佳景探訪
山吹の里歴史公園
埼玉県越生町の中心部近く、越辺川の辺に「山吹の里歴史公園」という公園がある。ヤマブキの名所であり、室町時代の武将、太田道灌縁の地でもある。ヤマブキが見頃の四月半ば、「山吹の里歴史公園」を訪ねた。



山吹の里歴史公園

山吹の里歴史公園

山吹の里歴史公園

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山吹の里歴史公園

山吹の里歴史公園

山吹の里歴史公園

山吹の里歴史公園

山吹の里歴史公園
埼玉県越生町は、室町末期の武将、太田道灌の縁の地だ。越生町西部の「龍ケ谷」は道灌誕生之地だそうである。道灌は最初に江戸城を築いた武将として知られ、また歌道に精通し、歌人としても知られている。

その歌人としての太田道灌について、有名な伝承がある。ある時、鷹狩りの途中で太田道灌はにわか雨に遭う。蓑を借りようと道灌は一軒の農家に立ち寄るのだが、応対した娘は蓑の代わりに一枝の山吹を差し出すのである。蓑を貸してくれというのに花を差し出すとは、と、道灌は立腹して立ち去るが、後にその話を聞いた家臣の一人が道灌に言う。それは、兼明親王が詠んだ「七重八重花は咲けども山吹の実のひとつだになきぞあやしき(かなしき)」という古歌にかけて、“当家は貧しく悲しいことに蓑(みの)のひとつもございません”ということを言っているのでは、と。それを聞いて道灌は、無教養故に娘に腹を立てた自分を大いに恥じ、歌道を志したのだという。

山吹の里歴史公園は、その伝承に因んだものだ。この辺りは昔からヤマブキが自生し、かつては「山吹」の名で呼ばれた土地で、「山吹」を名乗る一族もあったという。

山吹の里歴史公園

山吹の里歴史公園は越生駅から東方に数百メートル離れた、越辺川左岸に位置している。現在ではすぐ横を県道30号(越生・毛呂山バイパス)が通っており、通りがかりに公園を目にしたことのある人も少なくないだろう。公園は面積1haに満たない小さなもので、バイパスに面して広場が設けられ、その東側は小高い丘になっている。公園の大部分は丘が占め、そのためになおさらこぢんまりとした公園という印象を強くする。その公園内、広場部分から丘へ登る小径脇に3000株ほどのヤマブキが植えられ、その名が示すようにヤマブキの名所として知られる。

バイパスに面した公園入口には「史跡 山吹の里」と記された名標が建てられ、来園者を迎えている。その傍らには「七重八重花は咲けども山吹のみのひとつだになきぞ悲しき」の歌を刻んだ歌碑が建っている。バイパスの歩道からは少し低くなって、公園の広場が設けられている。バイパスが造られるときに路面が高くされたためにこのような形になってしまったのだろう。

広場の中には越辺川支流の小川が流れ、その辺に水車小屋が建っている。水車小屋の背後は丘になっており、木々が茂って緑濃い。丘の緑を背負って建つ水車小屋の景観は風趣に富み、山吹の里歴史公園を象徴する風景と言っていい。その風景を存分に楽しめるように、広場には水車小屋に向かってベンチが置かれている。ベンチに腰を下ろし、のんびりとしたひとときを過ごすのがお勧めだ。

広場の園路脇には随所にヤマブキが植えられている。一重のもの、八重咲きのもの、その数、3000株という。初夏の陽光を浴びて輝くヤマブキの花はたいへんに美しく、周囲の新緑との対比によってさらに色鮮やかに見える。間近からヤマブキの花の一輪一輪を愛でるのも楽しく、ヤマブキの花に包まれるようにして散策を楽しむのもいい。ヤマブキの花は水車小屋や小川の流れとの取り合わせによってさらに雅趣に富んだ風景を織り成す。そうした風景を存分に堪能しておきたい。

水車小屋の背後の丘は、斜面というより“崖”という形容が相応しい様相で迫っている。その“崖”に丘上に登る小径が刻まれている。小径の脇にもヤマブキが咲き、その周囲を新緑が包む。その景観を楽しみながら登れば疲れも軽くなるような気がする。登ってゆけば次第に西に視界が開ける。途中にはそろそろヤマツツジの花も咲いている。

小径を上りきれば丘上に設けられた広場だ。樹林に包まれた広場には四阿が置かれ、シートを敷いてランチタイムを過ごすにも好適なところだ。丘上の広場にはヤマブキの花が咲いていないのが少しばかり残念なところか。広場の西端部からは広く眺望が開け、眼下に越辺川の流れを見下ろし、その向こうには越生駅周辺の越生町中心部が横たわる。その向こうには越生町西部の山々が重畳し、山肌が新緑に輝いている。美しい景色である。山吹の里歴史公園を訪れたときにはぜひとも、この丘上からの眺望を楽しんでおきたい。

