佳景探訪
越生梅林
埼玉県越生町の中央部、越辺川の辺に「越生梅林」がある。「関東三大梅林」のひとつとして名を知られ、早春には大勢の観梅客で賑わう。梅が見頃を迎えた三月下旬、越生梅林を訪ねた。



越生梅林

越生梅林

越生梅林

越生梅林

越生梅林

越生梅林

越生梅林

越生梅林

越生梅林

越生梅林

越生梅林
埼玉県越生町、町の中心部の少し北から県道61号線を西へ辿ってゆくと、越辺川の辺に有名な「越生梅林」がある。「越生梅林」は「関東三大梅林」のひとつにも数えられ、梅の名所として広く知られている。早春になれば大勢の観梅客が訪れてたいへんに賑わう。

「越生梅林」は、その歴史も古い。そもそもは南北朝の時代(1336〜1392年)、九州の太宰府から小杉村太梅(現在の越生町大字小杉、「越生梅林」から越辺川を挟んだ対岸に当たる)に天満宮を分祀する際、梅を植えたのが始まりなのだそうだ。その後、越辺川左岸の現在地が梅の生育に適していたことから梅を多く植え、その実で梅干しを作るようになったらしい。「越生梅林」内に埼玉県によって設けられた解説に、そうしたことが記されている。文化文政期(1804〜1829年)に編纂された「新編武蔵風土記稿」の津久根村の項には「土地梅に宜しく梅の樹を多く植ゆ、実を取って梅干として江戸へ送る。此辺皆同じけれど殊に当村に多しといふ。」と記されているという。

「越生梅林」は越生町堂山、梅園神社向かいの越辺川河岸に位置し、約2haの面積を有する梅園として整備されている。梅園内には白梅約900本、紅梅約100本の、約1000本の梅が植えられているそうだ。その中には約600年前に植えられた古木もあるというから、その歴史の古さが窺える。梅の花の咲く2月中旬から3月下旬にかけて「梅まつり」が開催され、大勢の観梅客を迎えて賑わう。

約2haの梅園内に1000本ほどの梅、梅は園内を埋め尽くすように咲いている。園内のどこにいても目の前には美しい梅が咲いている。「関東三大梅林」のひとつに数えられることにも納得できる、見事な梅林である。その中でも特に梅林としての風情を楽しめるのは東側の梅林だろうか。越辺川の河岸に設けられた梅林には白梅が咲き誇り、設けられた小径を辿れば梅の花に包まれるようにして散策を楽しむことができる。梅林からは越辺川の河原に降りることもでき、河原から見上げるように眺める梅林の風景も良い風情だ。河岸には「名勝 越生梅林」と大きく記した標柱が立てられている。なかなか誇らしげに見えるのは気のせいか。その下ではシートを敷いてお弁当を広げる家族連れの姿も少なくない。

この東側の梅林の中にはミニSLの軌道が設けられており、「梅まつり」の期間中、運行されているようだ。“乗車”するには料金が必要だが子どもたちの人気を集めているようだった。このミニSLは1970年頃までJR八高線を走っていた9600型というSLの1/10模型で、日本工業大学付属東京工業高等学校機械科の実習教材として製作したものを、学校の厚意によって設置されているものという。

梅園中央部には土産物を販売する売店や軽食の可能な店が営業しており、梅やゆずの加工品を販売するコーナーも設けられている。さらに西側にかけては露店も数多く出店し、休憩所を兼ねたテーブルが並べられた一角もある。その横の梅林ではシートを敷いてお弁当を食べながら観梅を楽しむ家族連れの姿がある。その西側、梅林の外に区画を設けて「屋台村」も置かれている。人混みの喧噪を感じるのも仕方のないところだが、その一方で「お祭り」気分で気持ちが高揚するから不思議だ。

露店が並ぶ一角には「展望台」も設けられている。数メートルの高さはあるだろうか。それほど周囲の眺望が開けるわけではないが、「越生梅林」の景観を俯瞰することができて楽しい。この展望台からの景観もぜひ楽しんでおきたい。

梅園中央部には広場が設けられ、その脇には神社の神楽殿を思わせるような舞台が設置されている。「梅まつり」の期間中の土日にはさまざまなイベントが行われるようだ。和太鼓やお囃子の演奏、獅子舞、野点、さらにはモデル撮影会など、行われるイベントは多様だが、訪れた日にはちょうど武蔵越生高校の生徒による和太鼓の演舞が行われていた。取り囲む観客に混じってしばらく見せてもらったのだが、なかなか立派な演舞で見応えのあるものだった。高校生たちの雄壮な和太鼓演舞に、観客から大きな拍手が送られていたのは言うまでもない。

