東京都福生市、多摩川の堤防に沿って桜の並木が続く。五百本ほどの桜が咲き誇り、多摩地域でも有数の桜の名所として知られている。桜が満開の四月上旬、福生の多摩川堤防桜並木を歩いた。
福生/多摩川堤防桜並木
福生の多摩川堤防桜並木は、南は都道7号(睦橋通り)が多摩川を跨ぐ睦橋から、北は都道29号(立川青梅線)が多摩川を跨ぐ永田橋付近までの区間、2.5kmほどの長さで延びる。約五百本の桜があるという。多摩地域でも有数の桜の名所として知られ、毎年の桜の時期には大勢の花見客を集めている。
福生/多摩川堤防桜並木
福生/多摩川堤防桜並木
福生/多摩川堤防桜並木
福生/多摩川堤防桜並木
この桜並木の中でも、特に睦橋からJR五日市線が多摩川を跨ぐ橋梁までの約1kmほどの区間は景観も見事で花見客も多く、メインとなるところだと言っていい。この区間のちょうど中間点辺りには、堤防脇に明神下公園という小公園があるが、この公園は「ふっさ桜まつり」の際にはメイン会場となるところらしい。

並木の桜は大きく、堤防道を歩けば枝を張って咲き誇る桜が目の前に迫ってくるようだ。堤防道はほぼまっすぐに南北に延びているが、明神下公園の辺りでわずかに曲がる。まっすぐに伸びて遠くまで見通せる桜並木も素晴らしい景観だが、緩やかに曲がるところの並木の景観もまたたいへんに美しい。延々と連なる桜並木は南側から見れば順光を照り返して輝き、北側から見れば逆光の中に朧に霞んで空に溶ける。どちらから見ても見事な景観が楽しめる。睦橋の歩道から見下ろすように眺めてみるのもいい。俯瞰するような眺めは並木の下を歩くときとはまた違った美しさを楽しめる。

桜並木の堤防道には花見散歩を楽しむ人たちが大勢行き交っている。桜を背景に記念撮影をする人の姿もある。散策を楽しむ人が行き交う中、堤防道の脇に腰を下ろしてのんびりとお弁当を広げる人たちの姿も多い。明神下公園ではシートを広げて宴を催すグループの姿もある。穏やかな春の日を象徴するような風景だ。
福生/多摩川堤防桜並木
JR五日市線の北側へと歩を進めると多摩川河岸には「多摩川中央公園」が広がる。多摩川の河川敷を利用した公園で、広々とした開放感が魅力だ。公園の脇の道沿いにも桜並木があるが、こちらはまだ桜が小さく、景観としては少々物足りない。南側から続く桜並木のメインは公園から離れて東側の道路に沿って続いている。道路脇ということで風情には欠けるが交通量は多くなく、桜そのものは素晴らしいから散策は楽しい。
福生/多摩川堤防桜並木
福生/多摩川堤防桜並木
福生/多摩川堤防桜並木
JR五日市線から数百メール北側へ進むと多摩橋が多摩川を跨いでいる。上を通るのは都道7号、五日市街道だ。多摩橋の袂、北側には福生市の市営プール、中央体育館、都立福生高校などが建っている。市営プール前には睦橋から2kmである旨の距離標がある。市営プール横には「福生緑地」という小公園があり、この周辺に大きな桜が咲き誇っている。