山吹の里歴史公園は小さな公園だが、まさにヤマブキの名所として花好きの人なら一度は訪ねておきたい公園と言っていい。ヤマブキの花に特化して、これほどの数のヤマブキを植えた公園というのは他に類例がないのではないか。そしてまた太田道灌の有名なエピソードに因んだ公園として、歴史好きの人にも興味を持てる公園だろう。規模は小さいが、太田道灌を生んだ越生の名所のひとつと言っていい。




越生川河岸

越生川河岸

越生川河岸

越生川河岸

越生川河岸
越生駅から山吹の里歴史公園へ向かうと、ハナミズキの並木が出迎えてくれる。駅から東へ(山吹の里歴史公園方面へ)真っ直ぐに延びる道路がハナミズキ並木になっているのだ。この道路は駅から山吹大橋まで250mほど延びているが、ハナミズキ並木は山吹大橋の袂から越辺川右岸沿いを辿る道へと続き、美しい景観を見せてくれる。おそらく山吹の里歴史公園でヤマブキが見頃となる時期、ハナミズキの花も見頃を迎えているだろう。山吹の里歴史公園を訪ねた際には、散策の足を延ばしてハナミズキ並木の景観を楽しんでおきたい。

山吹大橋周辺の越辺川河岸は散策路として整備されており、川遊びのできる河原や親水広場、自然とのふれあいが楽しめるエリアなど、工夫を凝らした親水公園として造られている。広場の随所に設けられた花壇では春の花が咲き、道路脇のハナミズキ並木との組み合わせが春らしい景観を見せる。越辺川の川面近くまで降りて行けるように整備されている場所もある。水温む季節、春の日差しの中で越辺川の流れも穏やかに見える。

そうした景観を楽しみながら、越辺川の河岸を歩いてみるのがお勧めだ。山吹の里歴史公園を訪れた人たちのほとんどは、公園だけを見て帰ってしまわれるようだが、この越辺川河岸の春景色を楽しまないのはあまりにもったいない。山吹大橋から運動公園近くまで約1km、のんびりと往復してみるといい。穏やかな春散歩が楽しめる。お勧めだ。
参考情報
山吹の里歴史公園は入園料などは必要ない。無料で入園できる。

交通

山吹の里歴史公園は越生駅(JR八高線、東武越生線)から500mほど。徒歩で10分かからない。

山吹の里歴史公園は県道30号(越生・毛呂山バイパス)の沿道に設けられている。県道30号(越生・毛呂山バイパス)を辿ってゆけばいい。遠方から訪れる場合は関越自動車道坂戸西スマートICを利用するといい。ICから8〜9kmといったところだ。

山吹の里歴史公園にも来園者用駐車場が用意されているが、数台分のスペースしかなく、ヤマブキの見頃の頃には朝から午後まで満車状態が続く。運動公園近くに臨時駐車場が設けられるようだが、少しばかり距離がある。越生駅近くに民間駐車場があるので、それを利用するのもいい。

飲食

山吹の里歴史公園のすぐ脇に「山富貴」という和食店がある。ここもヤマブキが見頃の時期には混み合うようだ。県道30号(越生・毛呂山バイパス)沿いには他に飲食店はなく、お店を探すなら越生駅周辺に移動した方がいい。越生駅近くの県道30号(旧道)沿いに飲食店が何軒か建っている。

お弁当持参なら丘上の四阿を利用したり、広場にシートを敷いてランチタイムを過ごすこともできる。山吹の里歴史公園を出て、越辺川の河岸に場所を見つけてシートを広げるのもお勧めだ。

周辺

越生駅から数百メートル西へ辿れば、桜の名所として知られる「さくらの山公園」がある。桜の季節にはぜひ訪ねておきたい。桜の季節でなくても、丘上の「世界無名戦士之墓」からの眺望を特筆に値する。散策の足を延ばしてみるのもお勧めだ。

徒歩では少し距離があるが、越生駅から北西へ、県道30号(旧道)から県道61号へと辿って3kmほど行くと、梅の名所として知られる「越生梅林」だ。梅の季節はもちろんお勧めだが、他の季節でも長閑な田園風景の散策が楽しめる。

山吹の里歴史公園から県道30号(越生・毛呂山バイパス)を北へ向かい、「越生高校(北)」交差点を東へ折れて進めば鳩山町。美しい田園風景が広がっている。「高野倉ふれあい自然公園」を中心に散策を楽しむのがお勧めだ。
山吹の里歴史公園

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