佳景探訪
高野倉ふれあい自然公園
埼玉県鳩山町の西端部、高野倉地区に「高野倉ふれあい自然公園」が設けられている。小さな公園だが、古き佳き里山風景が残されている。梅雨の晴れ間の六月半ば、高野倉ふれあい自然公園を訪ねた。



高野倉ふれあい自然公園

高野倉ふれあい自然公園

高野倉ふれあい自然公園

高野倉ふれあい自然公園

高野倉ふれあい自然公園

高野倉ふれあい自然公園

高野倉ふれあい自然公園

高野倉ふれあい自然公園

高野倉ふれあい自然公園
埼玉県鳩山町の西端部に高野倉という地区がある。北西部はときがわ町に、南西部は越生町に接する、まさに鳩山町の西の端だ。高野倉地区は長閑な田園風景の広がるところで、その一角に「高野倉ふれあい自然公園」と名付けられた公園が設けられている。

「高野倉ふれあい自然公園」は丘陵の一部をそのまま残して公園としたもので、古くからの里山風景を昔のままに見ることができる。「公園」とは言っても住宅地の中に設けられた都市公園とはまったく性格が異なり、芝生の広場も子どもたちのための遊具類もいっさいない。推測だが、かつての所有者から町が買い取り、誰でも利用可能な「公園」として整備、開放しているものではないか。

公園は高野倉北東部の丘陵地の一部で、南側は百地蔵通り(町道52号線)に面している。園内には大師堂跡や百地蔵、小さな谷津田などがあり、現地に設置された案内図には八幡神社や高野倉地区集落センター、さらに北側の丘陵地の一部も記されているが、どこまでが公園の範囲なのかも判然としない。

公園内に残された谷津田は小規模なもので、少しばかり可愛らしさも感じる佇まいが素敵だ。両脇には木々の茂った丘陵が迫り、そこに小さな谷筋が延びる。田圃は今も耕作が続けられているのか、いないのか。六月に訪れたときにも田植えが行われてはいなかったが、荒れ果てた印象はなかったから、耕作が行われないとしても最低限の整備は施されているのだろう。地形を活かして造られた谷津田の様相や、端正に木々が刈り込まれた丘裾の景観が美しい。

“谷津(やつ)”とは丘陵と丘陵とに挟まれて細長く伸びる低地(谷筋)のことで、多摩・武蔵野から相模の辺りでは“谷戸(やと)”と呼ぶことが多い。関東で“やと”、あるいは“やつ”、“やつし”と呼ばれ、“谷戸”、“谷津”、“谷”の字が充てられる地形はすべて同じものである。その谷津、あるいは谷戸に設けられた田圃のことを“谷津田”、あるいは“谷戸田”と呼ぶのである。

そもそも高野倉地区そのものが“谷津”の地形だと言ってもいい。高野倉地区の南側と北側、西側は丘陵地で、その間に東西に細長く鳩川に沿った低地が延びているのである。高野倉地区に限らず、鳩山町にはこうした地形が数多く存在する。

園内の谷津田の南側の丘には「お堂山」の名があるらしい。阿弥陀堂や百地蔵・百観音、大師堂跡、八十八ヶ所石塔などが点在し、古くは信仰の地であったことを窺わせる。南側を通る町道52号線に「百地蔵通り」の名があるのも、この百地蔵に由来するものだろう。

谷津田の北側の丘裾には八幡神社が鎮座している。木々に包まれるようにして建つ社殿は古社らしい佇まいだ。注目すべきは参道入口脇に立つイチイガシの木だ。このイチイガシは樹高約20m、樹齢ははっきりしないが数百年と言われる。昔から八幡神社の御神木として守られてきた樹木で、「八幡神社のイチイガシ」として鳩山町指定記念物となっている。本来、イチイガシは日本では関東以西の太平洋岸、四国、九州に広く分布する常緑樹で、埼玉県での天然分布は発見されていないという。イチイガシは神社に植えられることの多い樹木だから、このイチイガシもかつて何らかの理由でここに植栽されたものだろうという。そうした意味でも貴重なものなのだ。

八幡神社の横を、北側の丘陵に上ってゆく小径がある。樹林の中を辿ってゆけばやがて尾根道へと至る。木漏れ日を浴びながらの散策は楽しい。訪れたときには足を延ばしてみるといい。


高野倉

高野倉

高野倉

高野倉

高野倉

高野倉

高野倉
高野倉ふれあい自然公園を訪ねたときには、周辺にも足を延ばして田園散歩を楽しむのがお勧めだ。と言うより、高野倉ふれあい自然公園を含めた高野倉地区の田園風景を楽しむことを目的に訪れるのがお勧めなのだ。公園前の百地蔵通りから鳩川の河岸を辿り、高野倉地区を一巡りすれば、その美しい田園風景を堪能することができる。

