわけだ。上田温泉電軌は同じ年に上田電鉄に社名変更、その後1943年(昭和18年)に丸子鉄道と合併して上田丸子電鉄となるが1969年(昭和44年)に丸子線が廃止されて社名は上田交通と変わった。別所線も廃止の方針が示されたようだが地元の存続運動もあって廃止を免れている。現在の別所線を運営しているのは上田交通から分社化された上田電鉄で、行政の補助も受け、存続の努力が続けられている。
上田電鉄別所線別所温泉駅
別所温泉駅はかつては直営駅だったらしいが、現在は別所温泉観光協会に窓口業務が委託され、駅舎の一部は観光案内所を兼ねているという。営業時間内であれば袴姿の女性職員が出迎えてくれるそうだが、今回訪れたのは早朝、残念ながら会うことはできなかった。別所温泉駅は別所温泉の観光拠点のひとつとしての役割も担っているようで、駅を会場にしたさまざまなイベントも開催されているようだ。
上田電鉄別所線別所温泉駅
上田電鉄別所線別所温泉駅
別所温泉駅の駅舎はいつ頃に建てられたものだろう。開業時に建てられたものがそのまま残っているのだろうか。よくわからないが、なかなか洒落た意匠の駅舎だ。淡いブルーグリーンとクリームイエローを基調とした塗装も爽やかな印象だが、この塗装は近年になって施されたものなのだろう。待合所や改札口の様子はいかにも“古き良き時代”の鉄道の駅といった佇まいで、郷愁を誘うような興趣がある。駅舎の横で枝を広げる樹木は桜で、四月下旬になると美しい景色を見せてくれるという。なかなか見事な景観となるらしい。
上田電鉄別所線別所温泉駅
駅舎の様子を見学している間に電車が到着した。折り返し上田駅に向かうのだろう。ドアを開け放したまま、発車の時刻を待っている。しかし早朝の別所温泉駅にほとんど人の姿はなく、高校生らしい男の子がひとり、電車に乗り込んだだけだった。電車の発車を待たずに駅を後にした。駅から温泉街へ戻る途中、高校生らしい女の子とすれ違った。彼女もきっと駅に向かっていたのだろう。
上田電鉄別所線別所温泉駅
別所線は今年(2011年)、開業90周年、すなわち別所温泉駅も開業90周年だ。経営は厳しいという。別所線存続に向けてさまざまな取り組みが続いている。
参考情報
交通
上田電鉄別所線の詳細については公式サイト(「関連する他のウェブサイト」欄のリンク先)を参照されたい。

車で来訪する場合は上田市中心部から南西の方角へ、県道177号などを利用して別所温泉を目指せばいい。別所温泉の温泉街に観光客用駐車場が設けられているので、それを利用するといいだろう。

飲食
あまり多くはないが、別所温泉の温泉街の中に飲食店が点在している。

周辺
別所温泉駅は言うまでもなく別所温泉への鉄道の玄関口だ。別所温泉は歴史の古い温泉で、有名な北向観音をはじめ、さまざまな古刹が点在している。寺社巡りの好きな人なら充分に楽しめるだろう。別所温泉に宿を求めてのんびりと過ごすのがお勧めだ。

別所温泉の東側は塩田平と呼ばれる田園地帯だ。長閑な風景を楽しみながら散策するのもいい。さらに上田市街へと足を延ばせば上田城趾旧北国街道沿いの町並みなど、さまざまな見所が点在している。
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