この付近まで来ると花見散歩の人の姿も少ない。お花見の賑やかさは失せてしまうが、かえって静かな河畔での花見散歩が楽しめる。大きく枝を張った桜の向こうに多摩川の川面が見え隠れし、春の陽光が煌めく。睦橋近くより河岸の様子が素朴で、川が近く感じるのがいい。市営プール前から数百メートル北へ進めば永田橋、福生の多摩川堤防桜並木もそろそろ終わりだ。
明神下公園
明神下公園は1haにも満たない小公園だが、「ふっさ桜まつり」の際にはメイン会場となる公園という。「ふっさ桜まつり」ではお囃子や琴の演奏、野点など、さまざまなイベントが明神下公園で行われるようだ。きっと賑わうことだろう。公園の中にも桜が咲いており、ベニシダレなども見ることができる。トイレが設置されているから花見散歩の際の休憩によいところだろう。
明神下公園
多摩川中央公園
多摩川中央公園は6haを超える面積を有し、広々とした開放感が素晴らしい。園内には小川が流れ、花壇が整備され、バーベキュー場も用意されている。小川を流れる水は玉川上水から取水したものという。脇の方に少しばかり桜並木があるが、“花見”としてはやはり少々物足りないのは否めない。のんびりとした散策には良いところで、花見の賑やかさに疲れたときには、この公園まで足を延ばしてゆったりとランチタイムを楽しむのもいいかもしれない。
多摩川中央公園
福生/多摩川堤防桜並木
福生/多摩川堤防桜並木
福生の多摩川堤防桜並木は多摩川河岸という立地の開放感がよく、広々と視界が広がる中で爽快な気分の散策が楽しめる。もちろん桜並木は素晴らしく、“名所”の名に恥じない。やはり睦橋からJR五日市線橋梁までの区間が見事で、この区間を歩くだけでも充分に堪能することができる。花見散歩を楽しんだ後は多摩川中央公園や睦橋南側に位置する福生南公園でのんびりとお弁当を広げるのがお勧めだろう。

桜の開花期の週末には「ふっさ桜まつり」が開催され、各種イベントが行われて賑わうようだ。お祭り気分の賑やかさが好きな人なら「ふっさ桜まつり」に合わせて訪ねてみるといい。
参考情報
交通
電車で来訪する場合には、JR五日市線熊川駅が最も近く、多摩川堤防まで10分足らずだ。JR青梅線とJR八高線、西武拝島線の拝島駅からも睦橋まで徒歩で20分ほどだろうか。JR青梅線牛浜駅からなら多摩川中央公園付近まで徒歩で15分ほどだ。桜並木は南北に2.5kmほどの長さで延びるから、例えば拝島駅から睦橋へと歩き、そこから北へ桜並木の散策を楽しみ、多摩川中央公園付近から東へ逸れ、牛浜駅から帰路を辿るというのも良い方法かもしれない。

桜並木の周辺にはあまり駐車場はなく、車での来訪はあまりお勧めしない。睦橋の南側に位置する福生南公園の駐車場が花見客も利用できるようだが、残念ながら駐車台数にはあまり余裕がない。

飲食
桜並木の堤防の東側に平行して延びる「田園通り」沿いに飲食店が点在しているが、あまり数は多くない。牛浜駅周辺にはある程度の数で飲食店があるから、駅の近くでお店を探してもいいだろう。

せっかくお花見に出かけたのなら、お弁当を持参して堤防脇にシートを広げ、桜の下でのアウトドアランチを楽しむのがお薦めだ。散策の人が行き交う横では落ち着かないという人なら多摩川中央公園や福生南公園などでランチタイムを楽しむといい。家を出るときにお弁当を用意できなかった人は「田園通り」沿いに点在するコンビニエンスストアなどを利用するといい。

周辺
桜並木は睦橋から永田橋付近までの約2.5kmほどだが、さらに多摩川河畔を辿って散策を楽しむのもいい。永田橋から北へ辿ればやがて羽村市、少しばかり距離があるが羽村の堰へも歩けない距離ではない。羽村堰も桜の名所だ。多摩橋を渡ってあきる野市へ足を延ばせば、平井川の下流域に見事な桜並木がある。桜の季節には併せて訪ねてみるのがお勧めだ。

睦橋南側の福生南公園にも桜の木が多く、これもなかなか楽しめる。福生南公園からさらに南へ辿れば昭島市、河畔には水鳥公園という小公園があり、多摩川河畔の風景が美しい。

多摩川の東側には玉川上水が流れている。玉川上水の周辺は木々が茂って緑濃く、周辺に点在する小公園や寺社などを巡っての散策が楽しい。また多摩川河畔から東へ2kmほど行けば東京環状(国道16号)、その東側は米軍の横田基地だ。国道沿いにはまるでアメリカの街路を思わせるような店舗が並ぶ。町歩きの好きな人は足を延ばしてみるのも悪くない。
桜散歩
東京多摩散歩