高野倉地区は南北を丘陵に挟まれ、その間に低地が東西に延びる。中央部には鳩川が流れ、その河畔に水田が横たわる。6月半ば、水田には植えられたばかりの苗が風に揺れている。水を湛えた水田には丘陵の稜線が映り込む。梅雨の晴れ間の青空の下、緑の田圃と丘陵とが織り成す風景が長閑で美しい。水田の間を延びる農道の様子も良い風情だ。百地蔵通りに設けられたガードレールが緑濃い風景の中に白いラインを描くのも良いアクセントになって興趣のあるものだ。そんな風景を眺めながらの田園散歩は日常の慌ただしさをすっかり忘れさせてくれる。

鳩川は荒川水系の一級河川で、鳩山町の中央部を貫くように流れ、鳩山町南東部で越辺川に注ぐ。その鳩川の源流域が高野倉で、高野倉地区の西側には「一級河川鳩川起点」を示す標柱が立っている。鳩川の河岸に沿ってのんびりと歩いてみるのもお勧めだ。

南北の丘陵の裾には家々が点在する。何軒かの家が集まって集落を成しているところもある。緑濃い丘陵や水田と家々とが織り成す風景も風趣に富んでいる。農道脇に無造作にトラクターが置かれたままになっていたり、小さな社が祀られていたり、そんな光景も素敵だ。

集落近くの道を歩いていると、地元の方と出会い、お話をさせていただく機会があった。土地のお話などを聞かせていただき、ひとしきり世間話に花を咲かせた。「何も無いところでしょう」とおっしゃるので、「いやいや、美しいところですね」と返すと、嬉しそうに笑ってくださった。このような農村風景の中に暮らしている方々は、よく「何も無いところ」とおっしゃるのだが、普段町中に暮らす立場では、これほどにも緑濃く美しい風景があるではないか、と思う。それは何とも贅沢なことなのだと、こうしてその中に身を置いてみると改めて実感する。

そうした田園風景の美しさは、人の営みと共にある自然の美しさだ。耕作が繰り返される水田の風景や、丘を背負って建つ農家の風景や、土地と共にある暮らしの風景こそが、こうした田園風景の美しさだ。そんな田園風景の美しさを堪能できる、高野倉である。
参考情報
高野倉ふれ合い自然公園内には特にこれといった施設は設けられていないが、トイレは設置されている。

交通

高野倉ふれ合い自然公園は鉄道の駅からは少しばかり距離がある。最寄り駅はJR八高線明覚駅だが、明覚駅から高野倉ふれ合い自然公園まで距離は約2.5km、歩けば40分ほどかかるだろう。

高野倉ふれ合い自然公園には百地蔵通り(町道52号線)から少し入り込んだところに来園者用の駐車場が用意されており、10台ほどが駐車可能だ。訪れる人も少なく、駐車場が満車で困ることもほとんどないと思われる。

車で訪れる場合、南からなら埼玉県道30号飯能寄居線(越生・毛呂山バイパス)の「越生高校(北)」交差点を東へ右折、2kmほど進んで百地蔵通り(町道52号線)へ左折、さらに1.4kmほど辿れば着く。北からならときがわ町の中心部に近い「ひと市」交差点から南へ、百地蔵通り(町道52号線)を経て2kmほどだ。

遠方から車で訪れる場合は関越自動車道坂戸西スマートICから鳩山町中心部を経て、西進するのがわかりやすい。

飲食

高野倉ふれ合い自然公園周辺は長閑な田園地帯で、飲食店などはいっさい無い。飲食店を探すなら越生町やときがわ町へ移動し、埼玉県道30号飯能寄居線沿道や埼玉県道172号大野東松山線沿道に点在するお店を探すのが賢明だ。

高野倉ふれ合い自然公園周辺でお昼時を過ごすならお弁当持参もお勧めだ。公園内に場所を見つけ、長閑な田園風景を眺めながらのランチタイムも楽しい。

周辺

高野倉ふれ合い自然公園から百地蔵通り(町道52号線)を経て北へ2kmほど辿れば、ときがわ町の中心部だ。都幾川沿いの遊歩道などを歩いてみるのもいい。六月なら「ときがわ花菖蒲園」の花菖蒲をぜひ見ておきたい。

高野倉ふれ合い自然公園から南へ5kmほど辿れば越生町の中心部だ。早春なら「越生梅林」、春には「さくらの山公園」や「山吹の里歴史公園」など、見どころも多い。
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