佳景探訪
六月の向島百花園
東京都墨田区の「向島百花園」は、佐原鞠塢によって1800年代初期に造られた庭園だ。秋の萩の見事さがよく知られるが、六月には紫陽花や花菖蒲が美しい。梅雨の晴れ間の六月初旬、向島百花園を訪ねた。



六月の向島百花園

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六月の向島百花園六月の向島百花園

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六月の向島百花園
東京都墨田区東向島の「向島百花園」は、1800年代の初期、いわゆる「文化文政期」に、骨董商を営んでいた佐原鞠塢(さはらきくう)という人物によって造園されたものだ。江戸の庶民文化が花開いた「文化文政期」、江戸で活動する文人墨客の協力を得て造られたという庭園は、これもまた時代を象徴するものかもしれない。そもそもは梅園として始まったということだが、やがてさまざまな草木が植えられ、四季折々に花を愛でることのできる庭園となっていったらしい。現在は東京都立の庭園で、江戸の町民文化を感じさせる庭園美が愛され、四季を通じて来園する人が絶えない。

四季折々の花を愉しむことのできる「向島百花園」、六月になれば花菖蒲や紫陽花が風情ある景観を見せる。花菖蒲も紫陽花も、特に「花菖蒲園」や「紫陽花園」のような場所が設けられているわけではない。それらは園内の随所に植えられ、あるいは鉢植えが展示され、風趣に富んだ庭園の景観に溶け込むように色彩を与えている。

花菖蒲は入口から入ってすぐの、四阿などを設けた広場に鉢植えで展示されている。数本の花菖蒲が咲く鉢は、それほど多くが展示されているわけではなく、決して他と数を競うものではない。しかし、それでいい。それらの鉢植えは向島百花園の情趣に富んだ景観に似合って、よい味わいがある。花菖蒲の植えられた鉢は外側を竹で包まれており、景観の情趣を壊さないように工夫されているのも嬉しい。

花菖蒲は園内東側の池の岸辺にも小さな菖蒲田を設けて植えられている。こちらも数はそれほど多くはないが、鉢植えとは違って、野趣を感じさせる姿が魅力だ。

紫陽花は園内随所でその姿を見つけることができる。紫陽花も決して数は多くないが、緑濃い梅雨時の園内に淡い色彩を与えて、よい風情を醸している。一般的なアジサイやガクアジサイの姿もあるが、やはり見どころは「スミダノハナビ」だ。「スミダノハナビ」は品種改良によって誕生したアジサイの園芸品種で、花の形が花火を連想させることから、その名が与えられたものだ。それほど古い品種ではないが、特徴的な花の形とネーミングの妙によって人気のある品種のようだ。向島百花園があるのは東京都墨田区、やはり園内に「スミダノハナビ」は欠かせない。

「スミダノハナビ」は池の脇などの園路沿いで見ることができる。これも数は控えめだが、淡い色彩の花が庭園美に溶け込んで味わい深い。花そのものを愛でるのもいいし、「スミダノハナビ」の咲く庭園の美しさを楽しむのもお勧めだ。

さまざまな草木が植えられた向島百花園だから、もちろん花菖蒲や紫陽花の他にも、この季節ならではの花を園内に見つけることができる。ホタルブクロはもちろんだが、クガイソウも咲き始めている。見上げれば梅雨の晴れ間の空を背景にザクロの赤い花が鮮やかだ。当然のことながら萩は咲いていないが、緑濃い「ハギのトンネル」を通り抜けてみるのも一興かもしれない。

向島百花園に植えられた花々は、概して派手さを感じさせない。数も控えめで、必要以上に存在を主張することもない。それらの花々は庭園が見せるそれぞれの季節の表情の一部となって、園内の景観を彩る。あくまで主役は庭園そのものの味わいだ。そして、そのことで花々はさらに美しさを増す。風情に富んだ園内を散策しながら、季節の花々を見つけて愛でる。それが江戸っ子の“粋”なのだろう。
参考情報
本欄の内容は向島百花園関連ページ共通です
向島百花園は入園料が必要だ。ペット連れの入園はできない。その他、休園日や開園時間など、詳細については東京都公園協会のサイト(「関連する他のウェブサイト」欄のリンク先)を参照されたい。

交通

向島百花園へは東武伊勢崎線(東武スカイツリーライン)東向島駅が近い。駅から西へ徒歩で10分足らずだ。また東武伊勢崎線(東武スカイツリーライン)曳舟駅や京成電鉄押上線京成曳舟駅などからも徒歩15分ほどで行ける。

車で来訪する場合は首都高速6号向島線の向島出口で降りると向島百花園に近いが、向島百花園には駐車場が設けられていないため、周辺の民間駐車場を利用しなくてはならない。向島百花園西側の墨堤通り沿いや東側の明治通り沿いに民間駐車場が点在しているようだが規模の小さなものが少なくない。2010年10月に訪れたときには墨堤通り西側、首都高出口のすぐ近くにある駐車場を利用したが、ここは比較的規模の大きな駐車場だった。また向島百花園の南東側、明治通りと国道6号との交差点付近にも大きな駐車場があるようだ。

飲食

向島百花園の中には売店はあるが飲食店などはない。四阿やベンチは設置されているが、広場などはないため、のんびりとお弁当を広げるには不向きだ。食事は他で楽しもう。

向島百花園の近辺にはあまり飲食店がないが、東向島駅や曳舟駅周辺、国道6号沿いなどにさまざまな飲食店が点在している。

周辺

向島百花園の西方、墨堤通り沿いに白髭神社が建っている。寺社巡りの好きな人は立ち寄っておきたい。そのまま北へ向かえば隅田川河岸に東白髭公園がある。公園散策好きの人は訪ねてみるといい。隅田川の河岸をさらに北へ向かえば、東武伊勢崎線(東武スカイツリーライン)鐘ヶ淵駅の駅名の由来となった鐘ヶ淵だ。周辺の町散歩と共に隅田川河岸散策を楽しむのもお勧めだ。

向島百花園から南へ向かうと、料亭の建ち並ぶ向島の街だ。さらに曳舟駅の東方に歩を進めると「京島」という町がある。古い町並みの残るところだ。街歩き趣味の人なら足を延ばして訪ねてみるといい。
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