今が盛りと咲き誇る1000本の梅、梅園の中には大勢の観梅客が行き交い、通路脇には露店が並び、シートを広げて観梅を楽しみながらお弁当を食べる家族連れの姿があり、さまざまなイベントも開催され、「越生梅林 梅まつり」はまさに「お祭り」として賑わっている。そうした賑わいを楽しみつつ、その中で梅の花を愛でる。それが「梅まつり」期間中の「越生梅林」の楽しみ方だろう。




梅園神社

梅園神社

梅園神社
越辺川の右岸、「越生梅林」と向かい合うように梅園神社が鎮座している。「越生梅林」誕生のきっかけとなった神社である。前述したように、南北朝時代(1336〜1392年)に九州の太宰府から分祀して創建された神社だという。元々は小杉天神という名だったらしい(小杉村の天神社だったからだろう)が、1907年(明治40年)に堂山の近戸権現、上谷の三島社を合祀した際に梅園神社と改称されたものという。現在の梅園神社には菅原道真公の他、素戔嗚尊と白山姫命も祀られている。

社殿は鬱蒼と木々の茂った山を背負って建っている。要するに“鎮守の森”である。この梅園神社の社叢にはスダジイが繁茂しているそうで、「梅園神社スダジイ林」として埼玉県指定天然記念物になっている。スダジイ林は本来はもっと南の温暖な地域に発達する林相で、この地方に見られるのは珍しい。梅園神社社叢にスダジイ林が残っているのは、かつてこの辺りがスダジイ林に覆われていたことを示すものらしく、学術的に貴重なものなのだそうだ。

社殿はそれほど大きなものではないが、村の鎮守らしい素朴さの中に古社としての風格を漂わせている。境内には、今は梅の木はほとんどない。神社前からは越辺川を隔てて「越生梅林」がよく見える。川一つ隔てているだけだが、梅園神社に立ち寄る観梅客の姿はほとんどない。今は静かに川越しに「越生梅林」を見守る梅園神社だ。「越生梅林」誕生の地への敬意を表し、参拝してゆこう。




越生梅林周辺

越生梅林周辺

越生梅林周辺

越生梅林周辺

越生梅林周辺
梅園神社の前から県道61号線を西へ辿れば、道沿いには里山の風景が広がる。この辺りは小杉地区、梅林も多く、緑の山々を背にした白梅の林が見せる景観が美しい。この道は昔からの街道筋なのだろう。道脇には古そうな建物があり、馬頭観音も祀られている。

梅園神社前から県道61号線を200メートルほど行くと、越辺川河岸方向へと細道が逸れている。その道を辿れば、広く整備された県道よりさらに長閑な風景を楽しむことができる。道の両脇は越辺川右岸の平地に見渡す限りの梅林が広がる。山々が少し遠ざかって開放感があり、その中で見る梅林は何とも晴れやかな印象だ。

梅林は基本的に実を採るためのものだと思うが、散策を楽しむ観光客を意識してか、道脇には枝垂れの梅なども植えられている。優美な姿の枝垂れ梅を早春の青空を背景に見上げる景観がたいへんに美しい。

梅林の眺めを楽しみながら道を辿ってゆくと、県道61号線との分かれ道から300メートルほどで梅園小学校の脇に至る。梅園小学校の東側を北へ辿れば越辺川を渡り、越辺川左岸の道を東へ向かえば「越生梅林」へと戻ることもできる。梅園小学校の南側をそのまま西へ進めば、やがて県道61号線に戻るが、さらに西へと散策の足を延ばしてみるのも楽しい。梅林に彩られた早春の里山風景を存分に堪能することができる。




越生梅林周辺

越生梅林周辺

越生梅林周辺

越生梅林周辺

越生梅林周辺

越生梅林周辺
「越生梅林」の北側、県道61号線から逸れて梅園橋を渡ってすぐに北側へ逸れる道がある。「梅まつり」の期間中は周辺に駐車場が設けられ、観梅客の車が行き交う道路だが、この道路沿いにも梅林が点在し、越生町の山々を背に美しい景観を見せてくれる。この道路を200メートルほど行くと十字路があり、北へ折れると越辺川の小さな支流脇に至る。

その川の左岸を細道が辿っている。川の右岸側には梅の木が並び、川辺を彩っている。左岸側はなだらかな斜面で、その裾に農家が点在し、畑地に植えられた梅の花が咲き誇っている。長閑で美しい、早春の里山風景だ。

川沿いの道を進んでゆくと、やがて少し広い道路へ丁字路で合流する。「越生梅林」の北側から北へ延びてゆく道路で、この辺りは越生町の上谷地区の東部に当たる。上谷地区はほとんどを山地が占めるところだ。谷戸の奥へ進むように道を北へ辿れば、道沿いには郷愁を誘われるような里山の風景が広がる。

道沿いには美しい梅林もあるが、規模の大きな梅林はないようだ。小さな梅林の脇に、お地蔵様と石灯籠が建っていた。傍らに「大日六地蔵」と記した名標が建てられているが、詳しい由来などはわからない。この道は辿ってゆくと町境を越えてときがわ町に至っており、昔から人々の往来のあった道なのだろう。石灯籠は常夜灯だったのだろうか。おそらく本来の場所から現在地に集められたものだと思うが、満開の梅林を背に見る姿が何とも興趣に富んでいる。

