長野県上田市は2009年に公開されたアニメ映画「サマーウォーズ」の舞台として描かれた。映画には上田市に実在する風景も登場する。信州上田の町に、「サマーウォーズ」に登場する風景を訪ねた。
本頁は、少なくとも一度は「サマーウォーズ」を観たことがあるという方を対象に記している。「サマーウォーズ」のストーリーや設定などについては、すでにご存じの上で本頁を閲覧されているものとして、ここでは詳しい説明を省略する。以下、本頁には「サマーウォーズ」のストーリーなどに言及した記述があるため、「サマーウォーズ」をまだ観ていないという方は注意されたい。“「サマーウォーズ」を観てみたいと思ってはいるのだが、機会がなくてまだ観ていない”という方は、本頁の閲覧を「サマーウォーズ」をご覧になった後にされることを強くお勧めする。
信州上田/サマーウォーズの里
「サマーウォーズ」は2009年夏に公開された細田守監督によるアニメ映画で、神木隆之介、桜庭ななみ、富司純子、谷村美月、斎藤歩らが声優を務めた。「サマーウォーズ」は長野県上田市が舞台となっており、劇中には実在の風景が登場する。登場する風景の位置関係には実際と異なるところもあるが、要所になる部分は実際のものにほぼ忠実に描かれており、探し当てるのにそれほど苦労することはない。「サマーウォーズ」に登場した風景のいくつかを巡ってみよう。
信州上田/サマーウォーズの里/上田電鉄別所線
信州上田/サマーウォーズの里/上田電鉄別所線
主人公の小磯健二は高校2年の夏休み、憧れの先輩、篠原夏希に“バイト”に誘われる。行き先は長野県上田市、二人は新幹線に乗り、上田駅に降り立つ。映画には上田駅のホームの風景も登場する。上田駅で典子親子と一緒になった二人はローカル線に乗り換えるのだが、このローカル線のモデルとなったのが上田電鉄別所線だ。

上田電鉄別所線は上田駅から西方の別所温泉までを繋いでいる。映画に登場する電車は「角間温泉」行きとなっているが、実際には「別所温泉」行きである。駅に停車する電車を描いたシーンは短いものだが、その後に乗車中の様子が描かれている。彼らが乗車している車両は特徴的な“丸窓”のついた「まるまどりーむ号」である。車窓の向こうには上田市郊外の田園風景が描かれている。
信州上田/サマーウォーズの里/伊勢山バス停
信州上田/サマーウォーズの里/伊勢山バス停
ローカル線を降りた一行は、由美親子とも同行することになり、皆でバスに乗り換える。「伊勢山」と記されたバス停標識が緑濃い風景と夏空を背景に象徴的に描かれている。

伊勢山バス停は上田市街地から国道144号を北東へ(上田駅から直線距離にして5kmほど)辿ったところに実在する。上田電鉄別所線は上田駅から西方へ向かうわけだから位置関係は実際とは異なっている。劇中に描かれたバス停標識には行先表示に「菅平高原」の文字が見えるが、実際のバス停標識の行先表示にも「菅平高原」が記されている。
信州上田/サマーウォーズの里/上田城跡東虎口櫓門
信州上田/サマーウォーズの里/上田城跡東虎口櫓門
バスを降りたところで今度は奈々親子が合流、一行はバス停から田舎道を辿って陣内家の屋敷へ向かう。陣内家は広大な敷地の屋敷だが、これは伊勢山バス停の近くにある砥石・米山城跡がそのモデルらしい。屋敷に着いた小磯健二は立派な門構えに驚く。この陣内家の門のモデルになったのは、上田城跡公園に復元された東虎口櫓門である。

この後は陣内家でストーリーは進み、やがて健二と陣内家の人々は仮想世界OZでのハッキングAI「ラブマシーン」との戦いに巻き込まれてゆくことになる。
信州上田/サマーウォーズの里/上田藩主居館跡
克彦と由美の長男である了平は上田高校の野球部のピッチャーで、甲子園を目指して地区予選を戦っているという設定だ。劇中に上田高校は登場しないが、上田高校はかつての歴代上田藩主の居館跡に建っており、藩主居館時代の表門は高校の正門として今も使われている。
信州上田/サマーウォーズの里/上田市役所
佳主馬のアバター「キングカズマ」は「ラブマシーン」との戦いに一度は負けてしまう。健二と陣内家の有志は一計を案じ、「ラブマシーン」との“合戦”を挑む。うまく「ラブマシーン」を閉じ込めることに成功し、最後に頼彦、邦彦、克彦の三人による“水攻め”を行うのだが、この時、克彦が車を停めて携帯電話を操作する場面の背景に描かれているのが上田市役所である。

この他、侘助が栄が亡くなったことを知って車をUターンさせる場面に描かれているのは、上田市街の海野町通りの商店街である。劇中にも登場する「上田わっしょい」は上田駅北側の市街地中心部、松尾町通り、原町通り、海野町通りなどを会場に開催されるそうである。
信州上田/サマーウォーズの里
劇中、第一次上田合戦や第二次上田合戦など、陣内家の“御先祖”の武勇が語られるシーンが登場する。陣内家の“御先祖”は武田家の家臣だったそうだ。それらの内容から推測すれば、陣内家の“御先祖”のモデルは真田氏なのだろう。陣内家屋敷に飾られた甲冑も真田昌幸の甲冑をモデルにしたもののようだ。神木隆之介や桜庭ななみらは上田城跡公園内にある真田神社に参拝し、映画のヒットを祈願したそうである。「サマーウォーズ」のファンなら上田城と真田氏の歴史についても知っておきたい。
参考情報
「サマーウォーズ」に登場する風景を訪ねてみたいと思っている人は上田観光コンベンション協会による特設サイト(「関連する他のウェブサイト」欄のリンク先)を参照しておくことをお勧めする。当該サイトに「ロケ地マップ」が用意されているので参考にするとよい。

交通
上田市へは長野新幹線やしなの鉄道の上田駅を利用するのが便利だ。上田城趾、市役所などは上田駅を拠点に徒歩でも巡ることのできる範囲だが、伊勢山バス停は少し離れており、徒歩では無理がある。映画に倣ってバスを利用して訪ねてみるのも一興だろう。

車で訪れる際には上信越自動車道を利用するのがわかりやすい。上田菅平ICで降りて国道144号を西進すれば上田市街に入って行ける。伊勢山バス停は上田菅平ICから国道144号を東へ、すなわち市街地から離れる方向へと少し辿ったところにある。市街地へ入る前に立ち寄っておいてもよいだろう。駐車場は上田駅周辺を中心に点在しているので利用するとよい。

飲食
駅北側の市街地中心部には飲食店が多いが、駅から離れるに従って飲食店も少なくなるようだ。食事は駅周辺でお店を探すのがよいかもしれない。

陽気の良い季節であれば、上田城跡公園でアウトドアランチを楽しむのも悪くない。駅周辺でテイクアウトのものを買っておこう。

周辺
言うまでもないことだが、上田市街は上田城の城下町で、江戸時代には北國街道の宿場として栄えた町だ。上田城跡をはじめ、市内にはそうした歴史を偲ばせる風景が数多く残っている。「サマーウォーズ」に登場する風景だけでなく、舞台となった町の歴史を訪ねて散策するのお勧めだ。上田電鉄に乗って別所温泉を訪ねてみるのもよいものだろう。
長野散歩