道を歩きながら西側に目を向ければ、川向こうの丘裾にも梅の花が咲いている。小さな梅林があるのだろう。そろそろ傾きかけた日差しに陰った山を背景に、白梅の花が日の光を浴びて輝いている。木立や竹林の頂も日差しに輝き、その景観が一幅の絵画のように美しい。辺り一面を覆い尽くすように咲き誇る梅林の絢爛な美しさももちろん素晴らしいものだが、里山の風景の中にぽつりと咲く梅にも閑寂な風趣が感じられて心惹かれる。そのような風景を探して早春の里山を歩くのも楽しいひとときだ。




越生梅林

越生梅林

越生梅林

越生梅林
早春の越生町、「越生梅林」とその周辺を歩けばたいへんに充実した観梅散歩を楽しむことができる。「関東三大梅林」のひとつと謳われ、1000本の梅が咲く「越生梅林」はその評判に恥じない見事さだ。越辺川対岸の小杉地区の梅林も素晴らしいものだ。上谷地区へと足を延ばせば、梅林は少なくなるが長閑な里山風景が味わい深い。

「梅まつり」開催中の「越生梅林」はとにかく観梅客が多く、その人の多さに少しばかり喧噪感を感じたりもするが、それもまたひとつの“季節の風情”として、「お祭り」の賑わいそのものを楽しめばよいのだろう。

“梅の咲く風景”を静かに楽しみたい人なら、ぜひ「越生梅林」の周辺へと足を延ばしてみるべきだ。小杉地区の梅林や上谷地区の里山風景の美しさは、そうした人たちの期待に充分に応えてくれるだろう。

「越生梅林」の中心に、この地域には約25000本の梅が栽培されているという。早春の越生町、「越生梅林」とその周辺を含めて、まさに観梅の名所である。
参考情報
越生梅林は「自然環境保全協力金」とのことで入園料が必要だ。料金や開園時間、ミニSLの運行スケジュールなど、詳細は公式サイト(「関連する他のウェブサイト」欄のリンク先)を参照されたい。

交通

電車で訪れる場合はJR八高線、あるいは東武越生線を利用して越生駅で下車、越生駅から梅林行きのバスを利用すればよい。「梅まつり」開催期間中は臨時バスも運行されるようだ。

車で訪れる場合は関越自動車道の鶴ヶ島ICや圏央道の圏央鶴ヶ島ICを利用するのがわかりやすいだろう。ICを降りたら国道417号線から県道114号線へと辿って西進、JR八高線の線路を越えたら県道30号線を北上すればいい。飯能市や入間市方面から県道30号線を北上してもいいし、小川町や寄居町方面から向かう場合は県道30号線を南下すればいい。「梅まつり」開催期間中は梅林に近づくと要所に方向を指し示す案内看板が立てられているので迷うことはない。

梅林の周辺に町が準備する駐車場と民間の駐車場とが複数点在し、 駐車台数も多いが、「梅まつり」開催中の週末などには来場者がたいへんに多く、周辺の道路が混み合うようだ。余裕を持って出かけた方がいい。駐車料金はすべての駐車場で同じ(2013年に訪れたときは一日400円だった)のようだった。申し合わせがあって統一されているのだろう。

飲食

梅林の中にはさまざまな露店が軒を並べ、他にもうどんやそばなどを販売する店舗があるので、簡単に食事を済ませることは可能だ。梅林の周辺にも蕎麦屋などの飲食店が点在しているから梅林の外でお店を探してもいい。

梅林の中にはシートを敷いてお弁当を広げることのできる一角もある。お弁当持参で訪れるのもお薦めだ。

周辺

越生梅林の周辺は美しい里山風景の広がるところだ。少し足を延ばして里山散歩を楽しむのもお勧めだ。

越生梅林からさらに越辺川の上流部へ、さらにその支流の上流部へと辿れば「あじさい山公園」や「黒川三滝」などの景勝地がある。車で訪れた際には訪ねてみてもいい。

越生町中心部へと戻れば、町役場の裏手に「さくらの山公園」がある。桜の時期に訪ねてみたい。越生駅の東には「山吹の里歴史公園」がある。小さな公園だが、その名のようにヤマブキが美しい公園だ。こちらは桜が終わった新緑の頃がお勧めだ。

越生町中心部から北東へと足を延ばせば鳩山町の西端部、長閑な田園風景の広がるところだ。「高野倉ふれあい自然公園」を中心に散策を楽しむのもお勧めだ。
越生梅林

越生梅林

越生梅林

関連する他のウェブサイト

関連する他のコンテンツ

田園散歩
梅散歩
埼玉散歩